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2021.08.17
頻発する地球規模での難題に立ち向かうために
~パブリック・リレーションズ(PR)を通じ平和でより良い世界を実現しましょう
皆さんこんにちは井之上喬です。
8月は私にとっては「祈りの月」。平和について改めて考えを巡らせることができる大切な月ですね。8月6日に広島、9日に長崎に原爆が投下され、そして15日は第二次世界大戦が終戦を迎えて76年が経ちます。
世界は新型コロナウイルスの感染拡大とともに、中東やアフリカ、アフガニスタンなど各地で紛争が続いており、いまだ多くの人々が苦しみの中にあります。
悲惨な戦争体験や史料を次世代に語り継ぎ、継承するだけでなく、過去の経験を活かし、どうすれば平和な世界を持続的に実現できるのか、一人ひとりが考える月にしたいものです。
それにしても最近気になるのは、世界規模での大規模災害の頻発です。
日本では、お盆の時期としてはまれな大雨による被害が、九州から中国、近畿、関東甲信そして東北の広い範囲で発生し、犠牲になった方や避難された方が多くおられます。
ご冥福をお祈りするとともに、平安な日々が一日も早く戻ることを心よりお祈りいたします。
海外でも、カナダ、トルコ、米カリフォルニア、シベリアなどでの大規模な山火事や、ドイツなどでの大洪水などの災害のニュースが、連日のように流れています。
これらの要因として、温暖化による地球規模での気候変動があるのは明らかです。
待ったなしの地球温暖化対策
8月9日には、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が報告書を発表。地球温暖化による気候変動リスクが以前にも増して切迫していることを、私たちにつきつけました。
IPCCとは、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が1988年に共同で設立した国連組織Intergovernmental Panel on Climate Changeの略で、気候変動に関する最新の研究成果を世界の研究者の協力のもとで整理し、定期的に報告書をまとめています。
世界各国の気候変動対策に、科学的なデータや知見を提供するとともに、気候変動枠組み条約など国際交渉の基礎情報としても引用されています。
IPCCの報告は、1990年の第1次報告から数え6回目となります。詳しい内容は環境省のホームページや報道記事をご覧ください。
地球温暖化対策の国際的枠組みとして2015年に採択されたパリ協定は、産業革命前と比べた気温上昇幅を2度未満にすることを目標とし、さらに努力目標として1.5度以内に抑えるよう追求することを目的としていますが、今回の報告では、IPCCが2018年の報告書で示していた想定より10年ほど早く、2021年から2040年に1.5度に達すると予測しています。
この問題の深刻さが改めて浮き彫りになったと感じたのは、私一人ではないと思います。
その背景として、報告は人間活動の地球温暖化への影響は「疑う余地がない」と断言、2050年ごろに二酸化炭素やほかの温暖化ガスの排出量をゼロにすることが必須、としています。
まさに地球温暖化対策が待ったなしの緊急事態にあることがわかります。
実効性ある温暖化ガス削減対策を世界規模で
それに対し、世界の対策の足並みはそろわず、実効性に乏しいのが現実ではないでしょうか。11月には、イギリス・グラスゴーで1年延期となったCOP26(国連気候変動枠組み条約締約国会議)が開催の予定です。今回のIPCCの報告を受け、実効性のある議論が行われることを期待したいと切に思います。
8月4日、経済産業省は新たなエネルギー基本計画案を示しました。
エネルギー基本計画は3年ごとに見直されています。今回は、2030年に温室効果ガスを2013年度に比べて46%削減するという政府の目標の実現に向けて、どのような電源構成にするのかが注目されています。
計画案によると、2030年度の電源構成は、太陽光など再生可能エネルギーの比率を現在の計画の22~24%から36~38%に引き上げるものの、原子力発電は20~22%で維持。一方で、二酸化炭素を排出する火力については今の計画の56%から41%と大幅に減らすとしていますが、火力の比率がこの程度で、温室効果ガスの削減目標を達成できるのでしょうか?
原発にしても、福島事故の教訓で得たものとして、個人的には人類の将来に備え、科学技術としての原子力技術の維持を考え、1基のみとし、他はすべて廃棄すべきと考えています。
私も早くから次世代のクリーンなエネルギー源としての水素に注目し、2009年から「水素研究会」を主宰、現在も定期的に専門家、有識者、ジャーナリスト、学生などが参加する勉強会を継続しています。水素社会は、人類が究極的に到達し、永続的に享受できるものだと信じます。
二酸化炭素など地球温暖化ガスを削減した効果が出るのは、実際には数十年後かもしれません。私たち現在の世代は、削減努力はするもののすぐには効果が出ない、というジレンマを抱えるでしょう。でも、次世代にこれ以上の負の遺産を引き継がせない、という決意を胸に、それぞれの立場で知恵を出しながら、取り組みを継続しなければならないと思うのです。
私が普及に取り組んでいるパブリック・リレーションズ(PR)は、目標達成に向け、さまざまなステークホルダーとの対話を通じ、自己修正を行いながら良い関係構築(リレーションシップマネージメント)を行うことを柱としています。
地球規模で進行し、長期にわたるであろう気候変動問題では、今後を担う次世代、まだ生まれてこない将来世代も重要なステークホルダーです。その声はまだ小さく、あるいは聞こえていません。そんな声を聞くには、私たちが備える倫理観を発揮し、想像力を働かせることが欠かせません。
国連のSGDs(持続可能な開発目標)の17番目の目標は「パートナーシップで目標を達成しよう」です。社会課題が大きく、地球規模になるほど、解決にはより多くの人たちが手を携えるパートナーシップが不可欠です。そのためにも、パブリック・リレーションズ(PR)を、世界規模で機能させることが不可欠だと考えています。