パブリック・リレーションズ

2012.05.14

統計で消費者つかめ! 〜戦略立案に不可欠な調査データ

こんにちは井之上 喬です。

GWも過ぎてビジネスにドライブがかかる時期となりました。今回のブログでは、パブリック・リレーションズ(PR)の実務家や特にマーケティング担当者の方に役立つ「統計データ」の活用についてお話します。

先月のことですが、「統計で消費者をつかめ」という見出しの日経産業新聞(4/25)の記事に目がとまりました。

「長引く景気の低迷や東日本大震災の影響で、消費動向の見通しが不透明になっている。どのような商品をどれだけ販売すべきかを考えるうえで、一つの道筋となるのが政府や業界団体がとりまとめる消費統計だ。」とし、また「定期的に発表される数字は、消費者の動きを見通す手掛かりになる。」といったリードにはじまる記事の中で、いくつか主要な経済統計が紹介されていました。

500品目の月別家計支出額を調査

最初に紹介しているのが総務省の「家計調査」。この調査は全国の約9,000世帯をサンプルに食品や衣類など約500品目について1世帯当たりでいくら購入したかのアンケートを毎月とっています。

私が経営する会社( 井之上パブリックリレーションズ )でこの「家計調査」データを有効に活用した事例があり、そうしたこともあってこの記事に惹かれたのでした。

1999年9月30日に茨城県東海村の核燃料加工施設で突発した日本初の臨界事故については、記憶されている方も多いと思います。

事故直後に発表された茨城県産食品に対する国・県など公的機間による安全宣言にもかかわらず、関東一円の消費者による買い控え、スーパーなどの仕入れ制限にマスコミの風評被害の報道も重なってスパイラル的悪循環が生じ、茨城県の産業に甚大な被害をもたらしました。

これに関連して、2001年に私の会社が県内某納豆メーカーの「風評被害による納豆販売の損害額」を算定する業務を受諾したのです。

「納豆」の月別消費金額は当時の家計調査データによると、1998年7月から10カ月間連続して前年同月比を上回っていました。しかし、99年5月からは「景気要因」と記録的な猛暑という「季節要因」が重なり、納豆に対する家計支出は前年同月比でマイナスの連続となり、さらにJCO臨界事故により大打撃を受け、マイナスはさらに大幅なものとなっていくのです。

このようなJCO臨界事故前後の家計支出の数字変動を分析することで、風評被害による納豆販売の損害額を推計することができました。もし、前述の家計調査の対象となる500項目中に、「納豆」が含まれていなかったとしたら、この風評被害額の算定は極めて困難なことであったと思います。

景況感を知るヒント

さらに日経産業新聞では、ある大手百貨店のマーケティング担当者の統計データ活用法を紹介しています。
そこでは日本自動車販売協会連合会の発表する「新車販売台数」が前年同月比20%と大幅に増えていることに注目し、「コンパクトな女性向きのエコカーが人気で、車に乗る女性が増えているのではないか」という仮説を立てています。

そして車に乗る女性をターゲットに、上品でいろいろな香りを楽しめる自動車内用の芳香剤「カーフレグランス」の売り場展開を発案。この計画を実現するためには、売り場責任者の承認が必要で、社内説得の際にも数字データを有効活用したといいます。

その他に注目すべき消費関係の指標として、経済産業省の「商業販売統計」なども紹介されています。家計調査では1世帯当たりの消費額が分かりますが、商業販売統計では小売業などの企業の販売額が分かります。これらふたつの統計データは需要と供給の対をなす動向を示すものといえます。

同紙はさらに、消費の先行きを見通すには、厚生労働省が発表する「一般職業紹介状況」の有効求人倍率や新規求人数が参考になるとしています。雇用が回復すれば、所得が増え消費活動も促進されると、雇用と所得の関連性を明らかにしています。

その消費行動に大きく影響するのが消費者の心理状態。内閣府の「消費動向調査」でまとめる消費者態度指数がその手掛かりとなります。「暮らし向き」や「収入の増え方」などを消費者に問いかけ、「良くなる」から「悪くなる」までの5段階の回答を集計・分析。

さて以前私のブログでも紹介しましたが、パブリック・リレーションズ(PR)を体系化した偉大な先駆者エドワード・バーネイズ(1891-1995)は、「プロジェクト成功の要因は、社会科学に裏打ちされた綿密な調査・分析にある」と説いています。

まさに調査は目的達成を確実にするための不可欠な手法といえます。
今回紹介した統計データ以外にも多くの調査データが政府や業界団体、そして企業サイドからも公表されています。

こうしたデータを有効に活用することで、社会や市場ニーズを的確に反映した、より現実的で優位性のある戦略立案が可能となります。

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