皆さんこんにちは井之上喬です。
週末の東京は好天に恵まれ、桜の開花が早まりそうな気配すらしますね。2月、3月は大学での講義もなく、私にとっては1年の内で東京での仕事に集中できる貴重な時期です。
今日3月11日は、東日本大震災、そして東京電力福島第1原発事故が起こった日。あの日から早いもので13年経ちました。暦で言えば一回り以上の時間が過ぎたことになります。震災を体験された方にはあらためて、深くお見舞いと哀悼の意を表したいと思います。
地方と中央のメディア報道の違いにも注目
この時期は毎年、さまざまなメディアが東日本大震災特集を組み、報道を行います。
今年も、13年経った今の被災地の状況が、様々な側面から伝えられるでしょう。私たちも改めてあの日に思いを馳せる機会であると感じます。
特に今年は、元旦に起こった能登半島地震の深刻な被害の様子がまだ記憶に新しく残っています。その後も地震は各地で起こり、地震列島ニッポンに住む私たちにとって、地震は過去のことでも他人事でもないことを、今一度心にしっかりと刻む時でしょう。
東日本大震災に伴い発生した東京電力福島第1原発事故の後遺症に今も悩む福島県には、地方紙が2紙あります。福島民報と福島民友です。民報は「東日本大震災・原発事故13年」、民友は「震災13年目」 の特集企画を行っています。
地元の新聞がどのような眼差しで報じているか、東京のメディア報道と比べてみるのも良い機会ではないでしょうか。
日本経済に大きなチャンス
メディアの報道といえば、最近皆さんも気になるのが日本経済の指標の1つでもある東証株価の動きではないでしょうか。
日経平均株価も同様に、バブル経済期の平成元年12月29日の水準を超え、2月22日に史上最高値を更新。さらに3月4日には、史上初の4万円台に突入しました。
ここで企業の価値を表す時価総額の推移をみてみましょう。
2月22日の時価総額ランキングは、トヨタ自動車が57兆4450億円で断トツの首位。上位10社には、三菱UFJファイナンシャルグループ、東京エレクトロン、キーエンス、ソニーグループ、NTT、ファーストリテイリング、三菱商事、ソフトバンクグループ、信越化学工業の顔ぶれで、業種としては製造業から通信、アパレルまで幅広く入っています。
一方、35年前の平成元年(1989年)12月の時価総額の上位10社の顔ぶれは、首位はNTT、7位に東京電力、9位トヨタ自動車、10位野村證券と、他と異なる業種は4社だけ。それ以外の6社は、日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行、三菱銀行、三和銀行と、銀行が名を連ねていました。
バブル絶頂期は、銀行を中心とした日本企業が世界を席捲しましたが、現在の日本経済の牽引役は当時から大きく変化したことが、時価総額ランキングからも分かります。
特に最近の注目銘柄は東京エレクトロン、キーエンス、ソフトバンクグループ、信越化学工業などの半導体関連銘柄です。生成AIの急速な普及による需要増で半導体関連銘柄が躍進し、半導体の製造装置や材料、計測機器などの日本企業群が海外投資家からも注目されています。このことが日本株価の上昇につながっているといえます。
外部環境の激変にパブリック・リレーションズで対応を
しかし、世界の時価総額ランキングを見ると、皆さんもご存じのようにGAFAMに象徴される米国の巨大IT企業が上位をほぼ独占しています。100位内に入っている日本企業はトヨタ自動車だけで、バブル経済期の1989年当時とは、全く様相が異なっています。これをどう考えるべきでしょうか。
私は、日本が「失われた30年」と呼ばれる長い低迷期を脱し、日本企業が世界市場で新たな価値を高める絶好の時代が到来している、そのように感じています。
東日本大震災や能登半島地震など大災害やその対応、少子化・高齢化、労働人口の減少など、日本は確かに多くの課題を抱えています。しかし、視野を世界に広げると、同様の課題の萌芽はいたるところに見つかります。つまり日本は課題先進国として、世界に先行してさまざまな取り組みを行っているのです。
見方を変えれば、日本は世界、地球規模での課題解決のリーダーとなり、貢献できる可能性を持っていると言えます。そのためには、我々の課題や取り組み、目指すものを広く伝えていく発信力を高めていくことが欠かせません。
各々の企業の情報発信のあり方はどうでしょうか。外部環境が大きく変化する中、模索している企業も多いと思います。大切なのは、これまでの財務情報中心から、非財務情報も含めた新たな企業価値を、世界に向けタイムリーかつ積極的に発信する方向へと大きく舵を切ることだと考えています。
そのためには、私が考える『倫理観』に支えられた『双方向性コミュニケーション』と『自己修正』をベースとした、さまざまな利害関係者(マルチステークホルダー)との良好な関係構築(リレーションシップ・マネージメント)を通して、目的や目標を達成するパブリック・リレーションズ(PR)の諸活動が不可欠になります。
昨今、人工知能(AI)の著しい進化により、問えばそれなりの答えは簡単に得られるようになってきました。しかし、最終的に判断し、行動するのは我々人間にしかできません。その時に、パブリック・リレーションズ(PR)は大きな指針となると、これまでの実践を通じ確信しています。