パブリック・リレーションズ
2005.10.24
パブリック・リレーションズの実務家に求められる5つの基本要件5.英語力
こんにちは。井之上喬です。
昨日の東京の日曜日は久しぶりに秋晴れの空が一面に広がっていました。北海道に始まった今年の紅葉は緩やかに南下し、関東地方もまもなく色とりどりの鮮やかな秋を迎えようとしていますが、皆さんいかがお過ごしですか?
これまでパブリック・リレーションズの実務家に求められる5つの基本要件として「倫理観」 「ポジティブ思考」 「シナリオ作成能力」 「IT能力」についてお話しましたが、今回は最後の「英語力」についてお話します。
英語力はパブリック・リレーションズの専門家がぜひマスターしておきたい能力です。国際間でのビジネス遂行に必要とされるだけでなく、インターネット上で世界にアクセスするための基本的な能力のひとつといえます。
現在、世界の英語人口は英語を母国語としている人の数に加え、英語を読み、書き、話すことができる人の数を合わせると、約15億人にのぼると言われています。したがって、英語を習得することは、これまでの1億数千万人の日本語だけの世界から、一気に15億の新しい友人とのコミュニケーションの扉を開くことを意味します。
ここで英語が世界の言語の中でどのような地位を占めているか少し考えてみましょう。先週、月尾嘉男東京大学名誉教授から頂いた資料によると、世界で出版されている書物で使用されている言語の割合では、1位が英語で28.8パーセント、そして日本語は5.1%で、中国語13.3%、ドイツ語11.8%、フランス語7.7%、スペイン語6.7%に続いて第6位に位置しています。
一方、アメリカで登場したインターネットサイトで使用する言語の割合は、英語が1位で53.7パーセントと過半数を占め、第2位は日本語で7.1パーセントとなっています。以下、スペイン語6.2%、中国語5.4%、ドイツ語5.0%、フランス語3.9%の順で、グローバル時代を象徴するネット言語では英語が圧倒的なシェアを誇っていることをみると、如何に英語が世界共通の言語ツールになっているかが容易に理解できます。
英語力には「会話力」「読解力」「作文力」の三つが求められますが、パブリック・リレーションズの実務家(通常のビジネスマンも同じ)にとって一番重要な能力は、会話力です。何故ならPRもビジネスも相手と接触しコミュニケーションを行うことなしに真の信頼関係を築くことは不可能だからです。
日本の学校教育では文法を重視した英語教育が展開されているせいか、文法の整合性を気にするあまり英語での会話を躊躇させてしまう傾向が強いと思います。実際の交渉の場では、中学の英語授業で学んだ文法をマスターしていれば十分通用するものです。
日本人は総じて人前で恥ずかしい思いをするのを嫌います。自分の話す英語の文法が正しいかどうかを不必要にこだわるあまり外国人と人前で積極的に英語を話すことに躊躇しがちですが、本来の自分の目的達成を最優先させ、その達成に全てのエネルギーを傾注することがより重要です。特に非英語圏のヨーロッパ人は、文法を気にすることなく外国人との英会話を楽しんでいます。
次に重要な能力は「読解力」です。英語の読解力をマスターすることで、書物やネットなどでアクセスできる情報が飛躍的に増え、獲得できる情報に幅と深みをもたらします。また、読解力があれば誰かに翻訳を頼まずとも、いち早く自らダイレクトに生情報をキャッチすることが可能となります。
その次に大切なのは「作文力」です。英語の文章作成能力は、自分を表現し理解してもらえる人の数を飛躍的に増大させます。また、英語は論理的思考を必要とする言語ですから、作文力を磨く過程で論理的な話の展開を学ぶことができます。このことは、交渉能力を飛躍的に高めることとなるでしょう。副次的には、論理的な日本語構築力が強化されることにもなります。
しかしながら、英語などの言語能力は重要ではありますが、コミュニケーションを行う上での一つのツールでしかありません。情報として相手に伝えるものを持たなかったり、伝え方に問題があれば、ツールとしての言語能力を生かしきったことにはなりません。英語力を十分に生かすためには、仕事に必要な関連知識の獲得や高いコミュニケーション能力など、それらを生かす素地が備わっていることが大前提となるのです。
英語力の習得にはそれなりの時間がかかります。視覚・聴覚・触覚などの五感を使って学んだことは、脳への定着率も良く忘れにくいといいますから、コミュニケーションを通して実際に英語を使いながら能力を伸ばしていってください。他国の人々とのコミュニケーションによって異文化に接し国際性を身に着けることは、単に英語力やコミュニケーションの能力を高めるだけでなく、世界中で多くの友人を得ることにつながり、人生をより豊かなものにするでしょう。