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2022.06.13

SDGsランキングとダボス会議に見る、世界での日本の立ち位置を考える
〜新しい時代に向けた世界への情報発信、パブリック・リレーシ ョンズ(PR)が不可欠に

皆さんこんにちは井之上喬です。

オフィス近くの新宿御苑の深緑が目にまぶしいほど映える季節も終わりを告げ、梅雨シーズンが到来しました。

気象庁は6月6日、関東甲信地方で梅雨入りしたと発表しました。 前年より8日早く、平年より1日早い梅雨入りとのことです。

梅雨といえばかつては、静かに長く雨が降る印象が強かったものですが、最近では、線状降水帯による集中豪雨の被害が毎年のように起きており、地球温暖化による天候の変化を感じざるをえません。最新のデータ分析を駆使した天気予報などを上手く活用し、急な気象の変化に対応したいものです。

日本の世界での立ち位置に関し、気になる報道がありました。

SDGsランキングと世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」に関するものです。

SDGsランキング、世界19位にダウン

国連と連携する国際的な研究機関である「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」は6月2日、世界163カ国のSDGs(持続可能な開発目標)の達成状況をまとめた報告書「持続可能な開発リポート2022(Sustainable Development Report 2022)」を発表しました。

今回日本は、残念ながら2021年の18位から19位に順位を下げてしまいました。これまでも、2018、2019年は15位だったものの、2020年は17位に、その後も年々ずるずると順位を下げ、今年は19位となってしまいました。

ランキングをみると、フィンランドが2年連続で1位。次いでデンマーク、スウェーデンと、トップ3には北欧諸国が並びます。また、上位18位までは旧東欧の国を含む欧州勢が占めています。ちなみにお隣りの韓国は28位、中国は57位でした。

評価方法は、SDGs17の目標ごとに、達成状況を「達成済み」、「課題がある」、「重要な課題がある」、「深刻な課題がある」の4段階で評価します。日本は、6つの目標で最低の評価を受けました。

日本が最低評価だった目標は、これまでと同じ「ジェンダー平等」(目標5)、「気候変動対策」(目標13)、「海の環境保全」(目標14)、「陸の環境保全」(目標15)、「パートナーシップ推進」(目標17)の5つに加え、持続可能な生産・消費を目指す「つくる責任、つかう責任」(目標12)も今年は最低評価にダウン。その結果、全体のランキングを落とすこととなりました。

特に私が重視しているのが「ジェンダー平等」です。皆さんご存じのように、日本は女性の国会議員が諸外国に比べ圧倒的に少ないことは以前から指摘されているものの、改善には至っていません。また、男女間の賃金格差が大きい点も、低い評価の原因のようです。

少子高齢化がますます進む日本。その中で、女性の社会進出の機会を拡げる重要性は、以前から叫ばれていながら一向に進んでいません。

新たな発想で成長を目指すためには、女性の発想、感性が不可欠だと思います。男性社会に慣れてしまった日本社会には、具体的な数値目標を義務付けするぐらいの荒療治が必要です。

SDGsは、2015年9月に国連サミットで採択された、今や世界標準の言葉です。その精神には、「誰一人として取り残さない」という倫理観に基づく人類共通の目標が示されています。

混迷の時代の羅針盤としてのSDGs。私たちは世界感覚で17の目標達成に向けて、国も企業もそして個人もそれぞれの立場で、真剣に取り組む必要があると思います。

ダボス会議でも低い日本のプレゼンス

2年ぶりの対面式となった世界経済フォーラム(WEF)の年次総会「ダボス会議」が、5月22~26日に開催されました。国家首脳約50人、政府関係者約300人など世界の政財界リーダーや専門家など約2500人が集い、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大の後では最大規模の民間国際会議となりました。

会議は、従来からのテーマであった温暖化など地球環境問題に加え、新型コロナウイルス感染が収まらない中での経済活動の再開、景気回復、そしてウクライナ戦争の影響やインフレ、食糧危機など、山積する世界のさまざまな課題について議論が行われました。

詳細については多くのニュース報道がなされており、関心を持って読まれた方も多いと思います。

今回のダボス会議には、ロシアから参加者はなく、開幕初日にはウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで演説し、対ロシア制裁の強化を求める姿が報道されていたのは記憶に新しいところです。

5月27日の日本経済新聞社説の印象的な部分を引用します。

「ゼロコロナ政策で厳しい出国制限をとる中国の参加者は大幅に減った。米政府関係者もバイデン米大統領の訪日に日程が重なったこともあり、例年より参加が少なかった。それでもレモンド商務長官が訪日後にダボス入りし、インド太平洋経済枠組み(IPEF)などについて発信した。

外交日程が立て込んでいたとはいえ、日本は閣僚を一人も送らなかった。世界が混迷する今だからこそ国際的な対話の舞台に上がるべきだ。政府として発信する努力をしてほしい」

日経記事は、私がパブリック・リレーションズ(PR)の立場から以前より強く思っていたことを、端的に表現していました。

さかのぼれば2020年のダボス会議、第50回のテーマは 「ステークホルダーがつくる、持続可能で結束した世界」でした。

それまでの株主資本主義からステークホルダー資本主義へと、大きく舵を切ったのです。

そして今、米中貿易摩擦に加え新型コロナの感染拡大、追い打ちをかける形でのウクライナ戦争と、世界は混迷の度を増しています。

その中でのダボス会議の開催でしたが、残念ながら日本の閣僚の参加はゼロでした。

世界の注目が集まる場で、しっかりと日本の立場を世界に向けて発信する、世界に対する日本の立ち位置を明確に示すという、絶好の機会を逃したのです。

これでは日本の国際的立場が高まるとは考えられません。

現在の世界の状況、そしてその中でダボス会議が指し示した方向性からもおわかりのように、国家、企業、個人の行動の根底にはなによりも「倫理観」が不可欠です。そして、だれもが安心して住める、よりよい社会へと近づいていくためには「双方向性コミュニケーション」と「自己修正機能」による、様々な利害関係者と良好な関係構築を図る、マルチステークホルダー・リレーションシップマネージメントが欠かせません。これらはまさに、私が実践と研究を重ねてきたパブリック・リレーションズ(PR)の基本要素です。

世界中の国家や企業のトップから、一般の皆さんに至るまで、国籍、宗教、年齢、性別などを問わず、このパブリック・リレーションズ(PR)の考え方をベースに行動することが、多様な世界規模での社会課題の解決に向けた1歩になると確信しています。

皆さんはいかがお考えでしょうか。

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