パブリック・リレーションズ

2006.06.23

実務家に求められる10の能力10.忍耐力

こんにちは。井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

パブリック・リレーションズは、様々なリレーションズを統合して成果をあげる仕事です。ゴール達成の過程で予期せぬ事態や問題が発生し状況が長期化するなかにでも、そこで関わる実務家は常に目標に照準をあわせて前進しなければなりません。今回はパブリック・リレーションズの実務家に求められる10の能力、シリーズ最終回として「忍耐力」を取り上げます。
広辞苑によれば忍耐とは、「こらえること、たえしのぶこと」とあります

また聖書には「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む」(新約:ローマ人への手紙 第5章)と示されています。これは私たちの内的成長において、苦難を乗り越えるなかで忍耐が養われ、忍耐を重ねることにより自己成長を促し、自己成長することにより希望を持つことを意味しています。忍耐という言葉は一般的に暗いイメージで受け止められがちですが、実は、希望という光に通じた個人の成長に欠くことのできないものといえます。

受動的忍耐力と能動的忍耐力

忍耐力は成功者にとっての必須能力といわれていますが、以下の2つに分類することができます。前者は、与えられた結果を受け入れ耐え忍ぶ受動的な忍耐力で、後者は望ましい結果を生み出すために自ら積極的に挑戦していく能動的な忍耐力です。

一方、パブリック・リレーションズの実務家にとって重要となる忍耐力とは何でしょうか?それは能動的かつ受動的な忍耐力はもとより、目標達成のために目の前に立ちはだかる複雑な問題を根気強く解決する粘り強さです。事態がこう着状態にあっても様々な角度から打開策を試みて、潮目が変わりチャンスが訪れるまで諦めずに挑戦しつづける力。また、すぐに成果の表れない長期のプロジェクトにおいても、掲げた目標に向かって継続的に取り組んでいく力です。

例えばまったく新しい概念を社会に導入しなければならないケースでは、組織体のトップやクライアントとパブリックの双方に大きな変化を求めなければなりません。インター・メディエータとして両者の間に立ち、双方に新しい考え方を受け入れ認識してもらうには多くの時間と労力を要します。このような場合にも、地道な説得努力と、好機と判断した時点で瞬時に行動を起こす積極性が必要となります。

高い志は忍耐力の原動力

しかしながら、どんな状況においてもただ耐え忍べばいいというものではなく、常に忍耐すべき状況か否かの判断をしなければなりません。その判断基準となるのは、普遍的な価値基準である倫理観と自分の志です。

高い志は忍耐力の原動力ともなります。実現したい夢を明確に持つことで、ポジティブに問題をとらえ現状を打破する勇気が湧いてくるのです。

そして成功体験も忍耐力を育てます。困難を乗り越えて成果を得た喜びを何度か体験すると、人はその喜びを糧に様々な試練を乗り越えられるようになります。スポーツマンに忍耐強い人が多いのも、同じような理由からかもしれません。

前々回の「PRパーソンにとってのCSRとは」で「自らの人生の中で、社会への貢献ができる道を探求し、自分の生き方と社会貢献(SR)が合致することが理想」であるとお話しました。このように人生における志と仕事の意義を一致させることが、仕事において忍耐力を発揮させる最大の原動力となるのではないでしょうか。

日本においてパブリック・リレーションズへの関心は急速に高まりつつあるものの、組織体においては、その機能や有効性についてクライアントや上司が理解していないことも少なくありません。こうした状況でパブリック・リレーションズの実務家には、忍耐力を求められるシーンも数多くでてくると思います。
しかしながら、経営目標やPR目標を明確に理解して、忍耐強くその達成に取り組み、多くの苦難を乗り越え、目標を達成したときにのみ味わえる成功の甘き香りは、忘れがたいものになるはずです。

これまで15回にわたり実務家に求められる5つの基本要件と10の能力をご紹介してきました。これらは私の35年にわたるパブリック・リレーションズの経験を通して、実務家の条件を満たす資質や能力として取り上げたものです。皆さんには、これらの中ですでに要件を満たしているものや満たしていないものを時々チェックして、確実に身に着けていくことをお勧めします。確認の際は自分を客観的に見るために、自己分析に止まらず、上司や同僚など周囲の人々に評価してもらうことも有効です。

これらの資質や能力をバランスよく兼ね備えた実務家が、今後日本社会で大いに活躍できることを願っています。

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