パブリック・リレーションズ

2012.04.16

東大入学式にパブリック・リレーションズの真髄を見た 〜濱田総長のスピーチから

こんにちは、井之上喬です。

秋入学への全面移行を検討するとして注目を集めている東京大学の入学式が、12日、日本武道館で行われました。その中で、濱田純一総長は、これからの時代を生きていく上で欠くことのできない、つねに意識されるべき価値として、「タフな東大生」、「国境なき東大生」の話をされたそうです( http://www.u-tokyo.ac.jp/gen01/b_message24_01_j.html )。

「タフさ」とは何か?

濱田総長によれば、「タフさというのは、自分の能力を精一杯に使って物事に正面から向き合い、これを乗り越えていこうとする姿勢であり、これを持続していく姿勢が、重要な本質である」と3年前の総長就任以来の持論を展開しています。

さらにタフさについて、「社会的なコミュニケーションの場におけるたくましさ」や「差異を越えて、知識を人に伝え、受取り、納得させ、互いに論じ合うことのできる力」とも説明しています。

まさに、私の専門とするパブリック・リレーションズ(PR)の概念に通じるものがあります。

私は常日頃、「個人や組織体が、最短距離で目的を達成するためには、『倫理観』に支えられた『自己修正』と『双方向性コミュニケーション』をベースとしたリレーションズ(関係構築)活動が重要」と日本社会におけるパブリック・リレーションズの必要性を訴えています。

また先に濱田総長が説明した「タフさ」の意味するものは、パブリック・リレーションズにおける、「自己修正」と「双方向性コミュニケーション」をベースとした、さまざまな相手とのリレーションズ(関係構築)活動にほかなりません。

そして、その根底に、「倫理観」があることは、濱田総長の「物事に正面から向き合い」という言葉からも、うかがい知れます。まさに時代が、パブリック・リレーションズを求めているといえます。

「国境なき」とは

もう一つ、濱田総長の語る「国境なき」という言葉の意味は、「単に、専門知識や語学力を駆使して、世界を飛び回るような活躍をする」ことにとどまらず、急速なグローバル化の進展の中で、リーダーとしての役割が期待される人間には、一つの国の枠の中だけではなく、国際的に通用する競争能力が求められることも意味しています。

これはまた、競争のためだけではなく、同時に「国境を越えた新しい協調の仕組み」が求められていることを示してもいます。

換言すれば、新しい国際社会の秩序や文化に生きる人たちの人生スタイルや新しい価値観の創造など、新たな国際社会づくりへの貢献を通して、入学生が次の時代を担う役割を果たすことへの期待にほかなりません。

また濱田総長の示す、「国境を越えた新しい協調の仕組み」には、その根底に「双方向性」と「倫理観」そして「自己修正」が存在しています。

私が長年パブリック・リレーションズの業務の遂行や研究活動を通して、実感してきたことの多くが、濱田総長のこの話の中に含まれていることに新鮮さを覚えました。。

異質なものに対し、その差異性ゆえに拒絶するのではなく、相手を含めた多様な視点から物事を見ることによって課題を抽出・把握し、最短距離で目標達成を遂げるパブリック・リレーションズの本質が、このグローバル化の時代に求められてきているのではないでしょうか。

東京大学入学式の濱田総長のお話の中に、パブリック・リレーションズ(PR)の真髄をみてとることができました。

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