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2018.10.02
日本企業のガバナンスランキング〜グローバル化でますます重要となる経営指標
皆さんこんにちは、井之上喬です。
台風24号の猛威が日本列島を駆け抜け、ホッとする間もなく25号が発生し日本上陸を狙っています。日本で巨大台風来襲が常態化するのでしょうか、地球温暖化対策は喫緊の課題ですね。
世界中の投資家が日本企業のガバナンスを測る目安として注目するジェフリーズ証券の2018年の日本企業のガバナンスランキングがまとまったと、先週(9/26)の日経電子版で紹介されました。
コーポレート・ガバナンスは、一般的に企業統治といわれていますが、朝日新聞掲載「キーワード」の解説によると、「株主などの利害関係者によって企業が統制される仕組み。ワンマン経営のもとでは業績悪化や不祥事に適切に対応しにくいとして、欧米で80年代から研究や制度導入が進められた。正しい財務報告をつくるシステムづくりを公開企業に義務づける『内部統制』もその一環」とあります。
上位企業に共通する「指名委員会等設置会社」
日経電子版によると2018年のランキングトップになったのは前年に続いてエーザイと武田薬品工業で、それぞれ240点でした。3位は昨年4位の日立製作所が1つ順位を上げ、前年3位のソニーが4位に後退したとのこと。
5位に不正融資事件で揺れるスルガ銀行が入ったのは意外に感じますが、6月の株主総会で社外取締役を1人多い4人に増員。9月には創業家出身の会長ら5人の社内取締役が辞任し、取締役会での社外取締役比率が高まり、今後、経営陣の行動に対し正当なモニタリング(監視)機能を発揮することができるとしたことが要因のようです。
上位企業の多くに共通するのは、社外取締役が主導する欧米流の統治モデルである「指名委員会等設置会社」にあるとのこと。「指名委員会等設置会社」について簡単に言えば、経営の監督機能と業務執行機能とを分離したコーポレート・ガバナンスを有する会社であり、2003年4月の商法改正で初めて導入されたといいます(金融経済用語集)。
ジェフリーズ証券のランキングは(1)取締役の固定化(2)社外取締役の影響(3)社外取締役のスキル(4)女性や外国人などの人材多様性(5)株主との利害一致の5つの観点から分析されるとのこと。
今回調査対象となった主要500社(TOPIX500)の平均点は40点。昨年は34点だったので6点のアップ。しかし、同証券の採点はマイナス100からプラス240まで340点の幅があり、その中で6点の上昇率は2%にも満たない微増でしかないようです。
企業の持続的成長と企業価値向上
日本企業のガバナンスランキングが国際的に注目されてきた背景として次のことが挙げられます。
第一は、企業の資金調達と機関投資家の活動がグローバルに広がったことで、経営側に強くアカウンタビリティ(説明責任)が求められるようになってきたこと。
また、機関投資家の持ち株比率が高くなり投資先の企業に変革を求めるアクティビスト(物言う株主)の影響力が強まったことも要因だといいます。
昨今、日本企業による不祥事が多発しています。企業不祥事には、製品の品質チェックの不正や不適切な会計処理における粉飾決算・横領、労働基準法に抵触する雇用問題など「倫理観」の欠如に起因するケースが多く枚挙にいとまがありません。
これらの不祥事は、顧客や取引先、従業員、株主・投資家などあらゆるステークホルダーの利益を損失し、経済・証券市場や日本社会に多大な悪影響を与えています。また、不祥事により経営危機に陥る企業も多く、主力事業の売却や不利益なM&A、倒産に発展しているケースも珍しくありません。
コーポレート・ガバナンスは企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に必要不可欠な経営指標です。コーポレート・ガバナンスのランキング上位の企業において「倫理感」「双方向性コミュニケーション」「自己修正」を統合するパブリック・リレーションズ(PR)がどのように機能しているか、興味深いところです。