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2012.01.02

新年にあたって考えること〜日本は本気で変革をしなければならない

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

2011年の日本は、私たちの心に深く刻まれた大きな出来事がありました。東日本大震災福島第1原子力発電所事故など長い苦難の中に日本はありました。

一方世界でも、1月のチュニジアから始まったアラブの民主化革命は、エジプト、リビアへと拡大。新しいコミュニケーション・ツールとしてのフェース・ブックやツイッターの出現が民衆レベルの運動を後押しして政治を変えうることを示しました。

また3・11の大震災と福島原発事故は、世界に対して今後の日本の取り組みへの関心を高め、日本の経験を自国の政策に反映させようとさえしています。

しかし日本は、国内はもとより世界の期待に応える確固たるプロセスを示し、解決の道を歩むことが出来るのでしょうか?

新年にあたって、日本の再生にとって重要な2つの課題についてお話したいと思います。これら2つの課題に共通するテーマは「外部環境の変化への調整・適応」です。

米国の生理学者W・B・キャノンは、生物体にはホメオスタシス(恒常性維持)機能があるとし、組織体は外部環境の変化によって自らを維持するために「調整」「適応」が求められていると説いています。

原発なき社会をどう実現させるか?

最初の課題はエネルギー問題です。
エネルギー資源のない日本は世界最大級のエネルギー輸入国。エネルギー問題が、日本にとってきわめて重要であることはこのブログでもたびたび主張してきました。

近年急速にクローズアップされてきたCO2問題は原子力発電の危険性に覆いを被せ、国家プロジェクトとして原発を推進してきたのも事実ですが、日本のような地震大国で原子力開発が進められてきたこと自体信じ難いことです。

しかし、外部環境が激変する3・11から10ヶ月経た今、除染活動を含め原発事故への対応がいまだ困難を極める状況にあっても、政府に原発推進への肯定的な姿勢が見られるのは何故なのでしょうか?
「電力の確保がないと企業活動に致命的な影響を与える」と産業界が原発推進の大合唱をしているのでしょうか?

電力確保は、現在東京都の猪瀬副知事の天然ガス火力発電所建設(百万KW級:原発1基相当)に見られるように、他の火力発電に切り替えるなど方法は考えられるはず。

ドイツを始め多くの先進国で原発廃止宣言が行われる中、福島原発でこれほどのダメージを受けた日本が何故原発存続に固執するのか理解に苦しむところです。

第2の福島事故が起きたら、日本が再起不能状態に陥ることぐらい危機管理の視点で考えれば当たり前のこと。大震災以降、原発事故再発の可能性が高まったことを外部環境の見直しによって真摯に受け止めなければなりません。

国内での原発事故対策に汲々としている日本が一方で、政府が原発輸出に肯定的な姿勢を示していることへの内外の不信感も高まっています。

今必要なことは、まず原子力発電所の廃止宣言。そして国家の総力を挙げて火力も含めた他のエネルギー開発を工程表と共に発表すること。

そして廃止される原発の具体的工程表を明確にし、国内にとどまらず、広く国際社会に訴えることが求められているはずです。

新たな経済成長と健全な日本社会を維持するために、あらゆるリソースを注入し、新エネルギーの開発に国家的課題として取り組む必要があるのではないでしょうか。

今年の7月からスタートする、太陽光、風力、バイオマスなどの「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が大きな契機になることを期待しています。

まず自らがリストラを行う

2つ目の課題に国家公務員改革が挙げられます。

私は昨年10月に、朝霞国家公務員宿舎建設問題をきっかけに立ち上がった財務省の「国家公務員宿舎の削減のあり方についての検討会」(座長:藤田幸久 財務副大臣)の委員に任命された際、日本の官僚システムを身近にすることができました。

パブリック・リレーションズ
(PR)の専門家として、度重なる検討会を通して確信したことは、日本の再生は「国家公務員制度改革」なしには実現し得ないということでした。

とりわけ3月11日の大震災と福島原発事故以降、疲弊していく日本にとって、その抜本的改革なしに再生はあり得ないと考えるに至りました。

長い鎖国から解き放たれた明治維新は、日本が強力な中央集権体制で近代化を急ぐ中でさまざまな矛盾を抱え込み、外部環境の変化に対応することなく第2次大戦へ突入し、完全な敗北を期すことになります。

焦土から立ち直った戦後の日本は、1980年代初めには近代工業化社会(機械文明)で世界の頂点に立つものの、その後新しい時代に適応することなく90年代以降、米国の復活と新興国の台頭を許し、いまだにダッチロール状態を続けています。

とりわけ激変する経済環境の中で、日本の民間企業は幾度となく生き残りのための組織改革を行ってきました。度重なるリストラは今もなお、組織に帰属する一般人や日本社会に多大な苦しみを与えています。

国民や民間企業、あるいは一部の地方自治体は、明治時代から幾多の変節を経て、数々の自己調整を行い今日に至っていますが、中央官庁における官僚、官僚制度は、さまざまな外部環境の変化に対して一体どのように調整・適応してきたのでしょうか? 問題はこの点にあります。

1000兆円もの今日の財政赤字は政治の責に帰するべきことは明白であるものの、明治時代からの官僚制度に対する調整・適応がなされなかったことが大きな原因となっていることも否定できません。
現在の日本は、企業を例にとると「破綻企業」の状態。

倒産を避けるために企業がやるべきことはまずリストラで、最初に手をつけるのは、工場や遊休地、本社屋、保養所、社宅・社員寮などの不動産や有価証券の売却。

これらに手をつけることなしに、株主であり顧客でもある国民への増税は、製品価格を引き上げ顧客に赤字を負担させるようなもので、顧客の理解を得られないばかりか、買い控えで倒産に追い込まれることは必定。
いま、世界はさまざまな問題を抱えながらも前進する課題先進国日本の動向を注視しています。

2012年は、日本を始め、台湾、ロシア、フランス、中国、韓国、米国など世界の主要国でリーダーが選ばれる年。とりわけ日本では9月の民主党の代表選挙と自由民主党の総裁選挙。また11月には米国大統領選挙と日米両国でトップ・リーダーが選出されます。

混沌とする社会が長く続くと、強力なリーダー出現への願望が強くなります。選挙で選ばれたリーダーがリーダーシップを発揮するのは当然のこと。民主主義を後退させないためにも忍耐強く選挙で選ばれた強いリーダーの出現を期待し、一日も早く国家のリストラクチャリングが実現されなければなりません。

課題先進国日本がこれらを解決することで、「ジャパン・モデル」を世界に示すことが可能となるはずです。その実現にパブリック・リレーションズ(PR)は欠くことができません。

年頭にあたりこの2012年が、どのような困難な条件下に置かれたとしても、希望を捨てず、未来に向かって進む力が皆さんに与えられますよう、心からお祈り申し上げます。

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