パブリック・リレーションズ

2010.12.13

企業の社会貢献活動(CSR) のいろいろ 〜地方企業のユニークな取り組み

こんにちは井之上 喬です。
明治神宮のイチョウの木もすっかり黄色い葉を落とし、冬の気配が感じられるようになりました。
みなさんは忘年会真っ盛りといったところでしょうか。今回はその主役の1つ、焼酎に関する話題です。

「下町のナポレオン いいちこ」。このブランドを知っていて愛飲している方も多いのではないかと思います。
「いいちこ」は、大分県宇佐市に本社を置く三和酒類株式会社の商品で、1979年に本格100%大麦の乙類焼酎として製品化。

飲みやすく、さわやかな飲み口が支持され1980年代の焼酎ブームの火付け役ともなった商品です。

ブームが去っても継続させる

そんなブームの真っただ中で関係者は、「ブームが去ってからも“いいちこ”を指名してもらえるようなイメージづくりをしよう」と考え、始めたのが地下鉄などでよく目にする大判ポスターの展開と「季刊iichiko」という冊子の発刊だったそうです。

ポスターの第1号は1984年でしたが、季刊iichikoの創刊は1986年。東京芸術大学教授の河北秀也氏が監修し、当初から「金は出すが口は出さない」の精神で始まったものが今でも継続されているようです。

最新のポスターは、古代遺跡のピラミッドの前に季節柄、赤いリボンを付けた、いいちこのボトルがあまり目立つことなく配置され、メッセージとして「忘れられた文明を想う」の一言がMerry Christmasとともに書かれています。
季節の風景の中に、いいちこのボトルが1本。風景に溶け込むように表現されているこのポスターのシリーズを駅で目にするのが通勤の楽しみになっています。

一方、季刊iichikoのほうは、優れた「哲学研究」の発表の場を作ることを目的に創刊され、2008年秋号で創刊100号を迎えました。

100号のタイトルは「ホスピタリティ文化学 ホスピタリティビジネスと源氏物語」で、東京芸術大学の山本哲士氏やビジネス界から福原義春氏、小林陽太郎氏などが寄稿しています。

ちなみに107号は「太宰治101」(写真:定価1575円)のタイトルで、さまざまな太宰論の展開と連載記事、そしてカラー特集として文化技術としての江戸指物を紹介しています。

太宰治101

表紙のデザインから色使いまで、関係者のこだわりが強く感じられる出色の1冊です。是非、機会があったら手にしてみてはいかがでしょうか。

目立たなくても優れた分野に光を当てよう

四半世紀にわたって行われている、三和酒類の取り組みは、商品のイメージ作りからスタートし、企業の文化活動、社会貢献活動(CSR)として長きにわたって継続している好例の1つではないかと思います。

そして哲学という地味な分野に光を当て続けていることに敬意を表したいと思います。ますます軽薄化する世の中にあって、日本には文化、芸術など多くの分野で目立たないが優れた業績を残している方々がまだまだ沢山いると確信しています。

日本企業には若手の育成も含め、このようなあまり目立つことのない、しかし意義深い分野にも目を向け、より多くの企業が何らかの支援を行うことのできる企業文化の醸成が渇望されています。

12月上旬に日本経済新聞社が、投資家、消費者・取引先、従業員、潜在能力そして社会の5つの視点から企業を評価する、恒例の総合企業ランキングを発表していました。上位にはキヤノン、ホンダ、武田薬品、NTTドコモ、KDDIなどの大手企業が名を連ねています。

このような企業評価では大手企業が対象になることが多いですが、今回取り上げた三和酒類のように地方の企業でも、継続的に独自のCSRを実施している企業が少なからずあることを忘れてはならないと思います。

しかし日本企業のCSRへの取り組みは、まだまだ社会の一員として欧米企業に比べ遅れをとっているといえます。
パブリック・リレーションズ(PR)活動では、良好な関係構築のために継続し続けることが重要です。それが企業のレピュテーション(評判/品格)の向上にも繋がっていくからです。

企業を取り巻く環境は激変していますが、骨太な社会貢献活動が継続できるようPRの立場から微力ながらこれからも貢献していきたいと考えています。

ちなみに“いいちこ”とは、大分県の方言で「いい(よい)」を意味する言葉だそうです。皆さん今夜はロックにしますか、それとも・・・。

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