パブリック・リレーションズ

2005.09.12

パブリック・リレーションズの実務家に求められる5つの基本要件 1.倫理観

こんにちは。井之上喬です。
昨日9月11日は衆議院選挙の投票日でした。結果は自民党の大勝に終わり、これからの日本の舵取りは小泉政権に再度委ねられることになりました。国民投票的な性格を持った今回の選挙は、半面マニフェスト選挙でもあったわけですが、国民一人ひとりの意思が反映されたものとして、この結果を厳粛に受け止めるべきなのでしょう。今後の政権の手腕が期待されます。

パブリック・リレーションズの業務は複雑多岐にわたります。広報担当者やパブリック・リレーションズを専門業務とする実務家にとって継続的に成果をあげるには、相当な知識と経験そして能力が必要です。当然のことながら、それらを支える基本的な資質や能力も極めて重要となります。それらは、「倫理観」「ポジティブ思考」「シナリオ作成能力」「IT能力」そして「英語力」の5つです。今日は、最も重要とされる倫理観についてお話したいと思います。

倫理観については、4月25日に公開したこのブログで「パブリック・リレーションズ(PR)を成功に導くキーワード 1.「倫理観」と題して考察し、あいまいになりがちな倫理観を「人間の行為における善・悪の観念」としました。また、パブリック・リレーションズに欠かせない理由として、「個人も組織体も、他者つまりパブリック(一般社会)と関係を築く上で、普遍的な倫理的価値観をシェアし実践することが、結果として最短距離で目標達成を可能にする」と述べました。

今回はその内容を踏まえ、パブリック・リレーションズの実務家としての職業(プロフェッション)と倫理観についてもう少し具体的に説明したいと思います。

米国で登場・発展したパブリック・リレーションズは早くから社会科学の分野で理論体系化されています。米国では専門家としての資格制度もあり、64年から米国PR協会(PRSA)が主催し現在PRSAも含め複数の団体が参加し行われている、ユニバーサル認定プログラムが実施されています。ちなみに日本での資格認定制度は現在、社団法人日本パブリックリレーションズ協会により、2007年度から実施の予定で準備が進められています。米国同様に実務の遂行に専門知識を必要とするパブリック・リレーションズを1つの専門職(プロフェッション)と位置づけ、遅れをとっているこの分野での強化を行うものです。

特殊技能や能力を持ったプロフェッショナルと呼ばれる個人・集団は、社会に対し様々な影響力を持ち、同時に大きな責任を負っています。なぜなら専門家は社会から高い期待が寄せられ、多くの場合その発言や行為が盲目的に信頼される傾向にあるからです。社会の期待に応えプロフェッショナルとして適正に職務を遂行するには、目先の独善的な利益を追求するのではなく、自らを律する「プロ意識」とそれを支える「倫理観」が不可欠になります。

パブリック・リレーションズにおける倫理観不在の活動は、ともすれば情報発信者に有利な不確実な情報を一方的かつ強力に発信する、いわゆる「プロパガンダ」に陥る危険性をはらんでいます。一方、世界の潮流は組織体や個人がリアルタイムで情報の発信・受信を可能にするユビキタス社会へと向かっており、覚醒したパブリック(一般社会=ターゲット)が、情報発信する個人・組織体の行動や対応を注視する社会では、WIN-WIN的発想が欠落したパブリック・リレーションズは機能し得なくなっています。

パブリック・リレーションズとプロパガンダは技術的にはほとんど同じです。両者に共存し得ないものは、「倫理観」「双方向性コミュニケーション」そして「自己修正」などの概念で、とりわけ倫理観は最も重要なファクターといえます。

従って、両者の手法の違いをよく認識し、倫理観の伴うパブリック・リレーションズの恒常的実践を肝に銘じて活動すべきだと考えます。

パブリック・リレーションズの実務家や学者で構成される国際パブリック・リレーションズ協会(IPRA)米国パブリック・リレーションズ協会(PRSA)は、実務家の実践すべき「倫理規定(code of ethics)」を明確に示しています。これらの倫理規定に共通するものは、「常に真実を優先させること、クライアントとパブリックの双方にフェアに対応すること、不正に参画しないこと」などです。その根底に、よりよい社会づくりへ貢献するパブリック・リレーションズの実務家が率先して模範的な行動をとろうとする理念が見て取れます。

ゴルバチョフ政権時代に、パブリック・リレーションズの重要性を象徴する二つの出来事がありました。88年5月に開かれた「IPRAメルボルン世界大会」へ初めて参加した中華人民共和国のメンバーと、同年11月ウィーンとブタペストで初めて開催された「第一回東西パブリック・リレーションズ会議」に初参加したソビエト共和国連邦メンバーがいずれもIPRA理事会で加盟が承認されたことです。

中国は学者が中心でしたが、ソ連はゲラシモフ外務省情報局長(ゴルバチョフ大統領著「ペレストロイカ」の実質的執筆者)やエフィーモフ、ノボースチ通信社編集長その他数名の学者・研究者が、IPRAの掲げる「IPRA国際倫理綱領」を受け入れることによりIPRA加盟を果たしたのでした。

これら二大共産国家による二度の歴史的な出来事にIPRA理事として立ち会えたことは、深く私の記憶にとどまっています。

このようにパブリック・リレーションズの実務家には、常に高い倫理観が求められていることを心に銘記し、企業の広報担当者やPR会社の実務家は自社やクライアントの経営トップへのアドバイスを真摯に行わなければなりません。そして組織内において、暴走することのないよう歯止めをかける役割と機能を持たなければなりません。

不祥事が繰り返される日本社会で、倫理観に基づく思想を持ち行動することは、時には回り道に見えても、長い目で見れば、互いが利益を享受し持続的発展可能なサイクル構築のための近道となるものと考えます。

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