パブリック・リレーションズ

2005.10.03

パブリック・リレーションズの実務家に求められる5つの基本要件3.シナリオ作成能力

こんにちは。井之上喬です。
早いものでもう10月です。世のうつろいの速さには驚くばかりですが、皆さんいかがお過ごしですか?

さて今回は、「倫理観」 「ポジティブ思考」「シナリオ作成能力」「IT能力」「英語力」の5つの基本要件の中から、「シナリオ作成能力」についてお話ししたいと思います。

次なる展開を瞬時に見極めて最善の結果へと導いていく。パブリック・リレーションズのプロフェッショナルにとって、先を見通した戦略性のあるシナリオを描く能力は必要不可欠です。

シナリオ作成の第一歩は、最終的に到達したい地点つまり目標(ゴール)を明らかにすることです。そして、掲げたゴールをイメージしながら必要な要素を時系列的に組み立てていきます。

シナリオを作る際に必要な心構えは、まず理想的な展開を想定することです。次に自分の思いどおりに進まない場合を想定し幾つかの選択肢を持つことです。また、最悪の状態を想定しておくことも重要です。つまり危機管理的な対応をも視野に入れておかなければなければなりません。

最大限のスケールで実行可能なシナリオを描いても、実施段階で新たな問題が発生し理想的に展開できない場合があります。そのような状況においてもシナリオを検証し、タイムリーに自己修正を加えながら最終目標を目指さなければなりません。つまり状況の変化によって最善のシナリオが機能し得なくなった場合には、他のシナリオに素早く切り替えるフレキシブルな対応が必要となるのです。

私はこれまで、国家間の貿易摩擦や経済摩擦案件に何度も関わってきました。政府間レベルの問題は多くの場合、当該国にとどまらず、国際社会にどのような影響を与えるのか、その意義や価値性を考えて行動をとらなければなりません。政府や企業など複数の当事者が互いに満足しうる最終的な着地点を設定する作業は困難を極めましたが、その壮大なゴール達成へのシナリオ作成には、次なる展開を見極める能力や瞬時の判断力など、慎重さと大胆さが同時に求められるものでした。

広報担当者やパブリック・リレーションズの実務家は、作成したシナリオを経営トップへためらわず提示する必要があります。どこまで明示するかについては置かれている状況にもよりますが、シナリオをシェアすることは目的意識の共有に齟齬がなくなり、結果的に目的達成を加速させます。

シナリオ作成能力を磨き身につけることは、あらゆる事象に対処する能力を高め、危機発生時などの緊急の対応に真価を発揮します。常にシナリオの伴う行動を習慣化させることでその能力は鍛えられます。それは、最短距離で目的を達成する上で大きな助けとなるでしょう。

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