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2023.04.18

放送開始70年、携帯電話での通話から50年
〜「ムーアの法則」は死せず

皆さんこんにちは井之上喬です。

深緑が目にまぶしい、すがすがしい季節になりました。新しい生活をスタートされた皆さんも、少しずつペースがつかめるようになってきたのではないでしょうか。

私も先週から、昨年度から客員教授を拝命している北海道大学で、「パブリック・リレーションズ論」の講義をスタートさせました。
キャンパスを歩いていると、新入生と思しきグループに出会います。急がず一歩一歩前進し、充実した大学生活を送って欲しいと思います。

利便性を支えるものは何か

今年もさまざまな節目を迎えます。まず、70年前の1953年は、2月にNHKが東京・内幸町のNHK放送会館からテレビ放送を開始し、半年後の8月には日本テレビが民放として初めて放送を始めるなど、日本のテレビ放送が大きく歩み出した年でした。

その後の技術の進歩は皆さんもご存じのとおりです。白黒からカラー放送、衛星放送、ハイビジョンそしてデジタル化、さらに高精細な4K/8Kと全方位で進化してきました。今後はインターネットとの連携がますます進み、便利で身近なメディアの代表として、多様な形での情報提供が期待されます。

そして、50年前の1973年4月には、Motorola(モトローラ)が世界で初めて携帯電話での通話を実現しました。

多くの皆さんも、その後の携帯電話の驚くべき進歩を目の当たりにしてきたことでしょう。今や手のひらサイズのスマートフォンで、私たちは通話だけでなく、インターネットを通じてeコマースを利用したり、動画や音楽配信サービスを楽しんだり、そして複数の人と協力あるいは競い合ってゲームを楽しんだりできる時代を迎えています。仕事も、かなりをスマホでこなせるようになりました。

本当に便利な時代に生活していることを実感しますね。

こんな時代を実現した大きな要因の一つに、「半導体の進化」があります。

手のひらサイズのスマホは、かつてのスーパーコンピュータに匹敵する演算能力を持っています。何のストレスもなく、私たちは多種多様なサービスを享受していますが、これもスマホの中で働く、先端技術を駆使して製造された半導体のおかげと言えます。

「ムーアの法則」をご存じでしょうか

皆さんは「ムーアの法則」をご存じでしょうか。

米国インテルの共同創業者である、ゴードン・ムーア氏が1965年に論文の中で提唱したもので、当初は集積回路の部品数は毎年2倍(後に「18カ月で2倍」)になるとする経験則です。当時ムーア氏は、この傾向は少なくとも10年は続くだろうと予測しましたが、半導体技術の進展により70年代半ば以降もこの傾向は維持されたことから、経験則ではあるもののムーアの「法則」として知られるようになりました。

そのムーア氏が3月24日、94歳で亡くなりました。ムーア氏に初めてお会いしたのは、私がまだ駆け出しだった1979年。同社のPRを担当していた時期に、パートナーのロバート・ノイス会長と共に来日されたのです。寡黙な科学者といった印象の方でした。ムーア氏の訃報には、世界中の半導体関係者から哀悼の辞が寄せられ、多くのメディアに、彼の偉業をたたえる記事が掲載されていました。

ムーアの法則に沿って高性能化や微細化が進展するなか、半導体は「産業のコメ」からさらに社会に深く浸透してきました。今や、私たちの身の回りのすべての製品に搭載されているといっても過言ではないほどで、「社会のインフラ」とさえいえると感じます。

一方で「ムーアの法則の終焉」などと表現されるように、技術開発は限界に近付いているとの指摘もされています。半導体加工の細かさは、物質の構成単位である原子の大きさが視野に入るようになってきたからです。それでも、市場として長期的視野で見ると、今後も伸びる可能性が高いことに変わりはないと思います。

半導体メーカーで組織する世界半導体市場統計(WSTS)と米国半導体工業会(SIA)の発表でも、市場規模は2021年の約5,950億ドルから2022年には約6,017億ドルへ、そして2030年には1兆ドルを超すまでに成長を続ける、と予測しています。

そんな勢いを秘めた半導体産業のなかで、日本企業は活躍しているでしょうか。半導体の製造装置や材料の分野では高いシェアを誇っているものの、半導体メーカーは苦戦が続きます。栄光の1990年代、日の丸半導体の全盛期には世界のトップ10に6社がランクインしていたものの、今やその影はなく大変残念です。

そのなかで再び最先端半導体の国内量産に挑戦しているのがRapidus(ラピダス、小池淳義社長)です。ラピダスはIBM、IMECとの提携をテコに、失われた30年の日本半導体メーカーの最先端技術開発の遅れを一気に取り戻し、最先端の2ナノメートル(nm)世代で半導体の受託製造事業を目指しています。その目標年は2025年、間もなくです。

ニッポン半導体メーカーの最後の挑戦といってもよい、国を挙げたこのプロジェクトをぜひとも成功させてほしい。そう祈るところであります。

「ムーアの法則の呪縛」に苦しみ、世界の半導体微細化競争で後塵を拝してきた日本の半導体産業。その新たな挑戦が、AI(人工知能)が急速に発展し、圧倒的なコンピューティング能力が不可欠となったこの時代に始まったことの意義は、大きいといえるのではないでしょうか。

「ムーアの法則は死せず!」

人間の終わりなき挑戦に期待したいと思います。

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