時事問題

2011.06.27

調査から聞こえる「被災者の声」 〜震災経験で若者の意識に変化が

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

6月24日の朝日新聞一面トップは、東日本大地震から3カ月経過したのを機に朝日新聞社と福島大学とが共同で行った東電福島第一原発事故よる避難住民への聞き取り調査結果を載せています。

「震災前に暮らした土地に戻りたい、でも戻れない…。多くの人たちがこんな思いを抱いている実態が浮き彫りになった。避難を強いる原因となった原発への視線も、極めて厳しい。」と報道されています。

「震災前に住んでいた地域に戻りたいですか」の質問に「戻りたい」「できれば戻りたい」と回答した人は79%。「戻りたくない」「あまり戻りたくない」が12%でした。

「原発利用の賛否」については避難住民の26%が「賛成」で「反対」が70%。
また、「これからの生活で不安に思っていること」については、「放射能の影響」が一番多く、次いで「収入」、「住まいのこと」、「自分や家族の病気」、そして「子どもの就学」が上位を占めました。

6月になって東日本大震災や福島原発事故に関する調査結果を報じる新聞紙面が目につきました。
今回のブログでは、いくつかの調査データを基に大震災の被災者や福島原発事故による避難住民の方々、そして海外からの声を拾ってみようと思います。

日本政府を「信頼できる」がわずか14%

6月11、12両日に実施された朝日新聞の世論調査では、原子力発電の利用に「賛成」37%、「反対」42%という結果でした。男女別で見ると原発反対は、男性が34%、女性が50%で女性の反対意見が強く表れています。

前述の朝日新聞社と福島大学とで行った、避難住民を対象とした共同調査と比べ形式や対象が異なり単純比較できないものの、「原発利用の賛否」について賛成が11%マイナス、反対が28%プラスとその差が際立っています。事故に直接影響を被っている当事者と一般世論との乖離を感じます。
また、東海地震の想定震源域に位置し、菅首相の要請で全炉の運転を停止した中部電力の浜岡原発に対する静岡県民への世論調査では、浜岡原発の運転を再開せずにこのまま廃止することに「賛成」が50%を占め、「反対」の31%を上回りました(6/14朝日新聞朝刊)。

次は米国ボストンコンサルティンググループがインターネットを通じて米国、中国、香港、台湾、韓国の海外約2500人を対象に行った調査です。
訪日を控えている理由を複数回答で聞いたところ86%が「放射線物質の影響が心配」と答え、49%が「多くの人々が苦しんでいる中で日本に旅行するのは不謹慎」と回答。

また、訪日の安全性に関する情報源の評価を聞いたところ、日本政府を「信頼できる」と答えたのはわずか14%という情けない結果に終わっています(6/14日本経済新聞朝刊)。

折しも米国の人気歌手レディー・ガガさんが来日し、23日都内で記者会見。そのなかで震災後に外国からの観光客が激減していることに触れ「寄付を集め続けるだけでなく、日本は今や安全だと世界に知らせることも重要」(6/24朝日新聞朝刊)といったコメントを残しています。

信頼の薄いといわれる日本政府は、いまこそ世界に向けてパブリック・リレーションズ(PR)の視点から安全性を訴求する国家的キャンペーン戦略を構築し、その実行を通して国民や国際社会の信頼を取り戻していくべきではないでしょうか。

新たな集団意識「4つのS」とは?

震災後に東京経済大学(東京都国分寺市)が実施した新入生調査結果が6月10日の日経産業新聞「市場トレンド」のコラム欄で紹介されています。
地震によって「人々の助け合いの大切さをより強く感じた」=92.2%、「生命の大切さをあらためて感じた」=89.0%「日本のあり方が変わると思う」=76.9%、「自分の生き方や価値観が変わると思う」=70.1%などの回答が見られました(複数回答)。

今後の行動については「もっとエネルギーの節約をしたい」=86.5%、「しっかりと学んで社会のために役立ちたい」=83.4%といった社会性や公共性を意識した回答も得られました。

この「市場トレンド」筆者の関沢英彦さん(博報堂生活総合研究所エグゼクティブフェロー・東京経済大学教授)は、「震災と原子力事故を経験した若者たちは「3.11世代」といった新しい集団意識を生み出していく。それは4つのSで表せる。」と述べています。

4つのSとは「シリアス(本気・まじめ)」、「セルフ(自分・自己)」、「シェア(分かち合い・助け合い)」、そして「セーブ(節約・省エネ)」のこと。

関沢さんは「消費の現場にも、こうした『4S意識』が影響を与えるのは間違いない。(中略)将来への『希望の設計』が感じられる商品が支持されるのである。」と結んでいます。

私たちパブリック・リレーションズ(PR)の実務家が、大学生や若年層をターゲットにしたPR戦略構築や実行プログラム、メッセージの作成の際に、またコンシューマ・リレーションズなどにおいて、この「4S意識」を考慮するのも良いかもしれません。

今回の大地震では、政府の対応をはじめマスメディアの報道のあり方、そして連絡・通信手段、水道・電気・ガスといったライフラインや原発問題、国際協力の体制づくりといった面で、PRの専門家が考えるべき課題や多くの教訓を残しています。

また、日本の原発のあり方を、改めて考えさせる出来事でした。このテーマについては別な機会にこのブログでお話したいと思います。

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