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2021.10.02

デジタル化で激変するメディア事情
~まず倫理観をベースにニュースの真実を見極めよう

皆さんこんにちは井之上喬です。

菅義偉氏の次期総裁を争う自民党総裁選が9月29に行われ、2回目の投票で岸田文雄氏が第27代総裁に選ばれました。そして10月1日、新体制が発表されました。10月4日の臨時国会で、第100代首相に指名される見通しです。コロナ禍で、民主主義の危機が叫ばれている日本を立て直すのは、自民党か野党連合体か。自民党の命運を握る岸田内閣の手腕が問われています。

あなたにとって新聞とは

10、11月は、衆議院総選挙をはじめ各地でさまざまな行事やイベントが予定されています。その中で毎年10月15日からの1週間は「新聞週間」です。新聞大会、新聞配達の日、新聞広告の日などの関連行事のほか、読者を対象にしたイベントも全国各地で開かれます。詳しくは日本新聞協会の案内ページをご覧ください。

新聞週間の由来については、小学館の日本大百科全書(ニッポニカ)に以下のように解説されています。

日本新聞協会が1948年(昭和23)から毎年10月、1週間にわたって催す年中行事。初め占領軍の示唆でアメリカの「ニューズペーパー・ウィーク」と呼応して催された。行事の主眼は、読者に新聞の重要性を知らせ、新聞と読者との結び付きを強化すること。同時に、新聞・放送に携わる者が「言論・報道の自由」を守り、いっそうの発展を期する覚悟を新たにすることを目標にしている。週間中、新聞紙面を通じ趣旨の徹底を図るほか、標語募集などを行う。また、新聞協会加盟各社の幹部が集まって全国新聞大会を開き、その年の重要問題について研究討議を行う。58年から「新聞広告の日」、62年から「新聞少年の日」が週間中に設けられている。

活字離れ、新聞離れが以前から指摘されていますが、パブリック・リレーションズ(PR)に長年従事してきた私にとって、新聞はメディア・リレーションズの中核です。多くの記者の皆さんとのコミュニケーションから得られた貴重な知見は、今でも私の財産になっているとともに、ニュース源として大きな存在になっています。

ただし、デジタル化によるメディア環境の大きな変化が、新聞の役割に大きく影響していることはご存知の通りです。

8月末に総務省情報通信政策研究所が、「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(東京女子大学・橋元良明教授らとの共同研究として実施)の報告書を公表しました。

この調査の目的は、オンラインメディアソーシャルメディア(SNS)などインターネット上のメディア、テレビ、ラジオなどの情報通信メディアについて、利用時間の長さ・時間帯、利用率、信頼度などを継続的に把握し、メディア間の関係や利用実態の変化などを明らかにすることです。調査対象者は13歳から69歳までの男女1,500人で、調査対象期間は2021年1月12~18日。今回の調査が9回目となります。

詳しくは総務省の報告書をご覧いただきたいと思いますが、ちょっと気になった点をいくつか拾ってみました。

まず、インターネットの利用時間。長くなっている実感を皆さんもお持ちと思います。今回の調査で初めて、全年代に渡り、平日のネット利用の平均時間がテレビ(リアルタイム)視聴の平均利用時間を超過しました。

ネットが、年齢の高い人を含め、情報源として一般的になってきた証拠ですね。また、スマートフォン(スマホ)の普及もネット利用時間の増加を後押ししています。スマホ利用率は10代から40代で90%を超過、50代および60代でも一貫して増加し、60代でも80%を超過しているとのことです。

注目の主なソーシャルメディア(SNS)系サービス/アプリとしては、全年代でLINEの利用率が増加し、今回の調査で初めて90%を超過したとのこと。その一方で年代別で差が出ているのがFacebookです。利用率は40代と60代を除く各年代で減少し、10代では20%を下回るなど年代別で最も低い利用率になっています。一方、全年代で一貫して増加しているのは画像を中心としたInstagramで、今回はTwitterに並び、LINEに次ぐ利用率となっています。今後も、SNSの動向が注目されるところです。

新聞への信頼度は全世代で高い

メディアの重要度を見てみましょう。情報源としての重要度は10代から30代では「インターネット」、40代から60代では「テレビ」が最も高い数値を示しています。

特に注目したいのはメディアとしての信頼度です。結果は30代から60代で新聞が最も高く、全年代でみてもテレビが61.6%、新聞が66%、インターネットが29.9%、雑誌が16.6%となっており、新聞の信頼度がまだまだ高いことを示しています。

メディアの信頼度を計る指針は何でしょうか?

メディア環境がデジタル化で激変する中でオンラインメディア、SNSが台頭し、トラディショナルな新聞、テレビ、雑誌の存在を凌駕するほどに普及しています。その一方で流行語にもなったフェイクニュースに象徴されるように、メディアで流れるニュースは何が真実なのかを見極めるのが難しい時代に突入しています。

そのようなメディア事情の中で、これから重要な指標になってくるのが「倫理観」、つまり社会的に守るべき規範や判断基準だと思います。「言論・報道の自由」を例にとれば、言論の自由は言うまでもなく民主主義の根幹ですが、その自由を行使、あるいは守り続けるためには、自分だけでなく、周辺の人、あるいは直接には関わっていないように見える世界の人々の置かれた環境へと、常に思いを致すことが欠かせないことは理解していただけるでしょう。

私が考えるパブリック・リレーションズ(PR)は、個人や組織体が最短距離で目標や目的を達成するために、「倫理観」に支えられた「双方向性コミュニケーション」と「自己修正」をベースとしたマルチ・ステークホルダーとの良好な関係構築を図るリレーションシップ・マネージメントです。

世界は目まぐるしく変化し、早く深くつながるハイパー・グローバリゼーションが進行しています、情報の発信元である企業、組織体、コミュニケーションチャネルであるメディアに情報を伝えるPR会社、そして受け手である読者や視聴者。それぞれの立場で求められているのが「倫理観」です。そんな時代に私たちは生きていると思うのです。

正しい方向性を見出し、誰一人として取り残さないような世界が実現するよう、皆さんとともにパブリック・リレーションズ(PR)の実践を続けていきたいと思います。

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