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2015.12.31

2015年のM&Aは過去最高、世界のビジネス環境激変の予感〜新たな企業価値の創造と情報発信がより重要に

皆さんこんにちは井之上 喬です。

 きょうは大晦日、この年の瀬をいかにお過ごしですか。新しい年2016年ももうそこまで来ていますが、大掃除や年賀状の準備などは万端でしょうか。

さて皆さんは、来る2016年をどう予測しますか?

ビジネス誌の多くは年末年始の合併号で、恒例の「2016年予測」を特集していましたが各誌の表紙を見てみましょう。

週刊ダイヤモンドは、「2016 総予測 再加速か停滞か」の大見出しで経済、産業、国際、政治・経済、地方、働き方、消費、スポーツ・文化の各分野を取り上げています。また、週刊東洋経済は、「2016 大予測」として、2016「まさか」のシナリオ、社長の先読み術、キーパーソンを直撃、政治・経済・産業、新年に買える株、生活・文化・テクノロジーの各項目をピックアップ。そして週刊エコノミストは、「世界経済 総予測2016」で2016年の世界経済はこう動く!米国、中国、欧州、株・為替、原油、となっています。それぞれの内容についてはこれから読み込むのを楽しみにしたいと思います。

年末年始に、来るべき2016年を各界の識者がどう見ているかビジネス誌を通し、じっくり読んでみるのもいいですね。

2015年のM&A金額は過去最高に

個人的には2015年に世界規模で吹き荒れたM&A(企業の合併・買収)の動きが、2016年にはどうなるのか注目しています。

年末も押し詰まった12月29日の日本経済新聞朝刊1面の左に、「アサヒ、米飲料大手を買収」との見出しで、アサヒグループホールディングスが500億円で米飲料大手のトーキングレイン買収の方針を固めた、との記事が目を引きました。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、12 月 22 日付けで「2015年を振り返る 企業のM&Aが過去最高に」とのタイトルでM&Aに関する2015年の振り返りをしています。

それによると、企業のM&Aはそれまで金融危機以降低調であったものが、2015年の世界企業が結んだ買収契約では金額にして4兆6000億ドル(約557兆円、1$=約120円換算)に上り、これまで最高だった2007年を超えて史上最高になった、としています(調査会社ディールロジックの調査資料)。また、この増加をけん引したのは米国企業で、2兆3000億ドルの契約が結ばれ、こちらも史上最高記録となったそうです。

そして注目すべきは、買収金額が100億ドルを超えた件数が実に58件に上ったことです。従来の最多記録が2006年の43件だそうですから、それを大幅に上回っておりM&Aの大型化の傾向が見られます。

世界規模での新たな買収戦略

また、2015年の特徴として同一業界内の企業が関わるM&Aが増加していることです。当然のことながら業界に大きな影響を及ぼし、少し前まで「同一業界で生き残れるのはトップ3」と言われる時代はすでに終焉し、世界規模で競争の質が大きく変化してきたともいえます。

2015年の世界の企業買収トップをみると、製薬業界での米国ファイザーのアラガン(アイルランド)買収が148.6B(10億)ドル(約17.8兆円)、ビール業界でのベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベイブのSABミラー(英国)買収が105.6Bドル(約12.7兆円)の2件が100Bドル超えで、欧州石油最大手の英国とオランダに本社を置くロイヤル・ダッチ・シェルの英国BGグループ買収が69.8Bドル(約8.4兆円)、米国デルの米国EMC買収が66Bドル(約7.9兆円)などとなっています。

また、分野別ではヘルスケア分野が687.5Bドル、テクノロジー分野が607Bドル、リアルエステート分野が381.1Bドル、石油&ガス分野が370Bドル、テレコム分野が328.7Bドル。

WSJは記事の中で、こうした合併のなかには、別の動きを起こすまでの1つの通過点に過ぎないものもあるとしていくつかの例を挙げています。その例としては、ヘルスケア分野でのファイザーのアラガン買収の案件は、買収後に企業が分割され、製薬業界に新たな大手プレーヤーが誕生する可能性を、また、総合化学大手の米国ダウ・ケミカルとデュポンの合併では売り上げ規模で約1300億ドル相当の価値を持つ企業が誕生するが、その後3つの新会社に分割することを明らかにしている、との例を挙げています。

米国企業を中心に2015年は、世界のビジネス界の環境を大きく変化させる動きが顕在化した潮目の年なのかもしれません。

戦略的な情報発信がより重要な時代に

このような世界規模でのビジネス環境の大変革のなか、日本企業はどのような戦略をとるのか注目されます。

企業価値を見る1つの指針として時価総額がありますが、2015年11月末時点での世界時価総額ランキングでは、日本企業の最高位は23位のトヨタ自動車で195.76Bドル(約23兆円)、残念ながら50位までの日本企業は1社のみのランクイン。

米国企業を中心に規模の追求が進むなか、日本企業はどこに企業価値を見出すのか、何を目指すのか。こんな時こそパブリック・リレーションズ(PR)における、企業のレピュテーション・マネージメント(品格・評判の管理)がますます重要になってくるのではないでしょうか。

レピュテーション・マネージメントは、企業イメージや製品イメージだけでなく、企業収益、株主への配当額、CSR(企業の社会的責任)CSV(共有価値の創造)へのかかわりや企業の将来性などさまざまなファクターが関係しあって構築され、それをいかに戦略的に情報発信していくかが企業価値を高めるうえで重要となります。

規模も大事ですが単に規模だけではない、日本発のグローバル・ビジネスモデル、世界に通用する企業価値があるのではないかと考えます。

2016年はグローバルな視点を持ったパブリック・リレーションズへの取り組みをさらに加速したいと思っています。

皆さん、今年もご愛読いただき誠にありがとうございました、穏やかで良い年をお迎えください。

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