交遊録

2010.02.18

ワシントンのNPBに出席して その2 〜大雪のトラブルで触れた日本人の心づかい

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

前回、ワシントンDCでのオバマ大統領出席のNational Prayer Breakfast(NPB:大統領朝食会)へ出席したお話はしましたが、降り続く雪でワシントンの首都機能はマヒ。スノーマゲドン(雪最終戦争)といわれる今回の大雪は最終的に111年ぶりとなったようです。

ワシントンポストなど現地の報道によると、この冬の累積積雪量は140センチに迫ると報じられ、豪雪の影響で5万世帯、19万人が停電の影響を受けたとされています。また連邦政府は連続4日間の業務停止。現地友人のオフィスも月曜日から木曜日までクローズし、12日の金曜日からようやく再開したとのこと。

私は大雪の初日に無事ワシントンを脱出し帰国できましたが、米国での緊急時体験は私にいろいろなことを考える機会を与えてくれました。

コンピュータ化がもたらす人間疎外

今回のような緊急性の高い状況に身を置いたことで、コンピュータ社会の欠陥を強く感じました。米国は、ホテルの予約、空港への問い合わせ、電車予約など大型のコンシューマー・サービス分野では日本以上にコンピュータ化されています。

つまり顧客から電話を入れると、コンピュータの指示で顧客の要望に答え解決するシステムです。しかし、突発的な事故や問題が発生したとき窓口には人間の応対が必要となります。特に交通機関がマヒした際には、フライト・スケジュールなどのキャンセルや変更は必須。

そのようなときには、通常オペレータが対応することになっていますが、なかなか出てきません。ホテルのコンセルジェに相談しても「相手が出てくるまで待つしかない」と返事が返ってくるばかり。ようやく待って相手を捕まえても、多くの場合その対応は親切なものとはいえません。とくに英語が不自由な外国からの旅行者にとっては不安と心細さを増長させるばかり。

トラブルの中で触れた日本人の心づかい

今回の大雪では、普段体験することで当たり前に思っていたことのありがたさを改めて感じさせてくれました。それは日本人のきめ細かな心づかいです。

天気予報で予告されていたとおり、雪は、大統領朝食会の翌日2月5日の午後から降りはじめました。その日、午前中のビジネス・ミーティングの後に、「ダレス空港が閉鎖されるかもしれない」と聞かされホテルに戻ってみると、翌日土曜日の私のフライトがキャンセルされ8日(月曜日)に変更になっていることを知ります。

慌てて800番(日本の料金無料0120番)で航空会社を呼び出しても、オペレータにうまくつながりません。コンピュータでしか返事が戻ってきません。部屋の窓の外を見ると雪がだんだん強く降ってきています。何度試みても人間が電話に出てこないのです。「予定の飛行機で帰国できないと、週明け早々から始まる政府系の重要な仕事に出席できなくなる。どうしょう」。そんなことを考えるとだんだんパニック状態に陥ってきます。

そんな中、ワシントン在住で大学の先輩でもある神田幹雄さん(日米文化センター理事長)が心配して電話をかけてきて、日本人が対応してくれる別のトールフリー800の番号を教えてくれました。こちらもコンピュータ対応なのですが、すぐ電話口に日本人女性職員が出てきました。たまたま日本人客からの問い合わせが少なかったからなのでしょうか、何度かけても、日本人オペレータがすぐ電話口に出てくれます。

外資系航空会社ではたらく、日本人職員の親切で、きめ細かく、てきぱきとした対応で問題が処理されていったのです。ニューヨーク行の列車やバスの利用方法や連絡先など、相手の立場を考えながらの対応は素晴らしいものでした。

翌日のニューヨークのJFK空港でも、日本人職員のきめ細かい心づかいには助けられました。緊急時で自動チェックインができず困っていた時に、日本人職員が複雑な切り替えをてきぱきと行なってくれました。北上する雪が、次第に強まっていくケネディ空港で、彼女たちの仕事ぶりは際立ってみえました。平時の時には気がつかないことでも、パニック的な状況のときにそのサービスの違いを見せつけられた感じがします。

今回の旅行で、彼女たち日本人のもつ心づかいや国民性に触れることができました。日本人の接客能力を再認識することになりました。そこで感じたことは、「サービス業先進国の米国は、システムは良いが人間教育がうまくいっていない。お客に接するということがどういうことか分かっていない」ということです。移民国家米国の弱点が見えた思いがします。

パブリック・リレーションズ(PR)は人間力を強化します。海外でたくましく仕事に従事する日本人の力強さを感じました。こうした人たちがパブリック・リレーションズを身につけると日本は強力になるにちがいないと考えながら米国を後にしたのでした。

書籍

注目のキーワード
                 
カテゴリ
最新記事
アーカイブ
Links

ページ上部へ