パブリック・リレーションズ

2005.09.05

パブリック・リレーションズの「自己修正型ライフサイクル・モデル」は継続的に上昇するスパイラル

こんにちは。井之上喬です。8月も終わり、夏の暑さも少し和らぎ心地よいインディアン・サマーの季節になりましたが、いかがお過ごしですか。今回は、9月の最初の週ということで、PR理論について少しお話したいと思います。

いつも私が、パブリック・リレーションズを行う際に用いるのが、自己修正機能を持ったPRのライフサイクル・モデルです。このライフサイクル・モデルは、必要なときに修正をかけながら目標や目的を継続的に達成していくためのモデルで、組織体で行なう広報活動に限定されることなく、それ以外の領域、すなわち個人の日常生活における小さな目的から、組織運営上の大きな目標の達成までをカバーできる、いわば普遍的なライフサイクル・モデルです。

このライフサイクル・モデルのプロセスを簡単に記すと以下のようになります。

(1)何を達成したいのか、全体目標(ゴール)を掲げる
(2)必要な情報を収集し、現状を分析(リサーチ&シチュエーション・アナリシス)
(3)収集した情報や分析結果からPR目的を設定
(4)目的達成に必要なターゲットを設定(ビジネス/コミュニケーション・チャンネル)
(5)最も効率よく最大の効果を発揮できるPR戦略を構築
(6)その戦略を遂行するためのプログラムを作成
(7)作成したプログラムの実施
(8)プログラム終了後、活動結果・情報の分析・評価
(9)必要であれば目的や戦略などに修正を加え、新たな活動に役立てる

ライフサイクルの中に、「目標(ゴール)」と「目的」という言葉が出てきます。これらについて少し説明しておきます。一般的に目標と目的には明確な区別がなくあいまいに用いられているようです。ここでは、目標と目的の関係を明確にするために、私と同様の考えを持つ米国のパブリック・リレーションズ学者であるジェームズ・グルーニッグ(James E. Grunig)の定義に従って「目標を目的の上位概念と位置づけ、目標は目的より広範でor大きく全体的なもの」としています。

プロセスの始まりを意味する全体目標(ゴール)と目標達成を可能にする具体的な目的の設定は特に重要です。また、目的は目標から導き出され、通常、ひとつの目標に対して複数の目的が設定されます。そして、個々の目的を達成するごとに全体目標に近づいていきます。

このプロセスで貫かれているのは「倫理観」に支えられた「双方向性コミュニケーション」「自己修正」機能です。

パブリック・リレーションズはできる限りWIN?WINを実現していく活動です。倫理観を貫くことで、そのベースが確立されます。また、相手の視点を確保するために双方向性コミュニケーションは欠かせません。そして、より良いものがあれば吸収したり、誤りがあれば修正を行うことで、一連のライフサイクル・モデルは継続的に上昇するスパイラルを描くことが可能になります。

想定した結果が得られなかった場合には、その都度、問題を明らかにし改善することでより質の高いパブリック・リレーションズを行うことができます。「失敗の原因は何か?」「目的設定の甘さか?」「ターゲット設定の誤りか?」「戦略構築に無理がなかったか?」「プログラムが未熟だったのか?」、あるいは「実施過程に不備があったのか?」など、各フェーズでの問題を抽出・分析し解決していくことが大切です。

パブリック・リレーションズでは、パブリック(一般社会)の中から目的達成に必要なターゲット(複数ある場合が多い)を設定し、そのターゲットとのリレーションズを通して目的を達成していくというプロセス(or手法)を採ります。したがって、ターゲットとの媒介者であるコミュニケーション・チャンネル(組織体にとっては主にメディア、個人にとっては紹介者など)との良好な関係を保つことを常に意識しなければなりません。コミュニケーション・チャンネルを効果的に活用するとターゲットとのスムーズな関係構築のチャンスが増大します。

上記のライフサイクル・モデルの手順に沿って、職業選択を例(女性)にとってみましょう。

(1)「家庭と職業の両立を目指し、外資系企業への就職」をゴールに掲げ→ (2)自分の適性を調べ、マッチする業界や企業の情報を収集し現状を分析し→ (3) PR目的を、「自分の人生における仕事との関わり方に対するターゲット(就職希望企業/両親/フィアンセなど)の理解を高める」と「自分の持つ海外留学経験や、インターンシップをベースにした英語力や社会経験を認知してもらう」と設定→ (4)どの企業がいいか、そして企業の採用担当者など、目的達成に必要なターゲットを設定し、コミュニケーション・チャンネルとしてOB・OGや紹介者を誰にするのか決める→ (5)「ターゲットへどうアプローチするのか」、「直接会うのか、紹介者を通すべきか」など具体的なPR戦略を構築する→ (6)自分の長所をどうアピールするかなど、面接時のQ&A、効果的な提出書類の作成など、戦略遂行のためのプログラムを作成する→ (7)作成したプログラムを実施する→ (8)プログラム終了後、活動結果・情報の分析・評価をする→ (9)必要であれば自己修正を機能させる、といった具合です。

新製品発表の場合であれば、(1)最終目標を「企業イメージを体現するヒット商品を育てる」に設定→ (2)該当するマーケットの市場規模、消費者動向、競合に対する強みや弱みなど、必要な情報を収集し現状を分析(リサーチ&シチュエーション・アナリシス)する→ (3) PR目的を「新しいトレンドを創り出す企業イメージと製品イメージを融合させたブランディングの確立」や「革新的なテクノロジーに対する認知を高める」と設定→ (4)消費者、製品を使うシーンに関連ある製品を提供する企業など、目的達成に必要なターゲットを設定し、コミュニケーション・チャンネルとしてのメディアを設定→ (5)「新しいブランディング構築のための強力なメッセージの策定」や「コーポレート・コミュニケーションとマーケティング・コミュニケーションを統合する」といったPR戦略を構築→ (6)その戦略を遂行するためのプログラムを作成→ (7)作成したプログラムの実施→ (8)プログラム終了後、メディアへの露出効果、消費者からのフィードバックなどを分析・評価→ (9)分析・評価データを基に新たな目標設定や戦略の見直しに役立てる、というプロセスを踏みます。

幅広く奥行きのあるパブリック・リレーションズを実施する際、通常チームを編成して行います。チームワークのよさが結果に反映されることは間違いありません。しかし、もっと大切なことがあります。それは個人の力です。自立した強い個が集まった持ったチームには、ひとり一人が責任を果たし確実に目標に向かって協働できる柔軟性と強さがあります。

このライフサイクル・モデルを使って目的を達成していくごとに、自立した個の強さを身につけることができます。何事にも目的意識が生まれ、戦略・戦術を練るうちに達成までのシナリオを描く力がつくからです。また、倫理観に沿って行動することで、確固たる判断基準を身につけることができます。

個人や組織体のどんな目標や目的も、「自己と他者」との関係性あるいは「自己と自己の内面」との関係性を良好にすることによって達成可能になります。ですから、パブリック・リレーションズのライフサイクル・モデルは、人生に関わる大きな目標から毎日の小さな目的にまで活用できるのです。一度身近な目標を掲げ、このライフサイクル・モデルを実際に使ってみてください。どんな目標や目的に対しても有効であることが実感できると思います。

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