パブリック・リレーションズ

2015.05.21

『パブリックリレーションズ』[第2版]が発刊〜テーマはリレーションシップ・マネジメント

皆さんこんにちは井之上 喬です。

2年がかりで改訂作業に取り組んできた『パブリックリレーションズ』[第2版]が、昨日(5月20日)付で日本評論社から発刊されました。
パブリックリレーションズ<仕様>
著 者:井之上喬
  (いのうえ・たかし)
発刊日:2015年5月20日(第2版1刷)
発 行:株式会社日本評論社
定 価:本体2600円+税
判 型:A5判
ページ数:344ページ

「パブリック・リレーションズ」[第1版]は2006年3月に発行されました。この間、世界は多極化が進み、インターネットの爆発的な普及によるさまざまな技術革新、ソーシャルメディアの発展、そして異常気象などは、私たちの生活をはじめ社会、経済、政治などの分野へ多大な影響を及ぼしています。

こうした地球規模の変化にともない、可変的であるべきパブリック・リレーションズ(PR)の役割も変わってきており、今日的な視点から内容を大幅に改訂し[第2版]を刊行することとしました。あわせてこの機会に、語句などの表現も今日風に改めました。

「パブリック・リレーションズは経営そのものだ」

加速するグローバル化のなか、民族問題、環境問題、領土問題、貧困格差・不平等問題などさまざまな課題を抱える世界にとって、それらの解決のため複合的な視点をもつインターメディエーター(仲介者)としての機能を持つパブリック・リレーションズに課せられた責務はますます重大なものとなっています。

こうした背景を踏まえ本書では、21世紀におけるパブリック・リレーションズの役割や重要性を追究し、厳しい競争に晒される経営者や実務家が取り組むべきパブリック・リレーションズの実践方法や分析手法を明示しています。

そして組織体にとってパブリック・リレーションズが目的や目標達成のために不可欠となる様々なステーク・ホルダーとの良好な関係構築活動、つまりリレーションシップ・マネジメントであることが具体的なケース紹介を通して示されています。

日本社会の文化はハイコンテクスト・カルチャといわれています。共有する文化コードが多く、言葉を使わずとも以心伝心、あうんの呼吸が成立する文化。

これに対してグローバル社会は、ローコンテクスト型。民族や文化、言語、宗教が多様で、自分の考えを相手に明確に伝えないと十分に理解されません。このことが、国境を超えてステーク・ホルダー(利害関係者)とのリレーションシップ・マネジメントを実践するパブリック・リレーションズがグローバルビジネスの基盤といわれる所以ともなっています。

丹羽宇一郎氏(グローバルビジネス学会会長・伊藤忠商事前会長)の本書推薦の言葉「パブリック・リレーションズは経営そのものだ。」は、まさにこのことを意味しているのではないでしょうか。

丹羽さんには、これまで私が教鞭を執る京都大学経営管理大学院や早稲田大学でのパブリック・リレーションズ論で講演していただいていますが、上述の言葉は、国際ビジネスマンとして、また外交官として、豊富な経験を有する丹羽さんならではの言葉だと思うのです。

また、私が長年実務を通して得た知見に基づき研究を重ねてきた、パブリック・リレーションズの「自己修正モデル」が補論として追加されました。パブリック・リレーションズの概念の淵源を探るとホメオスタシスやサイバネティクスにまで遡ることができるという、パブリック・リレーションズの世界の奥深さを理解する内容ともなっています。

『パブリック・リレーションズ』[第2版]の構成

発刊を記念し、来週、私の友人・知人が発起人となって「出版を祝う会」が催されることになりました。この「出版を祝う会」の模様は改めて皆さんにお伝えしたいと思っています。

第1版では中国版が発刊されていますが、今回は中国版に加え、英語版も発刊したいと考えています。日本発のパブリック・リレーションズが、世界でどのように受けとめられるか、今から楽しみにしているところです。

2001年、編著『入門パブリックリレーションズ』(PHP研究所)を上梓して15年になろうとしています。また、2004年から「個」の確立した人間力ある次世代の人材育成のために早稲田大学で「パブリック・リレーションズ論」の講義を始め、これまで約2000人の受講生が社会に巣立っていきました。彼らが新しい日本の担い手になってくれることを切望しています。

本書が受講生のみならず、パブリック・リレーションズの実務に携わる方々にとっても、日々の活動を理論体系と照らし合わせることを通じて、頭の整理に役立つことを願っています。
参考までに、以下に第2版の構成をご紹介します。

序章
パブリック・リレーションズは21世紀最強のリアルタイム・ソフトウェア

1.最短距離で目標や目的の達成を可能にするパブリック・リレーションズ
2.パブリック・リレーションズを成功に導く3つのキーワード
3.21世紀社会におけるパブリック・リレーションズの意義と役割
4.パブリック・リレーションズは第5の経営資源
5.不足するパブリック・リレーションズの専門家

第1章
パブリック・リレーションズとは何か?
1.パブリックとは
2.さまざまなリレーションズとそのターゲット

第2章
パブリック・リレーションズの歴史的背景
1.パブリック・リレーションズの変遷とその定義
2.パブリック・リレーションズの現代的定義と役割
3.なぜ日本のPRは遅れをとったのか???日本におけるパブリック・リ レー ションズ発展史
4.経済摩擦と海外PR
5.日本で普及している市民(社会)運動
6.日本文化とパブリック・リレーションズ
7.メディアとパブリック・リレーションズ

第3章
パブリック・リレーションズと組織体
1.日本の世界競争力
2.企業のパブリック・リレーションズ戦略
3.政府・自治体におけるパブリック・リレーションズ
4.パブリック・リレーションズ専門家に求められる資質と能力
5.PR会社の機能と役割
6.企業・組織によるパブリック・リレーションズ業務のアウトソーシング
7.急がれるパブリック・リレーションズ専門家の教育

第4章
企業・組織における危機管理
1.欠かせない危険・危機への備え
2.危機管理を構成する3つの概念
3.事例に学ぶ危機管理とその教訓
4.企業経営者に高まる危機意識
5.危機管理の具体的処方箋とそのポイント

第5章
戦略的パブリック・リレーションズの構築と実践
1.パブリック・リレーションズのライフサイクル・モデル
2.日米自動車交渉におけるPR戦略の実践例
3.メディア・トレーニングによるスポークスパーソン・トレーニング
4.自らを知り、グローバル戦略を展開する

第6章
パブリック・リレーションズ活動の評価と測定
1.パブリック・リレーションズ活動の評価・測定の必要性と課題
2.パブリック・リレーションズ活動の評価手法
3.最も威力を発揮する報道内容分析(CARMA)

第7章
インターネット社会における企業PR
1.双方向性インターネットの時代
2.ソーシャルメディアの特性
3.ネット社会における企業の課題
4.ネットで効果的なメッセージを発信するには???戦略的PRの重要性

補論
パブリック・リレーションズにおける自己修正モデル(SCM)
1.自己修正モデル(SCM)の概要
2.自己修正の構造
3.自己修正の2つの評価基準と4つの側面
4.自己修正のマップとプロット
5.報道分析における自己修正モデルケース
6.まとめ

資料1
パブリック・リレーションズ関連団体

資料2
米国におけるパブリック・リレーションズ発展小史
パブリック・リレーションズ用語集

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