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2024.01.05
自分らしさを発揮し、よりよい社会、日本、世界を目指す
ーパブリック・リレーションズ(PR)の理念を指針に-
明けましておめでとうございます、と申し上げたいところですが、石川県能登半島では元旦に震度7の大きな地震が発生し、その後も強い地震が相次いでいます。広範囲で建物が倒壊したり、土砂崩れが発生したりして、亡くなった方は5日朝現在で90人を超え、行方不明の方は200人超、避難者数は約3万3000人とのこと。多くの人たちが寒い中、不自由な生活を過ごされています。被災された方々には心よりお見舞いを申し上げるとともに、一刻も早い不明者の救出と、これ以上被害が広がらないことを祈るばかりです。
能登地方では、3年前の2020年12月から、揺れを感じる地震が多数発生しており、今回の震度7・マグニチュード7.6の地震は、気象庁の統計がある1885年以降ではこの地方では最大とのこと。今回の地震で地殻変動が3メートルにもなる地域があり、改めて自然の威力の大きさを感じます。1日以降の数(震度1以上)も、4日までで776回と、想像を絶する激しさです。被災地の方々の心労、体の疲れはいかばかりかと案じております。
苦難に包まれた2023年
自然から人間の世界に目を向けると、2023年は長期化の様相を呈しているウクライナ戦争に加え、新たにイスラエルとハマスの衝突が起こり、緊張は一気に高まっています。戦後80年近く、戦争とは無縁にあった日本ですが、どうやって国を守るのか、国防を自分ごととしての議論が、私たち一人ひとりに求められています。平和の武器であるパブリック・リレーションズ(PR)の真価が問われています。
また経済では、急激な円安も手伝って日本のGDPは昨秋、ついにドイツの後塵を拝して第4位に転落。深刻化する少子化問題は、2023年の新生児数が70万人前半と予測され、団塊の世代の3分の1を下回るという危機的状況にあります。
そして政界では混乱が常態化し、政治と金の問題が噴出するなど、日本にとってもあまり良い年ではなかったように思います。
せめてもの明るいニュースを探すと、円安効果などを利用した業績アップが大企業を中心に見られることです。今年こそは日本経済が離陸できるのか、国民の関心は高まっています。
進む「失われた30年の検証」
日本の低迷は、1990年代のバブル崩壊後、長らく続いてきました。かつての活気あふれる日本を取り戻すためにはどうしたらよいのか。それを探るため、日本パブリックリレーションズ学会では、過去を統合的な視点で検証する2年間の研究プロジェクト「失われた30年の検証」が進行中です。政治、経済、外交、科学技術、起業や企業経営、教育・人材育成など広い分野から専門家を講師として招き、意見を聞くとともに参加者から活発な議論を行ってきました。
それぞれの分野で活躍されてきた方々だけに、話は具体的で問題点を的確に指摘し、説得力に富むものでした。例えば、過去の成功にとらわれて新しい問題に対処できなくなっていること、目先の利益確保に心を奪われて、将来の目を育てることがおろそかになっていること、管理の締め付けによって現場の人たちが委縮してしまい、挑戦意欲が削がれていることなど、多くの側面から多様な問題が指摘されました。
その一方で、日本には国際的に比較して優れた点もあり、指標を異なる角度から比較・検討すれば、決して「失われた〇年」というほど悪くはなかったなど、希望を与えてくれる意見もありました。印象に残るのは、KDDIの前身であるDDIを創業した千本倖生さんが「日本は2024年から復活する」と言われたことです。ご存じの通り、千本さんは日本を代表する連続起業家の一人であり、卓越した実業家、教育者でもあります。多くの困難を乗り越えて、今もなお活動を続ける人の言葉だけに、勇気づけられるものがありました。検証は、多くの研究仲間の力を得て、今秋の報告と政策提言に向けて作業を進めています。
検証の作業を通じて常に感じたのは、パブリック・リレーションズ(PR)の考え、実践の大切さです。これがなかったから…、と過去を批判したいのではありません。むしろ未来に向けて日本が再び活気を取り戻し、生き生きとした社会を作り上げていくために、パブリック・リレーションズ(PR)が持つ潜在力は非常に大きい、との確信です。このブログを読まれている皆さんにはすでに自明のことと思いますが、パブリック・リレーションズとは一方的な自分の考えややり方を宣伝することではありません。利害に関わる人たち(ステークホルダー)が、共通の目的に向かって最短距離でたどり着くために、互いに意見や議論を交え(双方向性コミュニケーション)、その中で変わる部分は変わりながら(自己修正)進んでいくという、不断の営みです。その根底には、ステークホルダーを常に意識し、関係者を疎外することなく包摂しながら、さらに社会にとってよりよい状態を目指すという、倫理観が欠かせないことは言うまでもありません。
AI時代でも変わらない「自分らしさ」の発揮
2024年はどんな年になるのでしょうか。急速に進化するAIに私たちはどのように対処、活用すれば良いのでしょう。生成AIについては、昨年2月に、当ブログでも触れましたが、そこで指摘した通り、どれだけAIが高性能になろうと、それを使いこなすのは人間であり、私たちがパブリック・リレーションズ(PR)の基本を心に携えることの大切は変わっていません。
昨年末、英語の辞書出版各社が選ぶ「今年の言葉」には人工知能関係の言葉が並びました。その一つで興味をひかれたのはメリアム・ウェブスター英英辞典の「Authentic」(オーセンティック)です。日本語では「正真正銘の、偽物でない」などの訳語が当てられています。人工知能によって、非常に巧妙な偽物が出て来たことから、この語が多く使われ、同サイトで意味を調べる回数も急上昇したとのこと。この語の意味はいくつもある、と発表文では説明しており、私は「本来あるべき姿や状態にあること、それに近づくこと」と解釈しています。
自分らしさや社会の現状、あるべき姿を謙虚に見つめてこそ、信頼される相互コミュニケーションも、実のある自己修正も進むでしょう。自分らしさとは何か。ひとそれぞれに問われている難題ですが、人は、人とのかかわりあいを通じる中で形作られ、磨かれていきます。パブリック・リレーションズ(PR)は、自分の本来の姿を見つめる道具としても重要だと思うのです。
今年も早々から、さまざまな困難を抱えてのスタートとなりましたが、自分の力を信じ、失敗を恐れず果敢に立ち向かう社会であって欲しいと、心から願っています。
パブリック・リレーションズ(PR)が機能することで、さまざまな社会課題の解決の道を探ることが出来ると、私はこれまでの経験から確信しています。
今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。