アカデミック活動

2014.04.04

グローバルビジネス学会、京都での第2回全国大会成功里に終了〜統一テーマは「日本型クリエイティブサービスのグローバル化〜世界に広がる日本のおもてなし」

皆さんこんにちは井之上 喬です。

新会計年度を迎えたのと時を同じくして、東京の桜は一気に開花しソメイヨシノは満開に咲き誇っています。会社近くの名園・新宿御苑の桜も今週が見ごろで多くの人達が桜を愛でに訪れています。

私が経営する井之上パブリックリレーションズでは、弁当付き花見を新宿御苑で行うのが恒例となっています。日本人にとって心うきうきする季節ですね。

先月、私が副会長を務めるグローバルビジネス学会の第2回全国大会が、場所を昨年の早稲田大学から京都大学に移し、3月22日(土)と23日(日)の2日間にわたり開催されました。

京都ならではの嗜好も

今回の統一テーマは「日本型クリエイティブサービスのグローバル化?世界に広がる日本のおもてなし」。共催は京都大学経営管理大学院で、初日の会場は芝蘭会館(稲盛ホール)、2日目は吉田キャンパス総合2号館でプログラムされました。

後援は、今回から外務省が新たに加わり、経済産業省、中小企業庁、日本貿易振興機構(JETRO)、独立行政法人中小企業基盤整備機構、公益法人日本ニュービジネス協議会連合会、財団法人アジアフードビジネス協会、日本ベンチャー学会、特定非営利活動法人日本教育再興連盟。

初日は橋本大二郎氏(グローバルビジネス学会評議員・慶応義塾大学特別招聘教授)の総合司会で進められました。京都市の「京都観光おもてなし大使」を務める妙心寺退蔵院副住職の松山大耕氏による基調講演に始まりました。ちなみに退蔵院は宮本武蔵ゆかりのお寺です。

続くパネルディスカッション「関西流おもてなしとグローバル市場」ではパネリストに松山氏のほかに、井上勝之氏 (公文教育研究会 経営企画室 室長)、輿水精一氏 (サントリー酒類株式会社ブレンダー室チーフブレンダー)、村山卓氏(株式会社ユー・エス・ジェイ マーケティング本部営業部ジェネラルマネジャー)といった関西系企業で活躍する方々を迎え、モデレーターの前川佳一氏(京都大学経営管理大学院特定准教授)のもと関西流とグローバルと言う、ユニークなテーマ設定のもとさまざまな分野で活躍している皆さんのディスカッションは示唆に富んだものでした。

松山氏の「茶道で言う『お点前』を超えたところに日本型の良さがある。型を知ってそれを超越する『型破りな企業』が京都に老舗が多い理由なのかもしれません」との分析は非常に興味深いものでした。

また、午後の部では笹谷秀光氏(伊藤園取締役CSR推進部長)による「グローバルな共有価値創造戦略?伊藤園のお茶のおもてなしと世界のティーカンパニーへの取組みを例として」、田中秋人氏(アジアフードビジネス協会理事長)の「日本型クリエイティブサービスとアジア展開」、グレゴリー・クラーク氏(多摩大学名誉会長)の「日本文化と経営」そして丹羽宇一郎氏(前伊藤忠商事会長)による「日本の将来の核心は教育にある」など内外で活躍する各界を代表する有識者の講演などが行われました。

初日の最後は、小林潔司京大院教授(当学会理事長)と坂田優子さんによる、祇園の紹介といま人気No.1の舞妓紗月さんの日本舞踊が披露されるなど、京都ならではのプログラムも組まれました。

さまざまな分野で熱い議論を展開

2日目は、グローバルビジネス学会員による12の研究発表と1つの特別セッションが行われました。

研究発表は6つのカテゴリーに分けられ6名の担当座長が進行を務めました。

『エネルギー問題とグローバル化』では、日本を代表する水素研究者の山根公高氏の「水素エンジンから見た液体水素燃料の有効性、安全性と多量生産・移送の可能性」、そして仏エネルギー会社TOTAL-FINA-ELFの前極東代表de Mestier, Hubert氏の「An Energy Mix Strategy to Secure Japan’s Future in the Global Economy」

また『ものづくりのグローバル展開』では、サンヨーの宮本琢也氏の「総合電機メーカーの研究開発体制の歴史的変遷」、前関西学院大学院教授の北村秀実氏の「日本企業のグローバル化を支える3つのチカラ」。個人的には北村さんの提示する3つのチカラの重要な要素として位置づけられる「パブリック・リレーションズ(PR)」の捉え方に関心を持ちました。

さらに『グローバル化時代におけるエンタテイメント』では、京都大学院特命教授の湯山茂徳氏の「エンタテインメントの原理」、「グローバルビジネスにおけるエンタテインメントの役割」。

『グローバル化に向けた組織整備』では、京都大学生の戸村翔一氏の「大学生組織における人材育成並びにチームビルディング」また出雲市役所の三加茂圭祐氏の「地方におけるインバウンド・ツーリズムの推進に向けて」。

『地域・文化のグローバル化への影響』では大学教授の朴熙成氏の「韓国化粧品ODM/OEM企業のグローバル化に関する一考察」、前メリアルジャパン社長のMichel Lachaussee氏の「Managing a foreign company in Japan: lessons for Japan’s business transformation」

『投資・社会制度とグローバル化』では国際弁護士井上葵氏の「投資協定仲裁の発展と課題」、そして元マッキンゼー、現AZCA, Inc.社長の石井正純氏の「シリコンバレー・エコシステム の活用による日本企業のコーポレートベンチャリング」などグローバル化をテーマにしたさまざまな講演が行われました。

また私がモデレーターを務めたTPPフォーカスの特別セッション「国際経済連携協定研究会〜日本はTPPにどう取り組むべきか?」では、4月のオバマ大統領来日前の日米政府間による最終的協議が行われる中でのセッション。

昨年秋にスタートさせた研究会では、これまで2回にわたってTPP交渉に関する緊急提言を行っています。

近藤剛氏 (研究会座長:伊藤忠商事株式会社理事、元日本道路公団総裁)による中間報告の後、同氏を加えたパネルディスカッションにはGreenwood, Jr., C. Lawrence氏(元APEC米国大使)、林康夫氏(JETRO顧問/元JETRO理事長)、中野憲一氏(弁護士 アンダーソン・毛利・友常法律事務所)、浅川芳裕氏(ジャーナリスト・山口大学農学部非常勤講師)を迎え、農業自由化に集約した活発な議論が展開されました。

紙面の都合で多くをご紹介できないのが残念ですが、この2日間の大会は、私に多くの収穫をもたらしました。

特に印象に残った話は、松山副住職の京都にある老舗企業の話です。

創業200年以上の老舗企業が3000社強と世界でも断トツの日本のなかでも京都の占める割合は4%で日本一だそうですが、松山副住職はその背景について覚醒的な話をしてくれました

「常にお客様を向いている。継続を最優先に優秀な人材を常に採用し続けてきた。本業で社会に貢献するCSRを重視する企業観。超長期的視点。人間を主体とした経営観」などが企業の持続性を支えているとしています。

この話は、企業経営においてこれまでの人材をコストとみなし、利益やプロセス・手順を重視する「アルゴリズム型経営」から、人材を資産とし従業員を大切にした「社員の成長は会社の成長」とする新経営概念、「ヒューリスティック型経営」に他ならないと感じさせるものでした。

古臭いと感じる老舗企業の経営こそ、今の日本企業の閉塞感を脱する一つの解があるように感じました。

そう言えば京都を拠点とする企業の経営者には、パブリック・リレーションズ(PR)に欠かせないストーリテリングができる経営者が多い気がします。古都京都に日本の未来の方向性を見た2日間でした。

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