時事問題

2011.06.20

連携カフェ:「私設・東日本大震災復興会議」開催〜急がれる原発被災地域児童の疎開

皆さんこんにちは井之上喬です。

東日本大震災から3ヶ月以上経つものの被災地はがれき処理、放射能対策などさまざまな問題を抱えています。民主党政権には菅直人首相の退陣時期に関して岡田克也幹事長との軋轢もみられるなど、震災復興に政府一丸の形が見えないのが極めて残念です。

政府は4月に、東日本大震災の復興ビジョンを策定する「復興構想会議」(議長・五百旗頭真防衛大学校長)を立ち上げましたが、先月「連携カフェ」が「私設・東日本大震災復興会議」を開催、私はそれに参加しました。

この連携カフェの代表は、小見野成一さんで産経新聞グループ在職中に立ち上げた組織で、私設復興会議はメンバーの佐野裕幸さんが企画担当し実現したもの。

会場は丸の内のビルの地下のカフェ・バー。 土曜日の昼に約20名が集まり開催されました(写真)。参加者は連携カフェのメンバーに加えて、NPO法人代表、弁護士、ビジネス・PRのコンサルタント、インキュベーター、元官僚、政治家の政策秘書、主婦、などさまざま。

写真

民間の知恵を生かす

連携カフェは、2008年にスタートした経済産業省の「創造的産学連携体制整備事業」を受託した、タマティエルオー株式会社の事業の一環として同年に始まったもの。

3年目となる2011年の連携カフェの概念は、オープン・イノベーションを創出する、連携交流の”場“作りや文理融合型及び老若男女混合型でアナロジー活かした連携、そして、独自の和風グローバル味を醸し出すビジネス・モデルの創造など。

「私設・東日本大震災復興会議」当日は、出席者の中から多くの提案がなされました。その中で印象に残ったものをいくつか紹介します。
あるメンバーは、阪神・淡路大震災の被害者の方々に東北の被災地に行ってもらい、話を聞いてあげたり思いを分かち合ったりする場を作る。
ある弁護士さんは、震災関係の法律相談を無償で行う。個別の案件については、成果報酬のみで着手金は無とする。同じようにPR会社(井之上PR)のコンサルタントは、公的機関向け無償危機管理コンサルティング(クライシス・コミュニケーション)や情報リテラシーの為のマニュアルの無償提供など。

携帯電話のコンテンツを制作する会社の人は、携帯用節電アプリケーションの開発提供や復興に役立つアプリケーション等の企画・開発を積極的に行う。

連携カフェのメンバーの一人は、多摩地域で新しい技術を持つ中小企業を被災地と連携して地域の復興の役に立てる。いろいろな発明・アイデアを支援に役立てる。

その中で、ある経営研究所の所長は、農林・漁業の6次産業化で食品加工・流通販売にも業務を拡大させ活性化を実現させ、新しい雇用を創出し若い人たちの地域離れを食い止めることが大切としています。これにより東北の企業から上場企業を創出することもできます。
また、すでに東日本で具体的な行動を起こしているメンバーも少なからずいました。NPO的な事業活動をしている人は、長期的に取り組むものと、今すぐにでもできる事案を仕分けし活動しているようです。

たとえば農業や漁業などの案件を、学生を含めたさまざまなチーム編成で進めています。農業分野では、処理の困難な火山灰を利用して単価も高く、収穫期も多いにんにく(復興にんにく)の栽培を実施。漁業分野では、東北の漁民たちが太平洋で活躍できる枠組みを国際的なプロジェクトとして推進。

林業分野では、ゴミの処理を予算の無駄使いに終わらせず、バイオマスなどの技術を使い代替エネルギーを目的とし利用することで、被災地との連携で行うと同時に日本の林業の再生を試みる。

また学生の就労を現実的なものにするために、NPOによる職業のバーチャル・カンパニーの働きかけを行っています。メディア対策では、中央メディアの情報がバラバラで現地が期待するように視聴者に届いていない。その対策として地方のメディア、コミュニティ放送局にお金をかけずハイビジョンで利用するプロジェクトを専門企業の協力を得て行っている。

元政治家の政策秘書は既に、東北の農産物を各都道府県のサービス産業に買ってもらうシステムを構築中。

産地直送に関わっている関係者からも農業関係の支援を提案。ネットでの収穫物販売促進をはじめとし、被災地での農業の打撃などから被災農家へ新農地の確保により代替農地を提案中。現在埼玉の奥武蔵など、多数の候補地を選び話を進めているようです。

企業のロジスティックスの専門家は、被災者は先の見えない事態に今一番ストレスを感じているはず。さまざまな手法はあるがまずそこから考えていく必要があるとし、失業率の高い震災地域での労働問題を解決するために市場を広げることが大切で、日本国内で事業展開している企業を、サプライチェーンを考慮しながら支援する必要があるとしています。

最後に、あるプロジェクト・マネジメントのコンサルタントは、震災復興への具体的なアクションの必要性を訴えていました。日本ではプロジェクトの効率化に対する関心が弱いとし、プロジェクト・マネジメントはリーダーシップやコミュニケーションの活性化に役立つとし、具体的に7月9日(土)10(日)に、「震災復興の創造的且つ迅速な実行に役立つプロジェクト・マネジメント(PM)入門セミナー」が実施されることになりました。

原発被災地域の子供に国内留学を

私の提案は、被災地とりわけ原発被災地域の小学生児童(場合により中学生も)の国内留学でした。
戦時中の東京の学童疎開ではないですが、この事案は受け入れの自治体やNPOと調整し思い切って実行すべきことであると考えています。
最近の放射線測定数値は地域差や測定場所で異なり、住民の間に児童に対する放射能影響への不安が募るばかりです。政府は早急に対策を講じ、児童の県外移動を早急に検討する必要があります。

チェルノブイリ事故で多くの子供が甲状腺ガンにかかった事実を考えると、不透明な状況の中では早い時期に地域の子供たちを安全な地域に移動させるべきではないでしょうか?少なくとも今からその準備に取り掛かる必要があると考えます。危機管理下では、日ごろの準備が重要だからです。
幸い少子化の影響で、教室スペースに余裕がある学校の協力を得ることも可能でしょうし、廃校を利用して使うなど、受け入れ先の自治体と相談をすることで具体的な方法が見つかるはずです。

総務省統計局「日本の統計2007」では、福島県内の小学校は558校。そこに12万7千人の児童が学んでいます、この中で対象となる地域の児童の県外への移送を具体的に考えるべきです。

県外への移動には受け入れる自治体の協力と体勢作りが必要となりますが、今後の原発の回復状態にもよるものの、受け入れ先は日本海側の山形県やその隣の秋田県が現実的な感じがします。

いま全国的に少子化により学校の廃校が進んでいるようですが、山形県には20を超える市と郡に200近い廃校があり、その隣の秋田県には18の市と郡で400近い廃校があります。これらの廃校を有効活用し福島県内の対象地域児童を期間限定で集団疎開させたらどうでしょうか?
かって第二次大戦さなかの1944年6月、日本政府は「学童疎開促進要項」を閣議決定し、疎開区域の3年生以上の国民学校初等科の子どもたちを疎開させています。

疎開区域とは、当時の東京都の区部、横浜市、川崎市、名古屋市、大阪市、尼崎市、神戸市、そして北九州の門司、小倉、八幡など10数都市を指しており、大規模で展開していました。

今回の「疎開」の詳細は行政が決めることですが、子供を放射線被害から守るだけでなく、親元を離れ、さまざまな人との交わりで子供の自立心を強めることにも繋がるはずです。

大震災の後遺症は10年とも20年とも言われていますが、連携カフェ代表の小見野さんは、音楽活動を通して音楽の強さを実感してきた立場で、みんなで歌えるキャラバンの作成などをバンド仲間で呼び掛けながら支援に繋げていくことも大切と語っています。
この「私設・東日本大震災復興会議」の最後に、連携カフェのメンバーの一人の山名康裕(元「月刊エネルギー」編集長)さんが話しました。やらなければならないことは山ほどあるが、今までの日本に足りなかったのはプロジェクト・マネジメントの考え方。プロジェクト・マネジメントを早くそれぞれのものにすることが大切だと説いていました。

目標達成のために最短距離で行く手法であるパブリック・リレーションズ(PR)は、さまざまなパブリック(ターゲット)との関係構築活動です。それぞれのプロジェクトをマネージしていく上で欠かせない技法でもあります。被災地の復興支援に生かされることを願っています。
(写真は事務局からの提供)

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