時事問題

2008.11.08

オバマの新しいアメリカ〜新世界秩序へ向けて

米国の大統領選挙で民主党のバラク・オバマ上院議員が共和党のジョン・マケイン候補を大勝で打ち破り、来年1月米国大統領に就任することが決定しました。

オバマ氏については以前このブログでも紹介していますが、私が最初に彼を知ったのは昨年2月、ワシントンDC滞在中に偶然ホテルのTVで放映されていた彼の大統領選出馬表明でした。2007年2月10日、地元イリノイ州のスプリングフィールドでの支持者集会で米大統領選への出馬宣言を行ったときでした。オバマ氏のメッセージは、その2日前にワシントンの大統領朝食会でブッシュ大統領のスピーチを聞いた私に、計り知れない衝撃を与えました。

主要国首脳のメッセージにみる違い

故ケネディ元米大統領(JFK)の再来ともいわれるオバマ氏は、就任すれば建国以来初の黒人大統領。ハワイで生まれ、インドネシアでの生活体験を持ち、米国や世界を人種、宗教、文化など多様な視点で見ることのできる逸材ともいえます。国際協調を訴え、これまで敵対してきた諸国との対話姿勢も明確に打ち出しています。11月4日深夜(現地時間)、12万人を超える支持者の前で行ったシカゴでの歴史的な勝利演説の内容は米国民と世界を感動に包みこみました

各国首脳もこの米国新大統領の誕生に熱いメッセージを送っています。11月6日付朝日新聞(朝刊)には以下のようなメッセージが紹介されています。まず欧州連合(EU)議長国・仏 サルコジ大統領は、「あなたの当選は仏、欧州、全世界に大きな希望を呼び起こす。米国と一緒に世界の平和と繁栄を守るための新たな活力が得られる」と表明し、英国ブラウン首相は、「オバマ氏と私は多くの価値観を共有している。緊密に連携して働けることを期待している」。

一方、中国の胡錦濤国家主席は、「中国政府と私は一貫して中米関係をたいへん重視している。両国の対話と交流をさらに強めたい」とそれぞれ熱いメッセージを送っています。

そして日本の麻生首相は、「どなたが大統領になられようとも、日本にとりまして日米というものが基軸というのは終始一貫、変っていない。民主党政権の時であろうと、共和党政権の時であろうと、日本政府としてきちんとした対応を米国とやってこれた。そういった努力を引き続きオバマという人とやっていかねばならぬ。…」(衆院財務金融委員会での答弁)。

麻生さんの同様なコメントはその後TVでも繰り返し流されましたが、皆さんは何を感じましたか?翌日11月7日付の同紙の社説では、麻生首相の感想がのんきすぎると批評し、「『ブッシュ後』の米国が、そして世界が大きく変わろうとしているという鋭敏な時代認識が感じられない。」と論じています。無味乾燥なコメントの中には、世界を良い方向に向かわせようとする情熱が感じられませんでした。麻生さんは米国はじめ、世界が極めて不安定の中にある最中の米国大統領誕生の意味をどの程度哲学的に捉えていたのでしょうか?少なくとも有能なスピーチライターは用意されていたのでしょうか。この問題は、個人の資質に帰すことは当然のこととして、パブリック・リレーションズ(PR)力の問題でもあるといえます。

オバマ勝利を日米関係刷新の機会に

ハワイで生まれ、インドネシアでの生活体験など多様な人種、文化のもとで育ったオバマ次期大統領はある意味で米国にとどまらず特異な存在感を持った政治家。イラク戦争、アフガン紛争、イラン問題、北朝鮮問題など解決すべき国際問題が山積する中で、武力と経済力にだけ頼らず、対話を重視し世界のリーダーと関係構築できるオバマ氏の資質に世界の期待は高まっています。

今回の選挙結果は日本にとっても、戦後長きにわたって続いたこれまでの日米関係を再構築する絶好のチャンスといえます。

こうした中、オバマ氏を取り巻くブレーンやジャパノロジストへの日本からのラブコールは高まっています。しかし政権交代のたびに、単にこれらジャパノロジストとのパイプを太くする目的だけで関係性を深めることは彼らの負担を大きくするだけです。

このところ、TV番組で様々な米国のジャパノロジストによる日米関係の今後の在り方についてのコメントが紹介されていますが、全体的に米国側が日本のどこ(誰)とどのように関わればいいのか判らず戸惑っているような印象を受けました。特に東アジアにおける中国の台頭が目覚ましい中、日本はこれまでのように、米国とのチャンネルを築くためのみに、ジャパノロジストに頼るのではなく、彼らを支援することが重要となります。

日本のよき理解者としての彼らを強力にバックアップすることで、彼らの発言力が米国内で増してくるはずです。そのためにはこれまでのアプローチだけではなく、日本が政治改革、金融改革、地方分権、教育改革、環境問題・脱石油エネルギーなど、今後の日本の新しい取り組みを提示し、これらジャパノロジストと情報共有することが重要になってくるものと思われます。

アジアにおけるパワーバランスが変化する中にあっても、日本が新の自立国家として世界に貢献できることは山ほどあるはずです。新しい日本を指し示すことにより、ジャパノロジストの立場が米国で強化され、結果として日本の立場が強まることになるはずです。

内外からの日本の政治家への期待は、今まで以上に高まっています。オバマ氏の勝利は、これまで幾度となく叫ばれてきた日本のリーダーシップの実現に、パブリック・リレーションズ力が不可欠なものであることを私たちに教えています。

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