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2023.02.21

自動生成AIの驚異的進化
〜ChatGPT、AIと共存する時代の幕開けか?

皆さんこんにちは、井之上喬です。

トルコ南部を震源とする大地震は、隣国のシリアも含め4万6千人を超える犠牲者を出す大災害になっています。酷寒のなか、避難所で暖を取る被災者の皆さんの姿が映像で流れるのを見て大変心が痛みます。

世界各国から支援の手が差し伸べられていますが、一日も早い復旧と被災者に平安な日々が戻るよう祈るばかりです。

また、24日でウクライナ戦争が勃発して24日で1年を迎えます。ウクライナをはじめ、世界に平安な日々が戻ることを切に願っています。

対話型の自動生成AIの進化

最近頻繁にメディアで取り上げられている「ChatGPT」、皆さんもご存じでしょうか。

ChatGPTは、米国の新興企業OpenAIが公開した、自然な文章を自動生成する人工知能(AI)です。

2022年11月30日のサービス開始以降、さまざまな質問に対し、自然な言葉で文章を生成できることで注目され、利用者も急増しています。報道によると、利用者の数は1月に1億人に達し、この数字の達成はオンラインサービスとしては最速とのこと。それだけこのサービスが、世界の関心を集めている証しだといえるでしょう。

OpenAI社には米国マイクロソフトが提携・出資しており、マイクロソフトは1月23日、今後数年で数十億ドルを追加投資すると発表しました。さらに2月7日には、同社の検索エンジン「Bing」にAIを応用してユーザーの検索に役立てるとアナウンスしました。対する米グーグルも同様に、自社の対話型AI「Bard」を検索や翻訳などのサービスに組み込むと発表するなど、両社を中心にAI活用に拍車がかかっています。

ChatGPTは、日本語など多言語での利用も可能です。テレビなどでも毎日のようにデモ画面が流れ、「すごい」、「ここは間違っている」、「こんなこともできるんだ」、などなど一躍注目を浴びています。

インターネットで検索すると、GPTとはGenerative Pretrained Transformerの略で、大量のテキストデータの学習を行い、人間のような自然な文章を創り出す言語AIのこと。質問への応答や対話をすることに特化してトレーニングされ、人間同士で対話するような会話形式で回答を返すことが可能です。

振り返れば、チェス、囲碁と、AIが人間に勝つたびに、AIが人間を凌駕するのでは、と危機感をもって言われてきました。でも実際には、ゲームのアルゴリズム(勝つための方法)を計算できた(これだけでもすごいことですが)という範囲にとどまり、まだ人間の言語や思考そのものを超えるものではありませんでした。

その一方、AIの能力は加速度的に進化してきました。ネットの自動翻訳サービスを使ったことのある方は、その精度や、言葉使いの自然さの向上を実感されているでしょう。ChatGPIなど今のAIは、さらにその上のレベルを実現しています、つまり利用者からの質問に関して、現在どのような議論がされており、主張や根拠の組み立て方はどのようになっているかなど、情報に加えて思考の流れも学習する。そしてそれらを元に、聞き手が納得できるように回答を再構成するなど、いわば人間の頭脳をより上手に模擬できるようになった、と言えるのではないでしょうか。

AIの学習量は、日が経てば経つほどに急速に増加し、それに伴って精度も増すことから、この先どんな展開になるのか、強い興味を持っています。

この時問題になるのは、学習するデータの質です。正確、緻密で、偏りのない議論や論考を元にしていれば、ChatGPTが繰り出す言葉も質の高いものになるでしょう。一方で、学習データがWebに存在する大量のテキストであれば、この中にはフェークをはじめ、間違った情報が含まれている可能性は大いにあります。すべての質問に対して正しい回答が保証されるということではありません。誤りや偏見に満ちた言説を取り込んでいれば、その影響も免れないでしょう。

質問をする側も、ChatGPTが出した回答を鵜吞みにするのではなく、自分で何らかの裏付けや検証によって正確か否かを判定するスキルが求められるのも確かです。また、まだ学習していない情報については、不正確な回答を返すこともあるので、注意が必要です。

また、米国などでは、大学で授業の課題論文を学生がChatGPTを使って作成し、それがかなりのレベルであることから教員側も見抜けないという現象が早くも起こっています。教育・研究の現場でこれらの技術をどう扱うべきか、といった問題は今後続くでしょう。また、ニュース執筆などにもAIすでに応用され、その範囲はさらに広がるでしょう。記者にとって大きなライバルとなるかも知れませんね。

そのような側面はあるものの、一般人にとって、会話形式でやり取りできる点は今までにない大きなメリットです。これまでのキーワード羅列型の検索スタイルから、込み入った対話も可能な形式へ進化を遂げている点は、これまでのAIにはない、画期的な進歩と言えると思います。

「パブリックリレーションズについて教えて?」

ChatGPTについて、米国の知人にいろいろ質問したところ、「まずは触ってみたら」と言われ、ものは試しと早速アカウントを作りログインしてみました。

最初の質問は当然、「パブリックリレーションズについて教えて?」です。答えは以下の通りでした。

『Chat GPT:パブリックリレーションズ(Public Relations: PR)は、企業や団体が自らの目的や活動を広く周知し、良好なイメージを構築し、信頼を得るための活動です。主にメディアや広報物、イベントなどを通じて、ターゲットとなる人々に情報を発信することで、認知度の向上や信頼度の向上を図ることが目的です。
具体的には、広報戦略の策定や実行、メディアリレーション、プレスリリースの作成や配信、社内報や広報誌の制作、イベントの企画や運営、スポンサーシップの活用などが挙げられます。
PRは、企業や団体にとって重要なマーケティング戦略の一つであり、その適切な戦略がビジネスの成功に大きく関わってきます。また、PRは企業と社会との関係を構築し、信頼を築くためにも重要な役割を担っています。』

皆さんはこの答えについてどう思われますか。日本での一般的な認識を最大公約数的にまとめてはいますが、個人的にはPRはマーケティング戦略の一つにとどまるものではなく、社会との関係構築活動として経営の根幹に関わる、欠くべからざる重要な課題(ミッション・クリティカル)であると捉えています。

私が考えるパブリック・リレーションズの概念は、シンプルに定義づけられています。つまり、「パブリック・リレーションズ(PR)とは、個人や組織体が最短距離で目標や目的に達する、『倫理観』に支えられた『双方向性コミュニケーション』と『自己修正』をベースとした、多様なステークホルダーとの良好な関係構築活動つまり、マルチステークホルダー・リレーションシップマネジメントである」。

AIが進化するにつれて重要になってくることは、その活用が悪意により用いられないことです。そのためには「倫理観」が何よりも重要になります。AIは十分に倫理観について教えてくれるでしょう。でもそれを実践するのは、私たち人間にほかなりません。

また、双方性コミュニケーション自己修正についても、AIはさまざまな手法を、状況に応じて的確に指南してくれると思います。ですが、実際にどう行うか、やはり人間が納得し、試行錯誤も含めて動かなければ、上辺のものになりかねません。コミュニケーションは、さまざまな考え、立場の人たちによる、言葉以外の部分も含んだ総合的な交わりだからです。

Chat GPTは、AIが人間を超える「シンギュラリティ」の序章かもしれません。でも、私が考えるパブリック・リレーションズでは、主役はあくまでも人間であり続けるでしょう。よりよいパブリック・リレーションズのため、そしてよりよい社会作りを目指すため、AIは強力な相棒となるでしょうし、そうしていきたいものです。

パブリック・リレーションズについて質問した時、私の描く像を将来ChatGPTが答えてくれるよう、これからも頑張ってまいります。

そしてこれから皆さんと一緒に、どのようにAIと上手に付き合っていけばいいか、考えていきたいと思います。

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