トレンド

2023.10.28

「原子力の日」に思う
〜今こそ化石燃料「大規模集中型」から再エネによる「地産地消型」グリーンエネルギーへの転換を

皆さんこんにちは、井之上喬です。

記録的な暑さの夏から一転、早くも北海道や富士山などの山岳地帯からは初冠雪の便りが届いていますね。

四季折々を愉しむ日本の季節感が、地球温暖化の影響で薄れているのは残念ですね。その意味でも地球温暖化対策は待ったなしの状況だと感じます。風力や太陽光、地熱など、温室効果ガスである二酸化炭素を出さない再生可能エネルギーの開発と利用をさらに加速させたいものです。

10月26日は原子力の日

このブログで毎年のように触れていますが、10月26日は「原子力の日」です。

1963年(昭和38年)のこの日、茨城県東海村の日本原子力研究所(現在の日本原子力研究開発機構)の動力試験炉(JPDR)で、日本が初めて原子力による発電に成功しました。そして、今年でちょうど60年を迎えます。

この日はまた、これに先立つ1956年(昭和31年)に、日本が国際原子力機関(IAEA)への加盟を決めた日でもあります。これらから、10月26日が原子力の日に制定されたそうです。

日本国内で運転中の原子力発電所は、10月27日現在、関西電力の大飯原子力発電所3号機、高浜原子力発電所1、2、4号機、四国電力・伊方原子力発電所3号機、九州電力・川内原子力発電所の1、2号機、玄海原子力発電所3、4号機の計9基が営業運転中(原子力安全推進協会資料)となっています。これらの定格出力の合計は、873.2万kw。ちなみに点検などのため停止中は23基、調整運転中1基となっています。

日本の全発電電力量に占める原子力発電の割合は、2017年が2.8%、2018年4.7%、2019年6.5%、2020年は4.3%、2021年は5.9%、2022年4.8%で推移しています。

最近の原子力発電所をめぐるニュースとしては、東日本大震災による東京電力福島第一原発事故でたまった処理水の海洋放出問題があります。

東京電力は、8月24日午後から福島第一原発の沖合1キロメートルの海域の底にある放出口から処理水の放出を開始しました。現在は、2回目の処理水放出を10月23日に完了しましたが、全てを放出するためにかかる期間は何と今後30年に及ぶ見通しだそうです。

脱炭素、カーボンニュートラルの観点から見直されている原発ですが、処理水の問題だけでなく原発の稼働で排出される“ごみ”の行き場、処理方法など大きな問題を抱えています。最近の報道でも、発電で使い終わったウラン燃料である「使用済み核燃料」、その使用済み核燃料を一時的に保管する「中間貯蔵施設」、そして高レベル放射性廃棄物の「最終処分場」などの言葉が、受入れ地選定が難航するなどの情報とともにたびたび登場しています。いわゆる「核のごみ」の行き先は、いまだに目途がたっていない状態です。

地球温暖化の影響が私たちの生活にもさまざまな影響を及ぼしているのは、皆さんも実感していると思います。温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)排出量の大幅削減は待ったなしの状況で、カーボンニュートラルに向けた新たなエネルギー政策の実行が喫緊の課題になっているのは誰の目から見ても明らかです。

再生エネルギー活用を加速させよう

2020年10月、菅政権は2050年までに温室効果ガスを80%削減すると発表しました。それまでの2030年度の温室効果ガス削減目標を大幅に引き上げ、カーボンニュートラルの達成時期を大幅に前倒しするものでした。

石油、石炭など化石燃料は、燃焼によってCO2を出し、1回きりしか使えません。対して、太陽光や風力などはCO2を出さず、太陽が輝く限りいつまでも電力を生み出します。これらの電力で作った水素もCO2を出さず、再び作り使うことができます。このような再生可能エネルギーは地球への負荷が少なく、持続可能な人類の活動や地球全体の生態系の保全には欠かせません。

政府による第6次エネルギー基本計画でも、脱炭素に向けてエネルギー源の多様化を挙げ、中でも再生可能エネルギーの割合を第5次計画(22~24%)と比べ10ポイント以上引き上げて「36~38%」に拡大することを打ち出しています。
ここでは、これまでエネルギー源の主役であった石油、石炭など化石燃料から、再生可能エネルギーへとシフトする道筋を示しています。

そのポイントは「地産地消」です。これまでの化石燃料は大型、高効率の装置を使って発電する「大規模集中型」でしたが、今後は地域で再生エネルギーを作り、消費する「地産地消型」への発想の転換、実現が不可欠となっています。

そのためには、国のエネルギー政策の転換はもちろん、エネルギーを消費する私たちの意識改革も必須だと考えます。

国のレベルでは、エネルギー・産業分野での構造転換や大胆な投資によるイノベーションの創出といった取組、つまりグリーントランスフォーメーション(GX)への取り組みが必要です。

再生可能エネルギーの普及の壁としてよく指摘されるのは、エネルギー価格の上昇など直接私たちの家計への影響です。何らかの変化が起きる時には、それなりのきしみは発生するでしょう。しかし、現在日本はエネルギー源となる石油、石炭、液化天然ガスなどを海外から輸入し、年間35兆円以上支払っています。エネルギーの国内生産により、これらの買い付け資金が国内のエネルギー関連の投資などに回れば、それによる経済効果は計り知れないでしょう。中東情勢に一喜一憂することもなくなります。広い視野で利点と欠点を比べていくと、より大きな可能性が広がっていると思えます。

地球全体を見てみましょう。温暖化による世界各地での熱波や干ばつ、山火事や洪水など、気候変動による災害が深刻さを増しています。これらの現象は、自然の変動を超え、人類の活動による地球の平均気温の上昇に起因しているものであるとの報告が、ますます多くなっています。

私たちの次の世代に、さらなる地球温暖化が進み、環境破壊が進む地球を引き継ぐのか、それとも歯止めをかけるのか。まさに正念場を迎えています。

このように外部環境の変化による大きな価値観の変化が必要な時こそ、さまざまな利害関係者(ステークホルダー)との対話や関係構築(リレーションシップ・マネジメント)を重ね、よりよい状態を目指して自己修正も柔軟に行うパブリック・リレーションズ(PR)が不可欠です。

気候変動によるステークホルダーは、我々全員です。それぞれに立場、考えも異なります。それだけに、共通のゴールを目指すために粘り強く対話と関係構築、自己修正を続けていくことが求められます。忘れてならないのは、将来の我々の子孫も、そして地球上に生きる生き物もステークホルダーであることです。彼らは、直接声を上げることはありません。しかし、私たちは知恵と知識、想像力を十分に働かせて、聞こえない声を聞かなければなりません。それは、パブリック・リレーションズの柱の一つである「倫理観」にもつながります。

次の世代に負の遺産だけは残さない、サステナブル(持続可能)な社会の実現のためにもパブリック・リレーションズ(PR)を上手に機能させませんか。

書籍

注目のキーワード
                 
カテゴリ
最新記事
アーカイブ
Links

ページ上部へ