時事問題

2008.09.28

麻生政権誕生〜政治は変わるのか

こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

5名が名乗りをあげ、繰り広げられた自民党総裁選、結果は下馬評どおり麻生さんが圧勝。9月1日の福田首相の突然の退陣表明から3週間後の22日、自民党の新総裁が誕生しました。2日後の24日には麻生政権がスタート。新内閣はさながら選挙内閣の様相を呈し麻生さんは就任早々、衆議院解散を意識した民主党への対決姿勢を鮮明にしました。

諸外国からみれば、日本国を経営するトップがわずか2年で3人目に入るというのはどう考えても異常というしかありません。総裁選挙中、5名の候補者が名乗りを上げるものの、いずれの候補者も、政権党が引き起こした政治の混乱が国民にもたらした不都合を詫びることはありませんでした。パブリック・リレーションズ(PR)の視点でみれば、途上国でも見られないこのような状況が、なぜ日本で起きているのか、日本とはどういう国なのか、将来どこに行こうとしているのか。国内はともかく世界は日本のこの状態を半ばあきれ顔でみています。

自民党の新TVコマーシャル

自民党の新しい選挙用TVコマーシャルが9月25日に発表されたのを受け、同日、私は日本テレビのニュース番組「リアルタイム」に出演し、このコマーシャルへのコメントを求められました。質問は、このCMをみてどう感じるかといったもの。スタジオで見たCMについて、小泉首相のキャンペーンCMと同じコンセプトで作られていることを指摘しました。

つまり、新しいCMは「選挙の顔」として麻生という人間を前面に出したもの。小泉さんと同じように、強いリーダーを表現するために個性的な麻生さんを前面に出そうとしたことがうかがえます。違いは、小泉さんが、(古い)日本を打ち壊す、と構造改革を掲げ新しい日本の枠組みを語ったのに対して、麻生さんは世論の声を反映させようとしたのか、生活密着メッセージ。

一方、民主党のCMは小沢さんが前面に出るも地方を歩き回り、様々な人たちの声を聞いている姿を画面に出しています。個人の人気で麻生さんに後れをとる民主党の戦略でしょうか、小沢さんを通して民主党全体をイメージさせる内容となっており、日頃、小沢さんが「政治は、国民を幸せにすること」と主張していることが表現されています。

興味深いことに、CMを見ている限り小沢さんも麻生さんも訴えていることはほぼ同じ。「生活者の目線」では、自民党のCMが民主党のCMに似かよってきた印象を与えています。

在任1年8カ月では国家経営は無理

1982年11月、中曽根首相が誕生して2008年9月の福田政権終焉までの25年10か月の間、実に14名の首相が誕生・交替しています。1人の首相の在任が1.8年、2年にも満たない状態で、国家経営がどうしてできるのでしょうか?民間企業ならとっくに消滅。官僚が力を持つのは当然です。このような状態を許した要因は何なのかを制度を含めて総合的に点検しなければいけません。

首相の在任期間は、現在長期にわたって政権を運営している自民党の党則に強い影響を受けています。自民党では総理大臣には党の総裁が就任。自民党総裁任期は3年、2期と定められていますが、総裁が首相をつとめる内閣への不信任が高まれば、衆議院解散(参議院に解散はない)により、総選挙で信を問い、新しい首相(継続も含め)による内閣が発足します。無事にいった場合、最高6年まで首相を務めることができますが、現実は、まさに日替り弁当状態です。

新しいシステムは、選挙制度を見直し、少なくとも首相の任期を義務づけ、最低4年できれば8年程度に延長する必要があります(ちなみに現在の米国は4年2期)。民間企業でのリストラでも最低数年かかることを考えれば国家経営にはもっと時間が必要なはずです。明確なマニフェストに基づいた政策プログラムにより、プロフェショナルな政治・行政が求められているいま、地方分権、道州制なども含め、これらを全うできるシステムづくりが喫緊の問題として浮上しています。

麻生政権スタート直後、中山国土交通相が問題発言で辞任しました。このような例は、他の先進国でほとんど見ることはありません。繰り返される大臣辞任、見識が問われています。

国家経営には、内政、外交、国民生活・社会福祉、財政、農業からIT、そして教育など多くの事象に対する複合的な視点を持つことが求められます。さまざまな視点と人間力が要求されるパブリック・リレーションズは、これらの問題解決の強力な武器となるはずです。

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