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2011.10.10

スティーブ・ジョブズ、早すぎた巨星の死を悼む 〜日本の再生に多くのヒントを残したその足跡

皆さんこんにちは井之上喬です。

今日は体育の日で休日、3連休では秋を感じる体験をした方も多いのではないでしょうか。

仕事の関係で先週末は関西に足を伸ばし、秋晴れの空とクリーンな空気を体いっぱい吸ってきました。
そんな10月5日、アップルの前CEOスティーブ・ジョブズ氏が56歳の若さで急逝しました。約7年前に患った膵臓癌が原因でした。
ジョブズ氏は1976年、友人のスティーブ・ウオズニアックとシリコンバレーの自宅ガレージでアップルコンピュータ(現アップル)を創業。

アップル社は、IBMやDECなどのコンピュータ・メーカーが当時世界市場を支配していたころ、個人が家庭でもコンピューターを気軽に操作できるように、世界に先駆けてパソコン「アップルII」や「マッキントッシュ」を発表。革新的旋風を巻き起こしました。

アップル設立から35年にわたり世界の情報産業界をリードしてきた彼の死に際し、オバマ米大統領は「もっとも偉大な米国の革新者の一人だった」とその逝去を惜しむ声明を発表。

同世代の友人でありよきライバルであったビル・ゲーツ氏や孫正義氏など世界の多くのリーダーが彼の急逝を惜しみ、その生前の輝かしい功績をたたえました。

彼の死はまた、エレクトロニクスを巡る1つの時代の終焉を強く感じさせてくれました。

繊細で妥協しないカリスマ

アップル社は、創成期にあった1980年から、私が経営する井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)が約7年間、クライアントとして仕事をしたことがある、私にとっては想い出深い会社です。

アップルが日本法人を設立する際には、当時九段南にあった井之上PRの一室に「アップル・ジャパン設立準備オフィス」を設けるなど、アップルの情報拠点としてパブリック・リレーションズ(PR)をはじめ広範にわたる支援を行いました。

8月29日号のこのブログ
でも紹介しましたが、ジョブズ氏は「とんがったカリスマ青年」として、常にパソコン業界の渦中にあって話題を振りまいていました。

ジョブズ氏はその強烈な指導力で、2010年3月に時価総額で小売大手のウォルマートを抜き、5月にはマイクロソフト、そして今年の9月には巨大石油メジャーのエクソンモービルを抜き、3571億ドルで世界一の公開企業(FTSE9月14日現在)に育て上げたのです。

驚異的な成功の秘密は、彼のカリスマ性とともに、その妥協しない開発精神にあります。小さな会社がのし上がっていくには、他と同じことをやっていては成功しません。彼にとっては他社が容易に追従できない革新的な製品開発が絶対でした。

その精神が、パソコンに始まり、デジタル音楽販売、多機能携帯電話のスマートフォン、コンピューター・グラフィックス(CG)映画やIT関連分野などでの新製品や新サービスを生み出したといえます。

日本再生にジョブズから学ぶこと

ジョブズ氏の訃報に先駆け10月4日千葉の幕張メッセでは、電機やIT(情報技術)の国際見本市のCEATEC(シーテック) Japan 2011が開催されました。2011年のテーマは「Smart Innovation 未来を作る最先端技術」。

これまでのCEATECは、最新のフラットパネル・テレビなど家電製品の展示会といったイメージでしたが、今年は家電製品のイメージはかなり薄れているようです。

クライアント企業のオンサイト・サポートで現地に出かけたスタッフの言では、会場ではスマートフォンやタブレットPCの展示に加え、EV(電気自動車)関連や環境、スマート・エナジーに象徴されるエネルギーに関連する展示が多かったようです。

その一方で、海外からの出展は残念ながら年々減少傾向にあり、もはや国際見本市というより日本企業を中心にした、国内展示会的な印象さえもたれつつあります。

今年単独で出展した海外企業で目立ったのはインテルとアナログ半導体大手のMAXIMの2社。サムスン、LGなどの韓国勢、台湾のHTCなどフラットパネルTVやスマートフォンで世界をリードする海外企業の出展は円高もあってか残念ながらありません。
こんなところにも日本のエレクトロニクス、そして日本の地位低下の影響が表れているのかもしれません。

日本企業の特色は、「どこも似たような製品を追求している」とされていることです。独創的・革新的な技術や製品展示があまり見られず、横並びの競合他社との戦いは価格競争に巻き込まれ、日本企業の低収益性の要因のひとつになっています。

そんな中で、CEATEC 2011に出展した海外企業の首脳のひとりからの勇気づけられる話があります。海外勢が撤退する中での今回の出展について次のような心強いコメントを残しています、
「EVやスマート・エナジーなどの分野で、日本の技術は世界をリードしている。その日本で我々の技術をアピールし、日本企業と連携をとり世界戦略を推し進めるための投資は当然のことだ」。

スティーブ・ジョブズは、カリスマ経営者として機能面だけでなく、デザイン面など消費者がわくわくするような商品を開発する創造性とともに、新製品発表などの機会では聴衆の心を惹きつけるスピーチの巧さや高いプレゼンテーション能力も持ち合わせていました。

トップのストリーテリング
で重みを持つのは、その言葉にどれだけ説得性があるかです。ストリーテリングは、その人あるいはその企業だけにしかない個性的かつ独創的な話ができて初めて説得力を持ちます。

いま日本の再生を考えるとき、私たちは改めて彼の残した大きな足跡に学ぶ必要があることを感じます。日本再生の多くのヒントが彼の歩んだ人生の中にあるのではないでしょうか。

アップルがパソコン・ブームを起こし、日本メーカーが追従しPC事業を始めた80年初頭、彼は当時最も輝いていたソニーについて、いつも深い尊敬の心を持って語っていました。それは「いつかアップルをソニーのような創造的な会社にしたい」ということでした。時代の変遷を考えずにはいられません。

私には若いころのジョブズがあまり好きになれませんでした。とんがった青年の立ち振る舞いに対してなのかどこかに危なっかしさを感じていました。

しかしそのイメージを一掃してくれたのが、2005年6月12日にスタンフォード大学の卒業式で行った彼のスピーチです(http://www.youtube.com/watch?v=OaMT8fZpEXA)。

そのスピーチではじめて彼の生い立ちやその生きざまを知ることができました。彼は自分の人生を振り返りながら感動的な話をしたのです。

彼はスピーチの1年前に癌で余命3?6ヶ月の宣告を受けるなどさまざまな体験を語りました。そして、人生の中でどんな経験でも、無駄なものは何もないこと、だから今をしっかり生きなければならない、何よりも重要なことは、自分の心と直感に従って生きる勇気を持つことだと語りかけたのでした。
どのようなときにも自らを信じ、56年の生涯を駆け抜けたスティーブ・ジョブズ。

私たちはこれからあなたが残した足跡を通して、日本再生のために多くのことを学んでいくことでしょう。ご冥福を心よりお祈りします。

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