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2022.12.01

トランジスター生誕75周年、半導体はいまや社会インフラに
〜「Rapidus(ラピダス)」設立、ニッポン半導体の新たな挑戦を応援しよう

皆さんこんにちは、井之上喬です。

もうすぐ師走。私が経営する井之上パブリックリレーションズのテラスにも毎年恒例のクリスマスツリー飾りが登場し、社員や来社されるお客様の目を楽しませてくれています。

いつもこの時期に準備してくれる、女性社員に感謝です。

あとひと月でクリスマスです。この時期の、半導体にまつわる歴史の一コマをご存じでしょうか。今から遡ること75年前の1947(昭和22)年12月23日、クリスマスイブ前日のこの日に、米国ベル研究所で固体物理学部門のリーダーだったウィリアム・ショックレーと、理論物理学者のジョン・バーディーン、実験物理学者のウォルター・ブラッテンの3人のチームが、トランジスターの発明に成功したのです。最初のトランジスターである「点接触型トランジスター」の発見です。半導体のゲルマニウムに二つの金の接点(電極)を近づけて並べた素子を作り、一方の電極にかけた電圧で、もう一方の電極に流れる電流が制御できることを示したのです。

急成長から取り残された日本の半導体メーカー

ショックレーは、この現象が電気信号増幅に応用できる可能性に気づきました。その後数カ月間研究に没頭し、固体による増幅素子の発明として、1948年6月30日に3人の連名で一般公開しました。この功績により3人は、1956年のノーベル物理学賞を受賞しています。

それまで使われていた真空管は、大きく、電力を多量に消費し、故障も頻繁に起きるなど、欠点の大きい部品でした。トランジスターはこれを、過去の改良ではなく、全く違う原理により置き換える革新的発明です。素子の質的な転換を成し遂げたこの出来事は、半導体産業の大きな歴史の幕開けでした。

しかし当時、トランジスター発明のプレスリリースを読んでもその価値を認める記者は少なく、固体増幅素子の発明はほとんど報道されることのないまま、静かな登場であったようです。

その後の半導体産業の隆盛は私が述べるまでもないですが、WSTS(WORLD SEMICONDUCTOR TRADE STATISTICS:世界半導体市場統計)によると、半導体の市場は1980年の約120億ドルから20年後の2000年には1500億ドルに、2010年は3000億ドル、2020年には4400億ドルと急成長を続けてきました。2022年は新型コロナやウクライナ戦争などの影響を受けるものの、前年比約8.8%増の約6015億ドルを見込んでおり、1兆ドル超えも目の前です。

産業のコメ」と言われ久しい半導体は、いま世界的に品不足で、様々な分野で深刻な事態を引き起こしています。これはとりもなおさず、半導体が私たちの身の回りのあらゆるモノに組み込まれ、いまや社会インフラを支える時代にまでなった、といえるでしょう。

急成長を続ける半導体産業のなか、日本の半導体製造装置・半導体関連材料産業は今でも世界的に高いマーケットシェアを誇っています。それでも、日本の半導体メーカーの凋落は誰の目から見ても明らかです。

1980年代のインテルアップルコンピュータにはじまり、井之上パブリックリレーションズは、多くの国内外の半導体メーカー、製造装置・材料メーカー、半導体商社や米国半導体工業会(SIA)などの関連団体とパブリック・リレーションズ(PR)で関わってきました。今もなお、新しい世界市場の創出に携わっています。そのような立場からしても、日本半導体メーカーの現状は残念でなりません。

ちなみに1990年の半導体メーカー売上ランキングでは、トップのNECセミコンダクターズをはじめ2位の東芝セミコンダクター、4位の日立セミコンダクターズ、6位の富士通セミコンダクターズ、8位の三菱電機セミコンダクターズ、10位の松下電器セミコンダクターズと、トップ10に実に6社が登場していました。しかし30年後の2021年には、前年かろうじて10位だったキオクシアがランク外になり、日本の半導体メーカーはゼロになってしまいました。

「失われた30年」を取り戻す、「ラピダス」の挑戦

そんな状況のなか、11月11日にキオクシア、ソニーグループ、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTT、三菱UFJ銀行の8社が出資する新しい半導体メーカー「Rapidus(ラピダス)」が設立され、記者会見を行いました。

社長には米国Western Digital(ウエスタンデジタル)日本法人の元社長であった小池淳義氏が、会長には元東京エレクトロン社長の東哲郎氏が就任しました。

新会社は、高性能コンピューターやAI(人工知能)などに使われる最先端の回路線幅2nm(ナノメートル)世代のロジック半導体の量産を2027年にも目指すとしています。製造技術の開発はIBMなどとも連携し、日本政府も700億円を投じて支援していくとのこと。経済安全保障の観点からも重要なニッポン半導体産業の起死回生を目指した、一大プロジェクトとして注目されています。

かって日本は戦後長きにわたって、産・官・学の「鉄の三角形」によって目覚ましい経済成長を遂げてきました。しかし、1980年代には日本経済が世界を席巻したものの、1990年代初頭に行われた「日米構造協議」や「日米包括経済協議」など米国との様々な交渉の結果、日本は自らを強力にしたこの三角形を崩してしまいました。私自身、これまでの経験を通して、日本の「失われた30年」の根本原因は、この鉄の三角形が崩壊し、長期的展望を欠いたことによるものと強く感じています。そして今回の発表は、日本が新たに「鉄の三角形」を再構築し、その第一歩を踏み出したものとして捉えています。

それはさておき、野心的な目標を掲げる一方で、課題も山積しています。技術面では超微細化に欠かせない最先端露光装置の導入、経済面では2兆円とも3兆円とも見込まれる膨大な投資額、そして最も重要な人的課題は、半導体関連の人材の不足、などなど。

日本の半導体メーカーは、失われた30年の間に微細化技術も海外勢に後れを取ってしまいました。新会社はそれを一気にキャッチアップし、さらに最先端の2nmで勝負に出ようとしています。

社名のRapidus(ラピダス)は、「Rapid」の文字からお分かりのように、ラテン語で「速い」を意味する言葉だそうです。米国、欧州、台湾、韓国、中国勢との厳しい競争のなかで、新会社設立の目標を早期に達成する。そのためには、国内外の産官学、金融界など多くのステークホルダーとの関係構築活動であるパブリック・リレーションズ(PR)を、経営に近いところで機能させることが必要だと思います。

外部環境の変化に迅速に対応し、潮目を読んで一気呵成に攻める。最後と言ってよいかもしれないニッポン半導体の挑戦を、パブリック・リレーションズ(PR)のプロフェッショナルの立場から応援したいと思っています。

12月14日から16日には「未来を変える。未来が変わる」をテーマに半導体製造装置・材料を中心にした半導体関連の展示会である「SEMICON Japan 2022」が東京ビッグサイトで開催されます。(主催:SEMIジャパン)

皆さんも是非、成長産業である半導体産業、そして日本の「産業のコメ」半導体の今に触れてみてはいかがでしょうか。

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