パブリック・リレーションズ

2011.01.06

ジャパン・モデルを世界に提示する 〜いまこそパブリック・リレーションズ

井之上 喬です。
新年あけましておめでとうございます。

昨年も政治の混乱と社会的混迷の一年でした。中国やインド、ブラジルなど新興国の目覚ましい経済発展と比べ日本や米国のプレゼンスが低下していることも明らかになってきました。

政治では、米国中間選挙で民主党の後退が明らかになり、日本でも民主党の政権運営にさまざまな支障が露呈するなど、世界的な混乱期に必要とされる政治力が圧倒的に弱体化していることをみせつけられた一年でもありました。

成長戦略を具体的に考え発信する

暮れに、あるセミナーでコロンビア大学のジェラルド・カーチス教授(政策研究大学院大学客員教授)が、「日本人は悲観的すぎる、日本に長くいると自分の考え方も悲観的になるからそろそろ米国に帰る」と話していました。
カーチス教授は日本と米国を行ったり来たりされているようですが、日本にいると、日本人があまりにも日本の現状について悲観的に考えすぎると感じているようです。

日本は、「日本人が考えているほどひどい国ではない」といくつかの数字で説明してくれました。その中で、米国の若者の間では日本への関心が高まり、日本観が変化しているといいます。彼が教えるコロンビア大学の日本関連の授業の生徒数がこの10年で、顕著に増えているとのこと。それも以前は、日本文化や日本学を学問として学び研究しようとする傾向にあったものが、いまは日本の漫画やアニメなど現代の日本を知ろうとする欲求が強まっているようです。

いまの日本は、政治を見ても権力闘争の繰り返し、ネガティブな話題があまりにも多く、民間企業であればとっくに倒産。国民や企業からの税金で成り立つ国家経営では、国の産業活性化による財政の立て直ししか存続の道はありません。消費税などでいくら税金を上げても購買力がなければ破綻するからです。

企業がお金を稼ぎやすい環境をつくり、国家が成長戦略としてそれを支援する構造と具体的実行への環境整備が喫緊の課題と考えます。

これまでこのブログにも紹介してきたように、日本には他の追従を許さない環境技術をはじめ精密加工技術、製造・建築技術、システム運用管理などの優れた科学技術があります。それらの技術を統合し国内はもとより世界で徹底的に訴えマーケティングしていくことの必要性を感じます。

その中で現在世界の重要な関心ごととは、地球環境問題です。如何にCO2問題を解決し、人類にとって住みやすい地球にするかが最大のテーマといえます。ここには日本の高度な環境技術があります。これらの中でもとりわけ、エネルギー問題は重要。

エネルギーのほとんどを外国からの供給に頼っている日本は、脱石油を目指した次世代のエネルギー開発では風力、太陽光、水素エネルギー、原子力、バイオマスなど多様な分野においてイノベーティブで秀逸な技術を数多く有しています。
私はこれらの開発に、政官財の3つの機能が統合し、これにメディアが後押しをする体制が必要と考えています。急迫する中国、韓国、インドに対抗するには、明確な目標設定をし、その目標に向かって突き進む必要があるからです。

戦後長きにわたって日本には政官財で構成された「鉄のトライアングル(三角形)」がありました。自民党時代、特に80年代、日本を世界の頂点に引き上げたこの鉄のトライアングルは、政権末期に入り癒着の構造が露呈し、信用を失ってしまいました。しかし、経済効率だけを考えた場合、このトライアングルが機能していたことは疑いの余地もありません。この日本特有の構造を90年代の米国や韓国、中国、シンガポールなどの国々が参考にして、経済発展の青図を描いてきたことも否定できません。

日本の治安の良さ、都市や田園の清潔な景観、澄んだ空気とおいしい水、四季の移ろいの美しさ、そして日本人の謙虚さや優しさ、もてなしの心は世界でも高く評価されています。また世界唯一の被爆国であり、曲がりなりにも非核3原則を掲げどの国よりも平和を希求する国として、あるいは世界に先駆け高齢化社会を迎える国として、日本は国際社会の注目を浴びています。

こうした日本独自の土壌や歴史が育んだ精神文化と前述した他の追従を許さない優れたな科学技術(テクノロジー)との融合から生みだされる新たな戦略モデルこそ、私が提唱する『ジャパン・モデル』です。このモデルには、人類にとって前人未到ともいうべき領域へと導く力が潜んでおり、2011年はこの『ジャパン・モデル』を世界に提示していきたいと考えています。

パブリック・リレーションズを生かす

混乱する世界の中で、パブリック・リレーションズ(PR)でできることは多くあります。その重要な役割の一つは、個人や組織体が目標達成のための行動を起こす際に外部環境を肯定的なものにすることです。

否定的な環境の中で、組織がどんなに業務遂行を行っても効果は期待できません。また、外部環境が悪い方向に変化したとき元の良い状態に戻すにはどのように対応すべきなのか、考え実行されなければなりません。
そのために、さまざまな関係先との良好な関係構築が求められます。この構築は普段から準備されていることが必要です。

またPRでは、潮目が読めなければなりません。潮目とは、「状況が変化する境目」を指します、何か事を始めるときにそれをどのタイミングで行うべきか、全体を俯瞰し、行動を起こすチャンスをはかることです。そのためには、時が来たらいつでも行動に起こせるよう準備して待たなければなりません。

このことは企業の危機管理や昨年起きた尖閣問題、北方領土問題などの対応にも当てはまります。
その時に、ベースとなるのは「倫理観」です。組織が独りよがりになり、その後社会の批判にさらされるような行動は避けなければならないからです。これからの時代は組織内に倫理軸を明確に持つことが求められているといえます。

またグローバル時代にあっては、スピードが欠かせません。中国や韓国の組織体を見ていると、意思決定におけるスピードの速さには目を見張ります。しかし日本では、ミスを恐れるあまりトップの決断が遅れがちです。

日本人の性格に由来していることかもしれませんが、ミスを恐れることで、大きなビジネスチャンスを失うリスクはこれからの時代には増大すると考える方がいいでしょう。日本がグローバル競争に打ち勝つためには、「双方向コミュニケーション」を通して双方が互いの考えを把握し、組織内の意思決定プロセスを迅速にするシステムをつくる必要があります。

その中で鍵となるのは「自己修正能力」。スピードが求められる社会では、意思決定に誤りのあることを前提に、必要な時に修正を行うことで、目標達成を最適化させることが可能となるからです。

倫理観、双方向性コミュニケーション、自己修正を有するパブリック・リレーションズがいま強く求められています。
今年もパブリック・リレーションズを通し、皆さんと共に平和で希望のある社会の実現に注力していきたいと思います。本年もよろしくお願い申し上げます。

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