アカデミック活動

2011.05.30

東日本大震災が教えたもの〜「絆(Kizuna)」の大切さを改めて認識した日本人

皆さんこんにちは井之上 喬です。
東日本大震災から2ヶ月半、いま被災地域には復興の響きが広がり聞こえています。
フランスのドービルで開催されたG8サミットでは、5月27日の首脳宣言で、東日本大震災の復興に取り組む日本との連帯を誓い、犠牲者に対する追悼と被災者の勇気に敬意を表明。また各国首脳は日本の震災復興への協力を表しました。
一方、日中韓の観光担当相会議では、2日目の5月29日に観光への風評被害を防ぐために共通の危機管理マニュアルを作成することを発表。

「絆(Kizuna)」を再認識した日本人

今回の震災は、日本人が古来有していた人と人との「絆(きずな)」の大切さを教えてくれました。

絆は人と人、人と社会(地域)、国と国とのつながり(関係性)を指しますが、核家族化が進み家族や地域社会が崩壊していく中で起こった災害は、人間のつながりが生きていく上で如何に必要かを私たちに気づかせてくれました。

とりわけ風評被害にあった被災地での頼りは、互いが信じあえる共同体における双方向の円滑なコミュニケーション。そしてその上に成り立つ、家族や友人、地域の人たちとの深い絆です。

以前このブログや2009年7月に出版した『「説明責任」とは何か』(PHP新書)の「あとがき」にも書き記したように、日本における「絆(kizuna)」はハイコンテクスト・カルチャー(high context culture)における絆といえます。

つまり積極的に相手に伝える努力をしなくても、日本のような同質社会では、以心伝心で相手に自分の考えを伝えることができますが、人種や言語、文化が異なるグローバル社会では、ローコンテクスト・カルチャー(low context culture)型でないと相手にうまく自分の考えを伝えることができません。

その意味で日本にはローコンテクスト型の絆づくりが求められているといえます。これこそパブリック・リレーションズ(PR)です。
グローバルの一員として、日本がいま必要としているのは、この新しい「絆(Kizuna)」を社会に根付かせることだと思うのです。
パブリック・リレーションズはさまざまなステークホルダーとの関係構築を重視するリレーションシップ・マネジメントです。
目的達成のために、倫理観双方向コミュニケーション、そして自己修正が機能したパブリック・リレーションズが強く求められています。

井之上PRと日本PR研究所の試み

最近、私の経営する会社、井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)と日本パブリックリレーションズ研究所(JPRI)は、それぞれCSRの一環として、地方自治体などの公的機関、自治体観光局や観光業に携わる諸団体に対する無償マニュアルの提供や無料相談を開始しました。
具体的には、「公的機関向けツイッターマニュアル」の無償提供(井之上PR:5月12日発表)と自治体観光局や観光関連団体への「風評被害を避けるための『情報発信方法』の無料相談」(JPRI:5月25日発表)です。

被災地では電気や通信、交通機関は切断され、地域はもとより外部との連絡が一切途絶える中、ツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が思わぬ働きをしました。

井之上PRでは、地方自治体などに対して「公的機関向けツイッターマニュアル」を5月12日から無償提供しています。このマニュアルは公的機関の広聴広報、PR部門などを支援するために用意されたもので、誰でも簡単に利用できるよう作成されています。

同社は、東日本大震災で防災無線の破壊などにより自治体から住民への情報発信手段が寸断される中、ツイッターなどのSNSが活用されたことを重視、CSR活動の一環として実施したもの。

通話制限を受けた携帯電話からでもアクセスできるツイッターは、その後の余震や避難場所、生活用品の支給状況などについても情報提供を続けることができ、被災地と救援主体との双方向のコミュニケーション環境を可能としています。

一方JPRIでは、東日本大震災で風評被害の深刻な影響を受けた観光業界、とりわけ自治体観光局や観光関連団体に対し、「風評被害を避けるための情報発信方法」の無料相談を5月25日より開始しました。

3・11以降、政府の広報体制の不備が指摘されていますが、一般的に風評被害は危機管理状態とりわけ情報発信者からの情報が一元化されないときに生じますが、情報混乱による被害は、日本のメディアにとどまらず、外国メディアにも及んでいます。

不確実情報による風評被害はグローバルに拡散され、日本製品の輸出にも悪影響を与えていますが、深刻なのは日本の観光業。
中国をはじめ、韓国、台湾からの観光客は激減。先日の日中韓首脳会談の際も中国の温家宝首相や韓国明博大統領が被災地に赴きイメージ払拭に努めるなどしました。

JPRIは無料相談の対象を、周辺地域の観光業界にとどまらず、農林水産業、畜産業、食品製造などに携わる機関で自らが情報発信を必要とし、且つPR意識のある団体としており、自治体関係部門では、観光協会、旅館組合、酒造協会、組合などが含まれています。

相談内容は、ニュースリリースの作成やメディアの取材誘致、記者会見の実施方法などに関するアドバイス。また、キャンペーンの打ち方や海外(特にアジア地域)への情報発信方法など。期間は6月30日(木)までですが、状況を見て期間延長もあるとしています。

PR会社にとっては顧客企業へのPRそのものがCSRともいわれています。社会に良い影響を与える顧客企業を持つことで、PR会社の企業への支援が、社会をより良い方向へ変化させることになるからです。

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