アカデミック活動

2026.08.05

日本パブリックリレーションズ学会の第4回研究発表会を北海道大学で開催
~多彩な発表、テーマは「地方創生とパブリックリレーションズ」

皆さんこんにちは、井之上喬です。

関東地方では7月下旬に梅雨が明け、暑い日が続きます。その10日ほど前に梅雨明けし、強い夏の日が照り付けていた九州・熊本では、7月28日に「令和8年熊本地震」が発生しました。現時点で38人の死亡が確認され、9000人近くの方々が猛暑の中不自由な避難生活を強いられています。10年前と同じ地域で同規模の大地震が発生し、ようやくここまで復興されたことを思えば、心中いかばかりかと察するに余りあります。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々、避難されている皆さんに心よりお見舞いを申し上げます。私が代表理事・会長を務める一般社団法人日本パブリックリレーションズ学会でも、何人かの会員(熊本市、八代市など)が被災されました。一日も早く平安な日常が戻ることを心より願っております。

北の大地で第4回研究発表会

7月26日(日)、一般社団法人日本パブリックリレーションズ学会の第4回研究発表会が北海道大学で開催されました。「地方創生とパブリックリレーションズ」のテーマのもと、国内は九州の鹿児島、熊本、佐賀、大分、福岡、本州西部の愛媛、島根、岡山、そして関東など多くの地域から参加者が集まりました。オンラインでも、ロンドンや京都からの参加があり、発表もこれまで最多の19を数えました。


会場の北海道大学学術交流会館

前日夜の懇親会は、北海道大で開発された食材を使って新しいレシピを開発し、提供しているエイトライスフィールドカフェで開きました。北海道の新鮮でおいしい食材、料理にみなさん話も弾んだようで、賑わいを見せていました。

翌日の開会式では、当学会の楢島(ならしま)知哉理事長が挨拶、北海道大学の寳金(ほうきん)総長からは、東京一極集中にくさびを打ち、地方創生をしていかねばならないとの力強いメッセージをいただきました。
お祝いの言葉は、元総理大臣や現職の大臣、地域で奮闘する市長や町長など多くの方からも祝電としていただきました。現職の国会議員の参加を頂いたことも併せ、パブリックリレーションズに対する関心の高さと理解の深まりを実感しました。この場を借りて感謝を申し上げます。


楢島知哉理事長の開会挨拶

北海道大・寳金総長のメッセージ

続いての基調講演は、NHK『新プロジェクトX 〜挑戦者たち〜』キャスターの有馬嘉男氏に、新プロジェクトXの取材を通した様々な知見とパブリックリレーションズ(PR)との関係性を話していただきました。

有馬嘉男氏による講演

その後、有馬さんの講演を元にしたパネルディスカッションを、北海道深川市の田中昌幸市長と私が加わり行いました。それぞれの立場や経験から、地方創生が直面するさまざまな課題、そして成功に導くための方策を、佐藤孝一常務理事のファシリテーションにより多角的に議論しました。

研究発表のセッションでは、笹川平和財団和平調停センターの堀場明子センター長が「和平調停とは?なぜ各国はそれを外交ツールにするのか~パブリックリレーションズが果たす役割と可能性~」と題し、和平調停が国家戦略として重要な役割を担ってきていること、日本の果たす役割について興味深く語ってくれました。

堀場明子氏の研究発表

中学の探究学習でパブリックリレーションズ理論を実践

ランチセッションを経て午後は、3会場に分かれての分科会です。各会場で研究発表が行われ、活発な意見が交わされました。

19の発表はどれも、理論と実践を兼ね備えた、幅広い応用への示唆に富む素晴らしい内容でした。その中から特色ある取り組みを簡単に紹介します。
愛媛県西条市の中学校長の今宮浩氏は、中学校での探究学習にパブリックリレーションズ(PR)理論を導入し、生徒の高い当事者意識の獲得や、地元企業との食品の商品化を通じた社会実装に繋げた実践研究を発表しました。また、線虫という微生物を使い尿から癌の早期発見を世界で初めて実現した企業の研究者の畠山英之氏からは、「小さな生物が世界を変える!線虫がん検査 N-NOSE」と題してユニークな発表が行われました。

新しい制度や技術を社会に実装し広げていくには、対話を通じて関係者の良好な関係構築を行い、その経験と知見を意思決定に還流させる自己修正機能を組織として実践することが不可欠だとの考察を披露したのは、空飛ぶクルマの普及や行政の実務を経験し、業界団体のコミュニケーション責任者を務める吉田俊氏です。
地方議員の立場からは、島根県出雲市の三加茂圭祐市議が、島根県と同県海士町の事例を挙げ、地域と「関係人口」との長期的な関係性の質を高めるために自治体がPRを取り入れる意義について論じました。

10年前の熊本地震で草の根支援活動を行った神田みゆき氏は、自身の活動を振り返り、日常の生活の中での対話や関係性の構築が「声なき声」を支援に結びつける土台となったと、自己修正モデルの視点から分析しました。
さらに、豊富な国際ビジネスの経験を持つ池野昌宏氏は、地方創生を「関係性の構築」という観点から論じ、各地域の「関係的コア」を読み解いて信頼経済を社会実装するための道筋として、リレーションシップ・マネジメントをどう活用するか提案を行いました。

次世代に根付かせたいPRの考え

高校生ならではの自由な発想とエネルギーを感じさせる発表をしてくれたのは、岡山高校からの3人の生徒です。「ボラがつなぐ、瀬戸内・里海再生プロジェクト」と題した取り組みは、食用として価値の乏しいボラを水産業者から低価格で直接買い取り、付加価値を高めた缶詰にして販売する試みで、地元を大切に思い、地域課題に向き合った高校生の清々しい発表は、会場を元気にしてくれました。もちろん缶詰の味も美味で、全国的な展開の可能性を感じさせました。よりよい社会作りを実現するためには、次世代にパブリックリレーションズの考え方が根付くことが必須であると実感した発表でした。

分科会終了後は全体発表に戻り、北海道大学や立命館アジア太平洋大学(APU)、愛媛県西条市立丹原西中学校など、中学生から大学生までのチームによる、「地方創生ハッカソン(アイデアコンテスト)」が行われました。学生の多様でユニークなアイデアに、参加者は大いに刺激を受けていた様子でした。


学会賞を受賞したみなさん

北の大地での初めての研究発表会でしたが、非常に内容の濃い学びのある1日でした。
参加された皆さん、本当にお疲れさまでした。また研究発表会関係者の方々にはこころより御礼を申し上げます。

今後も日本パブリックリレーションズ学会の活動を精力的に展開、幅広い世代に向けて「パブリックリレーションズ(PR)とは、個人や組織体が最短距離で目標や目的に達する、『倫理観』に支えられた『双方向性コミュニケーション』と『自己修正』をベースとした様々なステークホルダーとのリレーションシップ・マネジメント活動である」とのパブリックリレーションズ(PR)の考え方を、実践とともに幅広い世代へと情報発信していきたいと考えています。

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