アカデミック活動

2024.05.13

『パブリック リレーションズ』第3版を発刊
〜マルチ・ステークホルダー・リレーションシップ・マネジメントを実践し「より良い社会の実現」を目指します

皆さんこんにちは井之上喬です。

私の著書『パブリック リレーションズ』第3版 ~マルチ・ステークホルダー・リレーションシップ・マネジメント~が4月30日に株式会社日本評論社から発刊されました。

発刊に際し、グローバルビジネス学会名誉会長である丹羽宇一郎・伊藤忠商事元会長から「パブリックリレーションズは経営そのものだ」という推薦の言葉を書籍の帯にいただきました。

本書『パブリック リレーションズ』は、2006年に初版、2015年に第2版が刊行され、その後も増刷を重ねてきました。9年ぶりの今回は、読者の強い要望に応え、インターネット時代、グローバル時代に相応しい内容に書き改めています。

世界は今、グローバル化ローカル化が混在し、民族問題や環境問題領土問題、貧困格差・不平等問題、さらに急速に進化するAIのもたらす利便性と危険性の問題など、さまざまな課題を抱えています。これらの解決には、多様な利害関係者(マルチステークホルダー)が、向かうべき方向(倫理観)を見据えながら意見を交換(双方向コミュニケーション)しながら自分自身も変化(自己修正)していく協力が欠かせません。そのような複合的な視点をもつインターメディエーター(仲介者)としての機能を持つパブリック・リレーションズ(PR)は、上記の課題解決のために欠かせないツールであり、課せられた責務はますます重大になっています。

最新事情を盛り込み、大きく改訂

こうした時代の要請に応える形で、第3版では厳しいグローバル競争に晒される経営者や実務家が取り組むべきパブリック・リレーションズの分析手法や実践手段を明示しています。

そして、理論だけでなく具体的なケースも紹介しながら、パブリック・リレーションズが大きな役割を果たしていることを示しています。まさに丹羽氏が「パブリック リレーションズは経営そのものだ」とずばり指摘された所以は、ここにあると思います。

世界の諸課題は、以前から存在するとはいえ、その様相はかつてと大きく異なり、変化も急です。それに対応するパブリック・リレーションズの役割も当然変わります。第3版では、こうした今日的な視点を反映し大幅な改訂となりました。

例えば、スマートフォンでの高速・大容量通信を実現した5Gの登場により加速するデジタル革命と急速に進化するAI環境や、その中で急変するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)とパブリック・リレーションズとの関係については、最終章で紙幅を割き詳しく解説しています。また、パブリック・リレーションズの中核であるメディア・リレーションズに関する記述も、一層充実させました。

パブリック・リレーションズの主要素の一つ「自己修正モデル」は、私が長年実務を通して得た知見に基づき独自に研究を重ねてきたもので、これは第1章に取り入れました。

構成は以下の通りです。

  • 第1章 パブリック・リレーションズは21世紀最強のリアルタイム・ソフトウェア
  • 第2章 パブリック・リレーションズとは何か?
  • 第3章 パブリック・リレーションズの歴史的背景
  • 第4章 パブリック・リレーションズと組織体 
  • 第5章 企業・組織における危機管理
  • 第6章 戦略的パブリック・リレーションズの構築と実践
  • 第7章 パブリック・リレーションズ活動の評価と測定
  • 第8章 デジタルテクノロジーを用いたパブリック・リレーションズ―ソーシャルメディアからAIまで

パブリック・リレーションズの概念の淵源を探ると、生命が恒常性を維持する機能であるホメオスタシスや、人間(生命体)と機械の相互作用や関係を追求するサイバネティクスにまで遡ることができます。そんなパブリック・リレーションズの世界の奥深さが理解できる内容ともなっています。

第1版では中国版およびハングル版、第2版では中国語版も出版されました。また、2018年には自著として初めての英語版をRoutledge社から出しましたが、こちらも書き直して2025年初頭を目途に新版を出す予定です。ご期待ください。

多くの方にお越しいただいた『出版を祝う会』

第3版の発刊に先立つ4月17日、東京・内幸町のプレスセンタービルで『出版を祝う会』が開かれました。当日は150名近くの皆さんにご出席いただき、さまざまなご縁を胸に楽しい時間を過ごすことが出来ました。政財官界、アカデミック関係そして教育・メディア関係など、多くの業界、分野からご参加をいただき、改めて感謝を申し上げます。

政界からは下村博文・衆議院議員(元文部科学大臣)、柴山昌彦・衆議院議員(元文部科学大臣)、小泉 進次郎・衆議院議員(元環境大臣)、馬淵 澄夫・衆議院議員(元国土交通大臣)、福山哲郎・参議院議員(元内閣官房副長官)、古川元久・衆議院議員(元内閣府特命担当大臣(宇宙政策など))、元財務副大臣の藤田 幸久氏(現国際IC日本協会会長)など超党派の皆さんに出席いただきました。また官界からは棚橋祐治・元通産事務次官、林康夫JETRO顧問(元理事長)そして早稲田大学の中林美恵子教授はじめ、京都大学、北海道大学、国際教養大学などから先生方がお越しくださいました。

左から、棚橋祐治弁護士(元通産事務次官)、小泉進次郎衆議院議員(元環境大臣)、筆者

会の冒頭では、発起人代表の丹羽宇一郎 氏のビデオメッセージ、また千本倖生氏(KDDI共同創業、イー・アクセス創業、イーモバイル創業)、メディアアーティスト、起業家の落合陽一氏、元日本経済新聞の論説委員の関口和一氏(現MM総研代表取締役所長))など、各界を代表する皆様にお祝いの言葉をいただきました。また、これまでお世話になった教育機関の先生方、全国随所で活躍する私の教え子や旧友の都立立川高校水泳部の仲間たちも駆けつけてくれ、あっという間の2時間でした。

千本倖生氏(左)に祝辞を頂く

話は少し変わりますが、司会をお願いした小林大輔さんは、早稲田大学ナレオハワイアンズ時代の先輩です。卒業後はフジテレビの看板アナウンサーとして活躍した、日本のタレントアナウンサー第1号の方です。この日は、小林さんにとって60年に及ぶプロの司会者の最後の日となりました。ありがとうございました。

この日を最後にプロ生活を終える。小林大輔さん。

各界から多くの方々にお越し頂き、お祝いの言葉を賜りました

世界の平和とよりよい社会へ向けて

今年は世界大戦終結から79年。いま世界は、これまでにない不穏な状態にあります。グローバル化が進み、人の移動やデジタル的な情報流通はさらに加速しています。異なった文化やイデオロギーが衝突し、核の脅威が渦巻く世界に戦争の足音すら聞こえてきます。人類は知識を積み重ね、経験から多くを学んできたはずなのに、再び同じ過ちを繰り返すのでしょうか。

平和であるだけでなく、よりよい社会を作っていくために、私は「倫理観」「双方向コミュニケーション」「自己修正」をベースにしたパブリック・リレーションズが欠かせないと、これまでの研究と実践から確信しています。パブリック・リレーションズは、友好的に目的・目標を達成するための「平和の武器」です。

先に触れた英語本の執筆は、この考えを世界に発信するための手段の一つです。自分の信じるものだけを剥き出しにして争う今日の世界でこそ「自己修正モデル:self-correction model」がプラットホームとして有効に働くのではないか、それを広げるのが私の使命でもあると考え、発刊を急いでいます。

第3版の発刊をてこにして、パブリック・リレーションズを通じたよりよい社会の実現に向け、これからも邁進してまいります。

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