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2022.10.11
新しい時代を切り拓くために欠かせない若者の活躍
~未来を拓き、創造するためにパブリック・リレーショ ンズ(PR)の活用を
皆さんこんにちは井之上喬です。
いよいよ10月に入りました。運動するには良い季節ですね。皆さんも、テレワークで鈍りがちな体を動かしてみてはいかがでしょうか。
10月10日の国民の休日「スポーツの日」は、3連休の3日目でした。全国的に天気が崩れたようですが、皆さんは
どのように過ごされましたか?私は、10月8日から京都大学経営管理大学院の今年度の最初の講義が始まったことに加え、9日には京大を会場に開かれたグローバルビジネス学会「2022年度研究発表会」出席のため、京都に滞在しました。
スポーツ界での若手の目覚ましい活躍
スポーツの日の由来は皆さんご存じでしょう。1964年(昭和39年)に東京オリンピックの開会式が行われた10月10日を、「体育の日」として国民の祝日としたのが始まりです。
定められたのは1966年で、その後30年あまりはこの日が休みでしたが、2000年から、ハッピーマンデー制度が適用され、体育の日は10月の第2月曜日となりました。その後、体育よりも広い意味を持つスポーツへの変更が検討され、2020年(令和2年)1月1日付で、体育の日は史上初めてカタカナを使った祝日、「スポーツの日」へと改められることになりました。趣旨も「スポーツを楽しみ、他者を尊重する精神を培うとともに、健康で活力ある社会の実現を願う」となっています。
今年のスポーツ界も、さまざまな話題がありました。その中でも注目は、日米でのプロ野球、特に米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手と、東京ヤクルトスワローズ・村上宗隆選手の大活躍でしょう。
細かい記録はスポーツメディアにゆだねるとして、まず「二刀流」大谷選手を見てみましょう。今シーズンの成績は投手としては28試合に登板して15勝9敗、防御率2.33。打者では打率2割7分3厘、34本塁打、95打点をマークし、投打で「規定数」をクリアしました。
現在の2リーグ制がスタートした1901年以降で、二刀流で規定投球回数と規定打席数をクリアしたのは初めて。メジャーリーグの歴史を塗り替えたといってもよい、との高い評価を得ているのはうれしいことですね。
一方の村上選手は、プロ野球史上初の5打席連続本塁打に加え、日本選手としてあの王貞治さんの記録を上回る年間最多の56本塁打を達成し、さらに史上最年少の22歳で三冠王に輝きました。東京ヤクルトスワローズのセ・リーグ連覇に大きく貢献したことはいうまでもありません。
大谷、村上選手とも28歳、22歳とまだ若く、今後も一層の進化と世界舞台での活躍が期待されます。そして何よりも、連日暗いニュースが流れる中で、日本人に希望と活力を与えてくれました。
従来の考えにとらわれない発想が不可欠
スポーツからは全く離れますが、「世界での日本の競争力がまた低下した」とする残念なニュースに接しました。
スイスのビジネススクールであるIMD(国際経営開発研究所:International Institute for Management Development)が9月28日に発表した「2022年の世界デジタル競争力ランキング」です。63の国・地域のうち、日本の順位は前年から1つ下がり29位だったとのことで、2017年の調査開始以来、過去最低の結果になりました。
世界デジタル競争力ランキングは毎年、各国の統計データや経営者・管理職への聞き取り調査を通じて公表されます。全体の順位は「知識」「技術」「将来の準備」という3つの因子のそれぞれの順位を総合して決められます。
この調査でも、人材不足やビジネスのスピード感の欠如など多くの課題が日本に対して指摘され、厳しい結果になっています。
ランキングトップはデンマーク、2位が米国、3位スウェーデン、4位シンガポール、5位スイスが上位の顔ぶれでした。アジア地域に限っても、日本は韓国の8位、台湾の11位そして中国の17位に大きく後れを取っています。
これについてIMD北東アジア代表の高津尚志氏は、日本経済新聞電子版で「ただただ低落しており、変革が見られない」と、厳しい評価を下していました。
見回せば、低迷の例を見つけるのは難くありません。2021年9月に鳴り物入りで発足したデジタル庁は、具体的な取り組みによる推進力に欠けています。毎日のようにメディアを賑わしている「デジタルトランスフォーメーション(DX)」も、その威力を発揮できていません。
DXの目標は、単なるデジタルによる業務効率化ではありません。本来目指すべきは、最先端のデジタル技術を駆使してさまざまな社会課題の解決を実現する、革新的で新しいビジネスモデルを創出し、日本を活性化する、というものです。ですが、現状はこれに遠く及ばず、国際競争力はますます低下するという、残念な状況に陥っています。
日本がこれを打開するためには、新技術が毎日のように生み出されるIoT分野での、思い切った人材登用が必要でしょうか。つまり、知識と技能を有する若者を、大胆に登用することが重要と考えています。大企業、中小企業、そしてベンチャー企業から個人まで、様々な分野で優れた「若手」の人材を積極的に登用し、新しいパートナーシップや組み合わせでの取り組みを加速するのです。
若い人たちと日ごろ接していて改めて感じるのは、彼らの発想の柔軟さ、新しいものへの好奇心、そして過去への囚われのなさです。現状をまず正しく見て、そこから何ができるか考えていく姿勢には、見習うべきものがあります。
逆に30年以上前の繁栄を知る世代は、過去に成功したやり方を修正すれば再びあの時のような光を取り戻せるのではと、ともすれば考えがちではないでしょうか。しかし、それが、私が呼びかけ現在勉強会で追究している「失われた30年」の一因になっていると思うのです。
この厳しい状況を打開し、新しい仕組みを創造するためにも、さまざまなステークホルダーとの良好な関係構築を通して目的を達成する、パブリック・リレーションズ(PR)の手法が有効と考えています。自社の事業、国の施策は、製品やサービス、制度設計・実施を通じたパブリックとの関係構築活動ととらえることができます。より良い社会作り、という目標に到達するために、ステークホルダー、特に将来を担う若者の意見を聞き、話し合い(双方向コミュニケーション)を重ね、柔軟に自己修正を重ねるのです。
多くの社会課題の解決に、日本の英知を集めて取り組む。パブリック・リレーションズ(PR)の手法は、その有効な指針として大きく貢献できる、と強く感じています。