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2022.05.18

プラスチックごみ、陸地でも深刻化が明らかに
~出来る部分から削減を

皆さんこんにちは井之上喬です。

新年度が始まってあっという間に5月となり、連休も過ぎてしまいました。進学や就職、異動などで新たな生活が始まった皆さん、環境の変化には慣れたでしょうか。緊張ばかり続くのはよくありませんが、緩みが出ると思わぬミスも出てしまうものです。張りつめ過ぎず、緩み過ぎず。5月病にめげず、程よい調子を探りながら活躍してほしいと、特に若い人たちには願っています。

便利で清潔な生活、省エネをもたらしたプラスチックだが…

4月22日はアースデイ、環境を含め、地球全体のことを考える日として、さまざまなイベントがその日を中心に開かれました。皆さんも見聞きしたり、あるいは参加されたりしたかも知れませんね。

その関連で気になった一つが、プラスチックごみの広がりです。この2年間の新型コロナは、世界中を大きく混乱させました。疾病そのものへの警戒の一方、マスクやフェースカバー、テイクアウトの食べ物の容器など多くのプラスチック製品が使われるようになり、それらは適切に処理され、環境中にごみとして出ていないか、気になっていたのです。

そんな思いでアースデイのサイトを訪ねたところ、気になる報告がいくつか見つかりました。例えば、2021年に世界で使われた使い捨てプラ容器は、新型コロナの世界的流行が始まる前の3倍に上ったとみられるようです。

また、タンザニアの例ですが、4月26日に海岸を清掃したところ、これまでのプラスチックボトルのごみに加え、今回は注射器など医療関連のプラごみも見つかったとのこと。記事の写真で、参加者が掲げているプラカードには「Earth Day is Everyday」と書かれていましたが、まさにその通りだと思いました。

いうまでもないことですが、プラスチックそのものに罪はありません。とくにこのコロナ禍で、マスクやフェースガード、注射器や飲み物や食べ物の容器など、衛生を保つ機能だけでも大きな恩恵をプラスチックはもたらしてくれました。数十年の視野で見ても、軽量化や耐久性の向上、製品の低コスト化、デザインの自由度など、多くのメリットをプラスチックは実現してくれました。

問題は、使用後の適切な処理が不十分なことです。少ないうちはそれほど問題にならなかったでしょうが、プラスチック製品が身の回りにあふれるようになると、環境中にも漏れ出すようになりました。

特に、川から海へと流出した海洋プラスチックごみが、浜に漂着したクジラの腹の中から大量に見つかったり、海鳥がレジ袋にからまったり、小魚の体内からも微少粒が検出されたりしているのはご存じと思います。

数日前には、広く大気中にも浮遊している可能性があるとのニュースもありました。プラスチックの適切な扱いは、今や待ったなしの状況です。

地球全体を視野に、それぞれが出来ることから

国内でのプラスチックの削減については、2020年7月にレジ袋の有料化が始まったことを覚えている方は多いでしょう。これは、使用削減(リデュース)、再使用(リユース)、再利用(リサイクル)の3つのRと、原料などを再生可能資源へと替えるRenewableを進める「3R+Renewable」を基本原則とした「プラスチック資源循環戦略」(2019年5月に策定)に基づくものです。

この取り組みをさらに進めるため、この4月には、「プラスチック資源循環促進法」(プラ新法)が施行されました。

新法の内容は、コンビニやファストフード店でのストローやスプーン、ホテルが提供するヘアブラシや歯ブラシなどを、代替素材に切り替えることや、消費者に必要かどうかの意思確認を行うことなどを求める、といったものです。

これらはすでに多くの店舗、企業で実施が始まっており、皆さんもすでに身近に感じられているのではないでしょうか。ストローのように、たとえ全体の使用量が少ない製品でも、法律として定めることで、設計・製造から、販売や使用、そして排出や回収・リサイクルまで、「3R+Renewable」が社会の隅々へと、早く浸透し定着することを期待しています。

もちろん、国内で完結するだけでは不十分です。優れた科学技術を開発し、多様なプラスチックを大量に作り利用してきた日本は、国際的にも大きな役割を果たすことが求められます。

東南アジアの国々にはかつて、再利用にと先進国から大量のプラスチックごみが輸入され、国内の使用分もあわせ、川や海へと流れ出しています。海洋プラスチックごみの実態の研究に加え、ゴミ回収・処理の仕組みの改善など行政的な側面での支援も行われており、大いに期待したいところです。

プラスチック問題は、ほぼあらゆる人たち、企業、組織が利害関係者(マルチステークホルダー)として関わっています。改善を進める視点として、私が長年提唱、実践研究をしているパブリック・リレーションズ(PR)は欠かせないと、筆を進めるにつれ思いを強くしています。

まずスタート地点は「倫理観」です。すでに多くの弊害が、私たちの生活だけでなく地球環境にも及んでいます。私たちはこのような状況を引き起こした当事者であり、解決の責任も負っています。

対策を進めるに当たっては、幅広いステークホルダーとの「双方向性コミュニケーション」を行い、関係構築(リレーションシップマネージメント)を進めることが重要です。これまで自由に使えていたものが制限されると、当初は不便や不満が出がちです。ですが、「自己修正」を重ね、適応を進めていけば、壁を超えた先によりよい状況が待っているはずです。

目的達成は遠いでしょう。それだけに、道のりを少しでも短く、早く進むことを意識することを心に留めましょう。陸や海の生態系、将来の世代など、聞こえない声に耳を傾けることも欠かせません。

以前のブログで、ダボス会議でプラスチックごみ問題に取り組むインドネシアの若者たちのことを紹介しましたが、若い人たちの力も取り込みながら、よりよい社会へと歩みたく思います。

世界各国が実現に取り組む「持続可能な開発目標(SDGs)」では、第14番目の目標「海の豊かさを守ろう」があり、プラスチックごみは当初、この範疇でとらえられがちでした。今では、地球全体の問題として、第12番「つくる責任つかう責任」、第15番「陸の豊かさも守ろう」などへも、広がりつつあります。

問題が大きくなると、取り組みの手法も広がってきます。そんな中、中心に据えたいのはやはり「倫理観」「双方向コミュニケーション」「自己修正」を柱とするパブリック・リレーションズの考えであると強く感じています。

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