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2019.04.22
日本を支える「基礎研究」の危機〜持続可能な成長のためにも早急な対応を
皆さんこんにちは、井之上喬です。
平成も残りわずかになりましたね。30年間を振り返るとともに新しい「令和」時代に自分は何ができるか大型連休の期間に考えたいと思います。
技術革新がもたらした恩恵
4月18日は「発明の日」でした。
特許庁のホームページによればその由来は次の通りです。明治18年(1885年)4月18日に、初代特許庁長官を務めた高橋是清らが現在の特許法の前身である「専売特許条例」を公布し、日本の特許制度が始まりました。これを記念し、昭和29年(1954年)1月28日に、通商産業省(現在の経済産業省)は、特許制度をはじめとする産業財産権制度の普及・啓発を図ることを目的として、毎年4月18日を「発明の日」とすることを決定しました。
多くの素晴らしい発明が私たちの生活をより良く、便利にしていることは明らかで、新しい令和時代も世界中に山積している社会課題を解決するためのさまざまな発明、技術革新に期待したいところです。
日本の科学研究の状況がこの3年間で悪化したと考える研究者が多いことが、文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が4月12日に発表した「科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査 2018)」で明らかになりました。
この調査は、第5期科学技術基本計画(2016年から2020年)期間中の日本の科学技術やイノベーションの状況変化を把握するための継続的な意識調査(NISTEP定点調査)で、2016年度から毎年、大学や公的機関、産業界などの研究者約2800人に、63問からなるアンケートを実施し、回答の変遷を調べており今回3回目となる2018年調査結果を公表しました。詳しくは以下のURLを参照ください。
http://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-NR179-PressJ.pdf
政府は科学技術を将来的な経済成長の原動力ととらえ、AI(人工知能)やロボティクスなどの戦略分野に集中する施策を進めていますが、中国などの台頭により論文登録の件数などで水をあけられ、日本の存在感が低下していることは、たびたびメディアでも指摘されている通りです。
今回の調査では研究現場の実感としても、大学・公的研究機関の研究環境に対する危機感、特に基礎研究に関する状況が悪化しているとの認識が示された形になっており、日本がこれまで強いとされてきた基礎研究の環境悪化が今後の技術進歩にどのように影響を及ぼすのか懸念されます。
この3年間で評価を下げた回答者割合の方が大きい質問項目の上位10位のうち上位5位を拾ってみると、1位が「我が国の基礎研究から、国際的に突出した成果が生み出されているか」(マイナス29%)、2位が「イノベーションの源としての基礎研究の多様性は確保されているか」(同22%)、3位が「我が国の研究開発の成果は、イノベーションに十分につながっているか」(同20%)、4位が「資金配分機関(JST・AMED・NEDOなど)は、役割に応じた機能を果たしているか」(同18%)、5位が「優れた研究に対する発展段階に応じた政府の公募型研究費等の支援状況(同18%)となっており、基礎研究に関連する項目で大きく評価を下げているのがわかります。
一方、評価を上げた質問項目の上位は「ベンチャー企業の設立や事業展開を通じた知識移転や新たな価値創出の状況」(プラス2%)、「女性研究者が活躍するための人事システム(採用・昇進等)の工夫」(同)など評価を上げた項目もありますが、全体的には評価が下がる傾向になっています。
技術革新を加速するパブリック・リレーションズ(PR)
自然科学分野でノーベル賞受賞者を多く輩出している日本ですが、最近ノーベル賞を受賞した京都大学特別教授本庶佑さんや京都大学教授の山中伸弥さん、そして東京工業大学栄誉教授大隅良典さんなどが報道を通じ日本の基礎研究の危機的状況と基礎研究の重要性を訴えているのを記憶していらっしゃる皆さんも多いかと思います。
「国際連合のSDGs (Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」の世界を変えるための17の目標を見ても、産業技術革新の基盤をつくろう、そしてパートナーシップで貧困をなくす、すべての人に健康と福祉を、環境対策などの目標を達成することが謳われています。
このような世界規模の動きの中で5G、AI、IoT(モノのインターネット)、ロボティクス、自動運転などの最先端技術がこれまで人類が経験したことのないスピード感で身近な生活に実装される、私が考えるハイパーグローバリゼーション時代が目の前に迫っています。
このような大きな潮流の中で日本の強みを生かしどのような貢献ができるのか。現状を的確に把握し積極的に情報発信、世界規模のパートナーシップづくりの中核になり将来に向けて日本は何をすべきかを議論し行動するためにも、マルチステークホルダーとのリレーションシップ・マネージメントをコアとするパブリック・リレーションズ(PR)を社会にインプットすることが不可欠だと思います。