パブリック・リレーションズ

2009.01.03

新年号 2009年を「創造の年」にするために〜パブリック・リレーションズにできること

新年あけましておめでとうございます。
皆さんは正月をどのように過ごされましたか?

全国的に一部を除いて天気に恵まれた新年、私は自宅のTVで恒例の「箱根駅伝」を楽しんだり久しぶりの友人に会うなど、ゆっくりした正月を過ごしました。

前号では、今年のテーマを「2009年は創造の年に」と設定しましたが、今年は大転換の年になりそうです。米国では、オバマ新大統領の誕生、日本では9月までに衆議院議員の解散選挙による自民、民主激突の結果実現する新政権誕生、そしてサブプライム問題以降の新しい世界的金融システムの構築など、米国の中東政策や金融政策の失敗、また日本の政治システムの機能不全は、新しい秩序の構築を私たちに迫っています。

先週のこのブログで、人類の欲望が世界の構築と破壊を繰り返してきたことを話しました。そして、パブリック・リレーションズ(PR)の視点で捉えた2009年の人類が取り組むべきテーマとして、「拡散する核の脅威にどう対処するのか」と「環境破壊への脅威に対応する新処方箋」の2つを重要な課題として取り上げました。その理由は人類の恒常性維持にとって不可欠の問題だと考えるからです。

必要なのは基盤となる土台づくり

人類は平和がベースにないと繁栄しないことはこれまでの歴史が証明しています。私たちの繁栄は、私たちを取り巻く外部環境の状態によって左右されるといえます。外部環境が悪い方向へ変化するときには私たちは自らの恒常性維持(安定的なゴール状態の維持)のために、様々な手立てを講じようとします。

先に挙げたテーマのひとつ、核拡散と核戦争の脅威は、私たちの潜在意識に恐怖感を与えています。特に近年、世界各地で発生している無差別テロは、イスラム原理主義者を抱えるイスラム諸国と、キリスト教、ヒンドウー教などの国々との間に軋轢を増しています。

象徴的な問題としてイスラエル・パレスチナ問題がありますが、これこそ人類共通の問題として世界がその解決に真剣に立ち向かっていく必要があると考えています。インター・メディエータとして日本も積極的に調停にかかわることは、世界平和の担保にもなると考えるのです。日本に強力な外交力が求められています。

加えて、地球温暖化問題により急速に市民権を得つつある原子力発電所の維持・管理問題も重要な問題。リスク・マネージメントを考える上で、原発などの核施設は平和な時代にのみ存在できる構造物。したがって世界中に原発が増えれば増えるほど、平和維持に対してこれまで以上に真剣に取り組む必要性が生じるわけです。原発受容には世界の平和維持が大前提なのです。

環境問題も人類生存の重要な基盤。地球温暖化で壊れゆく地球を放置することは人類の滅亡につながります。地球保全のためになすべきことは脱炭素社会を作ることです。現在の技術ですべての対応が困難であっても、目標を明確化することにより人類の英知で必ず問題解決が可能となるはずです。

いま日本がなすべきこと

核拡散問題で果たす日本の役割は大です。唯一の被爆国として、広島・長崎の悲惨な体験を世界に知らせることは日本の責務。少し具体的な話をしますが、広島・長崎の被爆映像を核の恐怖を知らない世界の指導者に直接手渡すことは極めて効果的です。特に日本の政府や地方自治体の関係者が外国のトップを訪問する際この手法を徹底することができます。DVDのような媒体に編集された映像をプレゼントするなど、パブリック・リレーションズにより、日本が人類共通の問題である核拡散について世界の警鐘役を果たし、将来の核兵器絶廃の実現につなげていくことが可能だと思うのです。

また、2つ目のテーマである環境破壊への脅威に対応する新処方箋として、地球温暖化への対応が鍵を握っているといえます。オバマ次期大統領は新エネルギー政策を掲げ、10年間で15兆円の自然エネルギーをはじめとする環境投資を通して500万人の雇用確保を行い、再生可能エネルギー普及のためのグリーン・ディール政策を始動させようとしています。一方日本は、世界第2の経済大国として最先端を行く環境技術で国民と世界に貢献する。日本の目指すべき道にはほかの選択枝はありません。

現在日本は世界第3のエネルギー消費国。エネルギー問題はすべての国にとって最重要問題です。世界企業の所得ランキングベスト10の7社はエクソンやロイヤルダッジシェルなどの石油会社(日本はトヨタが12位)。日本は、エネルギーの80%以上を輸入に頼りその半分以上を石油に頼っています。日本の2008年度の石油輸入総額は約17兆円(日本総研推計)。この数字は、2009年度の日本の一般会計予算(88兆5千億円)の約20%となっておりエネルギー問題は日本の将来にとって死活問題となっています。

昨年12月6日号でもお話ししたように、脱炭素社会実現のために追求すべき究極のエネルギー開発は、水素エネルギーを中心にしたクリーン・エネルギーの開発です。重要なことは、体力があるいまこそ、日本が急ぐべき課題だと思うのです。日本は国内のエネルギー構造を再生可能エネルギーへドラスチックに転換する枠組みを作り、クリーン・エネルギーの開発を徹底することで、新しい産業を創出し、エネルギー生産・輸出国になることができます。いまこそ次世代に引き継ぐために心血を注がなければなりません。

冷戦崩壊後続いた米国一極主義が崩壊し、様々な価値観を持った民族や国々による多極化が進む中で、日本は今こそ国家の強い意志で、新しいパラダイムのもとでこの課題に取り組まねばなりません。日本はこの道に進むことによってのみ経済の再生や国民そして世界中の人々に繁栄をもたらすことができると思うのです。

地球世界がますます一つにつながっていく中、私たちパブリック・リレーションズの実務家は、国民や世界の進むべき道を見定めていかなければなりません。自分の目標に新しい潮流を意識しながら、国民や世界が進むべき道とその目標とを重ね合わせて歩んでいくことが求められているのです。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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