趣味

2011.09.19

羽生三冠で歴代最多八十冠の偉業達成 〜心を持つ人間と進化するコンピュータとの勝負の行方は?

こんにちは井之上 喬です。

今週は19日(月)の敬老の日、そして23日(金)の秋分の日と3連休が続きますね。台風の影響が心配されますが、貴重な休みを有効に使いたいものです。
休み気分の今日は将棋のお話です。私は将棋が大好きで、少年のころ夏休みに過ごした弓削島で、兄や従兄弟たちと楽しんだ将棋が今でも懐かしく思い起こされます。
先週9月14日の新聞各紙に将棋の第52期王位戦の結果が報じられていました。「羽生善治二冠(王座、棋聖)が王位戦で勝利しタイトルを奪取、将棋界全7タイトルの獲得数が通算80期となり、歴代最多の故大山康晴十五世名人に並んだ!」とする内容の記事でした。

さらに現在対戦中の王座戦を防衛すれば、羽生名人は王座戦20連覇とともにタイトル獲得数で歴代トップに立つことになります。

将棋の天才が打ち立てた偉業

羽生さんは多くの方がご存じのように、1985年に中学生でプロデビューしますが、世間を驚かせたのは5段時代の第38回(1988年度)NHK杯戦。
当時現役の名人経験者であった大山康晴(3回戦)、加藤一二三(4回戦 :準々決勝)、谷川浩司(準決勝)、中原誠(決勝)の4人をすべて破るという快挙を成し遂げます。
そして1989年、19歳で初タイトルの竜王を当時最年少で獲得。

96年には七冠達成の偉業を成し遂げ、2008年には十九世名人を名乗る資格を獲得。対戦後の記者会見で羽生さんは「年代ごとにスタイルを変えてやっていきたい、ということが長い目標の中ではあります」と、たゆむことのない将棋への創造的な取り組み姿勢を披露していました。

以来、プロ生活約2年間のほとんどでタイトルを保持し続けています。まさに現代将棋界のスーパースターとして棋界をリードしています。
大山十五世名人が80期を達成したのが59歳のとき。将棋は技術だけでなく経験、精神力そして長時間に及ぶ対局に耐えられる体力が必要とされます。
9月27日には41歳の誕生日を迎えるようですが、若手棋士が次々に台頭している将棋界でますます活躍して欲しいと思います。

それにしてもいつも驚くのは棋士の皆さんの記憶力とデータ分析力です。過去の対局の、ある局面での一手、その一手がその後の局面にどう影響したか、その時にこんな一手だったらどのように局面が動いていただろうか・・・・などなど、素人からみると「あの人たちの脳の構造は一体どうなっているのだろう」と思わせることもたびたび。

将棋戦、人間かコンピュータか

こんな人間に挑戦しようというのが情報処理学会のコンピュータ将棋「あから」プロジェクトです。
このプロジェクトは、同学会のホームページを見ると「コンピュータ将棋を通して情報処理技術の進歩を社会にPRすると共に、情報処理技術の重要性、可能性の認識を広め、特に若い世代への情報技術への関心を喚起し、トッププロ棋士との対局を実現し勝利を収めることを目指しております」とあります。

同学会は認知度向上のためのパブリック・リレーションズ(PR)の一環として取り組んでおり、羽生さんも同学会の研究に多大に協力しているようです。

そして2010年10月には、情報処理学会設立50周年記念行事として、清水市代女流王将と、情報処理学会のあからプロジェクトから生まれた、最新のコンピュータ将棋システム「あから2010」が、東京大学キャンパスで対局しました。6時間を超える死闘の末、あから2010が勝利しました。
あからとは、10の224乗の数を示す「阿加羅」に由来し、将棋の局面の数に近いことから命名。

コンピュータを使った思考型ゲームの世界では、チェスのように人間がコンピュータにほぼ勝てなくなっており、コンピュータ同士の対局も盛んに行われているようです。
これまで、将棋は自分がとった相手の駒を、自分の駒として、盤上の好きな場所に打てることから、人間に勝てるコンピュータは難しいとされていました。しかし、その考えを打ち破ったのが「あから」ということになります。

あから2010は、最強レベルの将棋プログラム4種類を搭載し、相手の指し手を受け取り4つのプログラムの合議で最も多い手を最終的な結論とするシステムで、この演算にはインテル社のXeonプロセッサーを搭載した何と169台のコンピュータを並列化した東京大学のクラスターマシンを使用しました。コンピュータ将棋は、市販されている家庭用でもプロに迫る実力と言われているだけに、あから2010の強さも納得できるというものです。

情報処理学会は、今年度もあからプロジェクトに取り組んでおり、この7月にはコンピュータ将棋に精通したアマチュア強豪棋士とあから2010のコンパクト版「あから1/100」の対局を実施、コンピュータが完勝しました。

また、9月初旬に横浜で開催された日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス、「CEDEC2011(Computer Entertainment Developers Conference)」でも、あから 1/100を動態展示し、来場者が実際に最新のコンピュータ将棋と接する機会を作っていました。

このあからプロジェクトに関連して興味深い点が2つありました。1つはプロジェクト実施にあたっての仕掛けのうまさです。
2010年4月には、情報処理学会白鳥会長から日本将棋連盟米長会長への挑戦状送付と挑戦を受けて立つ将棋連盟との記者会見を開催、10月の対局を事前に盛り上げていました。パブリック・リレーションズ(PR)に携わる人間が見てもなるほどと唸らせる一手でした。

もう1つは対局結果に関する報道陣のコメントです。「持ち時間のない状態で、コンピュータに意外な手を指された動揺が見えた。この対局は、心を持たないコンピュータの強さと、心を持つ人間の弱さが勝敗を分けたのではないか」、人類の将来についていろいろと考えさせられるコメントでした。

これからもコンピュータ将棋とトッププロ棋士との対局が行われるでしょうが、心を持つ人間と心を持たないコンピュータとの勝負の行方はどうなることでしょうか。

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