トレンド

2022.09.23

「2040年問題」とは?テクノロジーの活用が不可欠に
~だれもがステークホルダー…解決の糸口はパブリック・リレーションズ(PR)

皆さんこんにちは井之上喬です。

シルバーウィークの3連休は、大型台風14号の影響で西日本を中心にさぞ大変であったと思います。被災された方々には、心からお見舞い申し上げます。

先週、私は九州大学でビジネススクールの講義を行い、最終講義の後は、鹿児島、宮崎高千穂、黒川温泉、熊本阿蘇を車で回りました。しかしそれも台風の九州上陸のため急きょ予定を切り上げ、新幹線に飛び乗って東京へ戻りました。

ニュースでは、「これまでにない」といった表現が、予報でも、実況でも何度も聞かれました。地球温暖化による気候変動の影響が、少なからず表れているのだと想像しますが、今回のような大型台風の来襲が常態化してしまわないか、懸念されるところです。

この機会に、お住まいの地域のハザードマップを点検し、個人や家庭での防災対策を心がけなければなりませんね。

高齢者の就業が増加

9月19日は「敬老の日」でした。

総務省はこの日に合わせ、日本の65歳以上の高齢者人口についての推計を発表しました。それによると、高齢者は前年より6万人増え過去最多の3627万人に、総人口に占める高齢化率は、29.1%になりました。これは世界の200の国・地域の中で最も高く、さらに、75歳以上の割合も初めて15%を突破しました。

同様に、2021年時点で仕事に就いていた高齢者は909万人と、18年連続で増加して過去最多を更新し、結果として高齢者の就業率も25.1%に増えました。特に65歳から69歳の就業率は、初めて50%を超えたとのことです。

「高齢者」とは呼ばれますが、豊かな経験、知見を持った、まだまだ元気な人たちが増えています。それぞれの立場で社会参加、貢献をされていることに、改めて感謝したいと思います。

その一方で、さまざまな課題が表面化しているのも事実です。

2040年に医療・介護就業者100万人不足の現実

厚生労働省が9月16日に発表した令和4年厚生労働白書によると、高齢者数がほぼピークになると予想されるのは2040年。その時、医療や介護など福祉関連の人材は推計で約100万人不足し、人材確保が「社会保障の最重要課題」だと強調しています。

具体的には、必要とされる医療・福祉の人材が1070万人に対し、実際に確保できるのは974万人とのことです。

今回は白書全体のテーマに「社会保障を支える人材の確保」を掲げ、医療・介護・保育などの人材確保の現状や必要な施策をまとめています。報道によると、このような人材確保に焦点を当てるのは珍しいそうです。それだけ、少子高齢化にともなう人手不足が、医療・介護分野でも深刻化しているということですね。

白書で具体的な対策として指摘するのは、女性や高齢者の一層の労働参加が不可欠であること、そして、医師と看護師などで仕事をより効率的に行うために、業務の移管や共有、つまり「タスクシフト」「タスクシェア」を早急に進めることです。

タスクシフトが可能な業務内容には、検査手順や入院の説明、服薬指導、一部の採血、診断書の代行入力などを挙げています。

また、オンライン診療による遠隔医療の推進や、介護分野ではベッドメーキングなどを担う介護助手の導入、ロボットやセンサーの活用事例なども紹介しています。

医療・介護分野では、団塊の世代が全員75歳以上になる「2025年問題」が以前から指摘されていましたが、今回の「2040年問題」は、その先にさらに切実な社会課題が待ち受けていることを私たちに投げかけています。

その解決は難しいかもしれません。それでも、前述したように元気な高齢者の就労機会を社会全体として整えていくことなど、出来ることから迅速な対応を望みたいものです。

私が大きな解決策として考えるのは、厚生労働白書でも触れていますが、医療・介護分野でも「テクノロジー」を積極的に活用することです。

産業界では今、IT技術など多様なテクノロジー(技術)の進化を基盤に、アナログからデジタルへの転換を進めています。これは単に業務の効率化にとどまりません。さまざまな社会課題の解決に結びつくような新しいビジネス、産業を創り出す「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の取り組みが、一気に進んでいるのです。医療・介護の分野でも、この流れを加速させることが必要でしょう。

医療や介護の分野では、人の手、温かみが欠かせないといった感情的な問題、個人のプライバシーの問題、そしてビッグデータの共有などで、さまざまな障壁が存在します。その一方で、問題を解決する積極的な変革には触れにくい、そんな伝統、タブーが残っているとしたら、社会全体にとっても、大変もったいないことです。

2025年問題、そして2040年問題が提起されるなか、状況改善に向けて定年制の見直しや新たな業界の合意形成、ルールづくりが急務となっています。そこで必要となるのが、さまざまなステークホルダー(利害関係者)との良好な関係構築活動を通して、設定された目的・目標を達成するパブリック・リレーションズ(PR)です。

高齢化社会は、誰もがステークホルダーとなります。現在の高齢者、医療福祉関係者はもちろんですが、若い人も直接、間接的に高齢者を支えており、将来は自身が高齢者になります。自分が様々な立場になることを想像しながら、それぞれ「倫理観」を持ち、異なる立場の人たちと意見を交換して互いを理解する「双方向性コミュニケーション」を行いながら、柔軟に「自己修正」機能を働かせる。つまり、マルチステークホルダー・リレーションシップマネージメントであるパブリック・リレーションズ(PR)の考えと実践が、この困難な社会課題の解決にも大きく貢献できると信じています。まずは自分の立場を出発点にして、よりよい社会の実現に向け、取り組んでみませんか?

書籍

注目のキーワード
                 
カテゴリ
最新記事
アーカイブ
Links

ページ上部へ