パブリック・リレーションズ

2009.01.17

井之上ブログ 200号記念号「絆(きずな)」〜日本文化とパブリック・リレーションズの接点

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

日本社会にパブリック・リレーションズ(PR)を根付かせたいとの一念で、2005年4月に始めたこのブログも今回で200号を迎えることになりました。週一度のペースで発行してきた井之上ブログ。読者の皆さんには、いつもご愛読いただき誠にありがとうございます。これからも緊張感を持って発行に臨んで参る所存です。

私たち人間は本質的に「かかわる」存在です。ですから、人間の最も深い体験は他者との関係です。他者とかかわることで私たちは今の自分自身を作り上げているといえます。

パブリック・リレーションズは「リレーションズ活動」、つまり「関係構築活動」です。私はこれまでパブリック・リレーションズを日本の初等教育に導入する際、具体的にどのような教育内容にすればいいのか、これといったいいアイディアが浮かびませんでした。パブリック・リレーションズを表現する適切な日本語を見出すことができなかったからです。

特に子供たちには難解な「関係構築活動」を、別の言葉に置き換えられないものか頭を悩ませていたものでした。しかし最近一つの言葉が私を捉えたのです。それは「絆(きずな)」です。200号記念の今回は、パブリック・リレーションズと日本に古くから醸成されている「絆」についてお話したいと思います。

日本でも大切にされてきた「絆」

最近、社会福祉関係の仕事にかかわる機会が多くなっていますが、答えはそこにありました。特に地域社会や家庭崩壊の問題が顕在化している中で、NPOやNGOでは、地域社会での活動を行うときに、たびたび「絆」という言葉が使われています。家族の絆、親子や兄弟との絆、地域との絆、社会との絆、このように「絆」という言葉は日本社会でも古くから使われていた言葉といえます。

大辞林によると、「絆(きずな)とは、 家族・友人などの結びつきを、離れがたくつなぎとめているもの」とあります。それでは「絆」のある状態や環境とはどのようなものなのでしょうか?そこには、「誠実、信頼、気づかい、助け合い(相互利益)、双方向コミュニケーション、友愛、謙遜、道徳、自らの非を認める、間違っていたらお互いが修正できる」など強い結びつきから派生して多くの言葉が頭に浮かんできます。

日本にはこれまで社会が育てていた「絆」や「絆づくり」を学べる環境があったといえます。しかし戦後の高度成長とITの進展にみる急速なグローバル化は、日本の社会システムをも変化させ、地域間の経済や情報格差は地域社会の崩壊をもたらし、核家族化にみられるような人間関係の希薄化が進行しています。終身雇用制により守られてきた企業社会も非正規雇用者が全体の3分の1を超え、不況による突然の解雇などにより様々な深刻な問題が噴出しています。こうした中で「絆」という言葉は、私たちの日常生活から遠い存在になりつつあります。

かって、私たちが大切にしてきた「絆」が、多方面で切れかかっている現状を目にするたびに胸を締め付けられます。私たちは、社会が長い年月をかけて作り上げてきた「絆づくり」の環境を再生させなければなりません。

母子家庭も増え、多くの子供たちは、放課後、塾に通わなければならず、自らが積極的に人間関係を学ぶ機会が喪失しています。地方自治体が地域コミュニティづくりに注力するのもこうした背景があるものと考えます。そんな時代に生きているからこそ、私たちには、意識して「絆」を育てる努力が求められているといえます。

絆(Kizuna)づくりはパブリック・リレーションズ

私たちは、これまでと違い、意識することで社会にどのように「絆」を作り育てればいいのかを考えなくてはなりません。「絆づくり」を、他の言葉に置き換えると、「関係構築活動」とすることができます。「関係構築」という言葉は、子どもの世界には似合いません。したがって、小学校、中学校においては、パブリック・リレーションズの概念を伝える際は、「絆づくり」という言葉に置き換えるとしっくりきます。

こうしてみると「絆づくり」はその真髄においてはパブリック・リレーションズそのものということになります。これまでの社会でありがちな受け身の姿勢ではなく、前向きに、「目標達成のために、いろいろなところとの『絆づくり』を行うこと」そこには、「倫理観、双方向コミュニケーション、自己修正がある」ことが、子どもたちにとってのパブリック・リレーションズになるのではないでしょうか。

「絆づくり」こそパブリック・リレーションズ。今までのように無意識に行動することなく、今こそ意識して、絆を強めるために関係構築活動を置き換える必要があります。そのためには相手とコミュニケーションをよくとり、双方向性で、いい絆を作り上げていくことが求められるでしょう。

古来農耕民族の日本では、共同体で「絆」を大切にしてきました。日本人が大切にしてきた「絆」。今から14年前の阪神大震災、地域の絆の強さを見せつけた被災者同士の助け合いの姿は世界から絶賛されました。礼儀正しく、底辺のレベルが高い均一化された底力を世界に示し、途上国のよきお手本として役割を果たしてきた日本。私は「絆」とパブリック・リレーションズが結合・合体することで、日本にパブリック・リレーションズがより科学的に理解されるのではないかと考えています。

パブリック・リレーションズの実務家として現在の世界を俯瞰すると、いま米国で起きていることは、ある意味においてパブリック・リレーションズが一方(米国)だけの利益追求のための道具として利用された結果とみることができます。私たちには、21世紀型の新しいモデルが求められています。

当面の目標は全国の大学で、パブリック・リレーションズの講座をスタートさせることです。そのために必要となる教師の育成を急がなければなりません。大学でのパブリック・リレーションズ授業が少ない現在、パブリック・リレーションズの実務を行っているコンサルタントや企業広報で10年以上実務家としてかかわっている人の中から有為な人を見い出し、共通のカリキュラムと教材を作り全国に展開することが急がれています。

今年からそのような環境づくりを始めたいと考えています。

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