時事問題

2011.06.06

The Japan Model(ジャパン・モデル)〜課題解決先進国として世界と未来に向けたソリューション

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

東日本大震災から2カ月半が過ぎた6月1日、今回の原発事故調査のため来日していた国際原子力機関(IAEA)の調査団が報告書骨子をまとめ政府に提出しました。改善すべき点として自然災害の危険性の再検証や最新の情報に基づいた検証方法の見直しなどが挙げられています。

こうした改善点が指摘される中で、わが国の原子力発電所はいまや54基(現在稼動は18基)にも上り、日本の総エネルギーの約30%を賄っています。
特に近年、原発はCO2問題が急浮上してきたこともあり、世界中がその導入を考えはじめています。現在原発は世界に443基あり、(社)日本原子力産業協会(5月16日発表)によると建設中は75基、計画中は91基とまるで制御を失ったかのように増殖しつつあります。

福島原発事故はこうした中で起きました。最新の科学技術をもってしても自然の強大な脅威の前には制御不能なシステムでしかないことを思い知らされたのです。

だからこそ、福島原発事故の教訓は世界に正しく伝えなければなりません。また私たちは、世界の多くの国々や人々から受けた温かい支援や励まし、そして被災者の高い精神性や行動を称賛する世界の声に応えなければなりません。

今年最初の私のブログ(1月6日)では、「ジャパン・モデルを世界に提示する」というタイトルで次のような文章を寄せました。「(前略)そして日本人の謙虚さや優しさ、もてなしの心は世界でも高く評価されています。また世界唯一の被爆国であり、曲がりなりにも非核3原則を掲げどの国よりも平和を希求する国として、あるいは世界に先駆け高齢化社会を迎える国として、日本は国際社会の注目を浴びています。」

こうした日本独自の土壌や歴史が育んだ精神文化と他の追従を許さない優れたな科学技術との融合から生みだされる新たな戦略モデルこそ、私が提唱する「ジャパン・モデル」です。

日本は課題解決先進国

マグニチュード9.0と世界でも最大級の規模をもって東日本を突如襲った地震。そして日本観測史上最大の遡上高38.9m(岩手県宮古市の重茂半島)を記録した大津波に加え、チェルノブイリと同様に「レベル7」と評価された第二次災害ともいうべき福島原発事故。

こうした未曾有の大惨事が、なぜ日本で起きたのか?非核保有国として原子力の平和利用しか考えていない日本になぜ?そのことを考えたときに何か目に見えない力が日本と日本人を通して、われわれ人類の未来に警告を発しているのではないかとの思いが、改めて「ジャパン・モデルを世界に提示する」ことを私に天啓のように促したのです。

今この地球では環境問題やエネルギー問題、人口問題、核拡散問題などさまざまな問題が噴出し、これらの課題をどのように解決していくか人類の叡智が求められています。

人類や国家の進化・発展の過程ではさまざまな問題が発生します。以前は世界一の石油産出国で輸出国でもあったアメリカが、いまや60%以上を輸入に頼り、途上国や新興国(中国やインド)では高度成長の陰で大気汚染や水質汚染などの公害問題が深刻な社会問題化しています。
前東京大学総長の小宮山宏さんによると、先進国に限らず多くの国々が、結果として日本のたどる道をトレースしており、同氏はその意味において日本を、「課題先進国」と位置づけ、課題先進国にはその課題を解決することが求められるとしています。

世界が抱える課題に対して日本は、課題解決先進国としてそのソリューションを提供しうる多くの経験を重ねてきています。このことが、筆者が考えるジャパン・モデル構築のベースとなっています。

ジャパン・モデルを構築する事象

これまで日本が経済、政治、社会分野で経験した、あるいは今後経験するさまざまな出来事は、他の国々が好むと好まざるとにかかわらずこれから経験するであろう事象ともなります。

ジャパン・モデルは、下記のような事象をキーファクターとして構築され、国際社会での「経験の共有化」を目指すものです。国家規模のダメージを受けた際に、そのダメージから立ち直り、新しい国家づくりの指標となり得るものでありたいと願っています。

1)日本は世界唯一の原爆被爆国
広島、長崎の悲劇を世界が共有できているからこそ、戦後一度も核戦争は起きていない。

2)平和憲法
日本は220年に及ぶ鎖国の後に西欧文明を取りいれるために開国した。そして欧米の帝国主義モデルの後追いの結果、第二次大戦では近隣諸国を巻き込み不幸な結果をもたらした。この悲惨な体験があればこそ、日本は世界に類のない平和憲法をもつことができた。

3)大震災
世界でも数多くの震災が発生しているが、日本では関東大震災、阪神・淡路大震災、そして今回の東日本大震災と90年の間に3度もの大震災に見舞われている。日本では建築基準も強化してきたが、今回の東北日本大震災は地震、津波に原発事故が重なった最悪なもの。

4)原発・エネルギー問題
1970年代の2回にわたる石油ショックを経験し、エネルギーの大半を輸入に頼る日本は原子力に大きく舵を切り、いまや原子力は日本の総エネルギーの約30%を占めるまでとなった。今回の福島原発事故は、チェルノブイリと異なり、アクティブな原発4機が制御不能になりそれをどう復旧させるか、これまで世界が体験したことのないチャレンジを行っている。グリーン・エネルギーなどの代替エネルギー開発も含め、日本がこの不幸な出来事から立ち直るプロセスを世界に示すことは、生活・産業を支えるコア要素としてのエネルギー問題における課題解決となるものである。

5)高齢化問題
日本の人口は現在1億2千7百万人で現在全人口に対し65歳以上の人口比率は23%(世界平均は7.6%)を超え、2020年には29.2%(同9.3%)になると予測される。日本ほど急速な高齢化社会を迎えている国は世界にない。

6)環境問題と省エネ
いま世界の新興国が直面する公害問題では、日本が高度成長の過程にあった1960年代に表面化した問題をすでに克服している。されにエネルギーを輸入に頼ってきた日本は、厳しい省エネ化を進め、エネルギー効率は、ドイツの1.6倍、米国の2倍、中国の8.7倍と他国の追従を許さない(「エネルギー効率の国際比較」平成19年、経済産業省)。CO2問題にもいち早く取り組み、2020年までに1990年比で25%のCo2排出量削減を目標にしている。

7)日本のソフトパワー
この大震災を通して日本人の礼節や誠実さ、そして高い精神性が世界に紹介された。これらは島国日本が、時代を織りなすなかで培ってきた文化的資産でもある。グローバル化の中で、ややもすると地域で育まれた文化は破壊される危険性をもつが、日本は独自の文化を維持し今日に至っている。日本の優れたソフトパワーを世界に示していく。

8)明治維新
明治維新(19世紀後半)は、江戸幕府に対する倒幕運動から、明治政府による天皇親政体制の転換とそれに伴う一連の改革として知られている。 1968年の戊辰(ぼしん)戦争を経て戦死者も極めて少なく政治的・社会的な大変革を成し遂げ、近代国家への発展を遂げた経験は世界の歴史の中でも稀有なものである。

これらの事象に対する日本および日本人の取り組みやソリューションを「ジャパン・モデル」として構築しパブリック・リレーションズ(PR)により、広く世界に提示していくことは、PR専門家である私の責務でもあると考えています。

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