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2021.07.30

グロバールビジネス学会この10年を総括
~三役の顔ぶれ一新、次なる時代へバトンタッチ~

こんにちは井之上喬です。
新型コロナウイルスによる非常事態宣言下の7月23日に、1年延期された「東京オリンピック2020」が開幕し、難民選手団を含む205の国と地域から1万人以上の選手団が熱い戦いを繰り広げています。首都圏会場では無観客という異例ずくめの大会ですが、大会の成功とアスリートの皆さんの健康・健闘を祈っています。そんな中、東京都のコロナ感染者は7月29日現在で3865人と一気にその数が増えており、今後の推移が懸念されるところです。

さて今月7月7日の七夕の日に、一般社団法人グローバルビジネス学会のオンライン総会で、3人の代表理事、丹羽宇一郎会長、小林潔司理事長、そして副会長の私が約10年に及ぶ三役の務めを無事終えました。

東日本大震災をきっかけに発足

思えば、学会設立前年の2011年3月に起きた東日本大震災によるサプライチェーンの崩壊は、世界がグローバルに繋がっていることを覚醒させてくれました。世界が単に地理的につながっているだけでなく、金融経済やモノづくりに必要な物流など、企業のあらゆる活動がネットワーク状に連鎖していることが世界に示された出来事でした。

震災被害や超円高の進行、そして地球規模の顕著な変化を受けて、大企業にとどまらず多くの企業がその活動の主戦場を国内から海外へと移そうとする。そんな奔流の中で強まった思いは、各分野で新たな変化に対応できる人材は育成できているだろうか、日本には真の意味でグローバル化が根付いているのだろうか、そして日本は世界経済の発展のために寄与しているのだろうか?という点です。 そんな懸念と焦りを募らせていた2011年秋、京都大学経営管理大学院院長の小林潔司教授と出会ったのです

パブリック・リレーションズ(PR)後進国の日本が、いかに様々な面で他の先進国に遅れをとっているか。小林先生と意見交換する中で、誘いを頂き始めることになったのが、京都大学経営管理大学院で「パブリック・リレーションズ論」の講義です。

講義を進めるにつれて、ともに考え語り合うようになった同志も増えていきました。危機的状況にある日本や世界をどうすれば変えられるのか?これに対する取り組みを一層深化させるため、二人で考え出したのが、アカデミアとビジネスが融合した「グローバルビジネス学会」の創設でした。
小林教授に理事長を、そして初代会長には、長年お付き合いいただいていた、日本での事業で最も成功した米国企業、アフラックの日本創設者・大竹美喜名誉会長にお願いし、ご就任いただきました。

こうしてグローバルビジネス学会は2012年4月に発足し、歩みを始めました。当初は任意の学術団体でしたが、2015年12月に一般社団法人化を果たし、私は代表理事を兼務することになりました。前年の2014年9月には大竹会長の後任として丹羽宇一郎元伊藤忠商事会長を会長にお迎えし、日本社会や国際社会にアカデミズムと実務が融合した知見と知恵の成果を示しながら、グローバル人材の育成と、世界経済発展の下支えとで貢献したいとの思いを共有し活動を続けてまいりました。

TPPの日本加盟実現にも寄与

学会活動では、その時々の最もホットで核心的なテーマを、AIから地方創生に至るまで分野横断的かつ包括的に取り上げ、文字通り第一線の皆さんの協力を得て、各種研究会やセミナーなどを開催しました。

学会のレギュラー活動としては毎月、グローバルビジネスをテーマに内外の著名人、有力者をゲスト講師にセミナーを実施。時代の最先端を行く様々なトピックで刺激的な情報提供と会員との意見交換を行いました。

また、大きな大会をこれまで3回開きました。第1回大会は2013年3月16日~17日、早稲田大学国際会議場の会議室と井深大記念ホールを会場に、「多極化におけるグローバリゼーション」を統一テーマで開催。ビジネス界からは、日本を代表する企業CEOによる講演とパネルディスカッション、そしてアカデミアを中心に10件に及ぶ学会内研究成果の発表と討議が行われました。参加者も、グローバルビジネスに関心の高い会員や一般の人々約250名に加え、ニコニコ動画によるストリーミング配信では6万人を超える視聴者を数えました。

第2回大会は2014年3月22日~23日、京都大学経営管理大学院と共催で「日本型クリエイティブサービスのグローバル化~世界に広がる日本のおもてなし」をテーマに、京都大学芝蘭会館(稲盛ホール)と吉田キャンパス総合2号館で開催。京都を中心とした観光PRの実例やグローバル化による市場分析など、ユニークな視点からの講演やディスカッションが行われました。

第3回大会は2015年7月4日~5日、再び早稲田大学国際会議場を主会場に「地方創生とグローバルビジネス」というテーマで開催。地方創生を国家的テーマに推進する政府担当官による基調講演をはじめ、地方自治体の首長や企業、大学、そして地方金融機関などからのパネリストを交えて熱い討論が交わされました。

また、2017年7月9日、岐阜大学との共催により行った研究発表会は「地方活性化とグローバルビジネス」を統一テーマとしました。会場の岐阜市「長良川うかいミュージアム」は全面ガラス張りで、織田信長ゆかりの岐阜城を眼前に歴史と豊かな自然を体感でき、素晴らしい環境で開催できたことを思い出します。

そのほか2019年7月に熊本県天草市で開催した研究発表会、コロナ禍の中の2020年12月に対面とオンラインのハイブリッド形式で開催した愛知県稲沢市での研究発表会など、一つひとつが懐かしく思い出されます。

学会の活動でとくに印象深いのは、第二次安倍内閣時代、日本政府や自民党内での方向性が定まっていなかった環太平洋パートナーシップ(TPP)協定日本参加について、学会内に設置した「国際経済連携協定委員会」から政府へ緊急提言を行ったことでした。メンバーには道路公団総裁も務めた近藤剛座長(委員長)はじめ、副座長にはローレンス・グリーンウッドさん(元米国APEC大使)と渡邊頼純さん(慶応義塾大学教授)が就任。顧問の一人として元JETRO理事長で林康夫さん(現委員長)も参画して頂きました。多くのメンバーの皆さまの熱意とご尽力を得て、政府や自民党内の意見集約に少なからず寄与できたのではないかと考えています。

今後の学会運営は、中林美恵子新会長(早稲田大学教授)、平林信隆新副会長(共栄大学教授、元ソニー)、秀島英三新理事長(岐阜大学教授)のお三方に託されます。皆さん、それぞれの分野で実績を持っておられ、新しいグローバルビジネス学会に相応しい方々です。丹羽会長は名誉会長、私も小林先生と共に、顧問として今後も微力ながら関わらせていただきますが、新体制の若い力で、これからのグローバルビジネス学会のあるべき姿を模索していただけるよう願っております。

7月7日には総会に先立ち、グローバルビジネス学会の学会誌名を冠した「第1回GBJ賞」の表彰式が行われました。著作部門では、2018年に執筆した私の英文著書が受賞するなど、「七夕の日」を彩るイベントになりました。

最後に、事務局の皆さんはじめ、これまで学会発展のためにお力添えくださった多くの皆様に、この場をお借りして心より御礼申し上げると共に、今後の学会がより良い社会の実現のために貢献することができるよう、心よりお祈りいたします。
ありがとうございました。

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