時事問題

2012.03.05

日本社会で求められる人材像 その1 〜国家公務員新採用試験に見る

皆さんこんにちは井之上喬です。
いま日本の社会で求められる人材像が大きく変わろうとしています。

このところ国家公務員に対する風あたりが強くなっています。公務員の人件費の削減が遅々として進まないことや公務員の待遇が民間とかけ離れていることへの国民の不満などで、公務員制度を見直す機運が高まっています。

そんな中人事院は、この秋からこれまでのキャリア・システムと慣行的に連関している採用試験体系を抜本的に見直すことにより、採用後の能力・実績に基づく人事管理への転換の契機としたいようです。
人事院の2012年1月31日発表の報道資料によると、「平成24年度国家公務員採用試験の施行計画」には、国家公務員採用試験について平成24年度から、従来のⅠ種試験、Ⅱ種試験、Ⅲ種試験を廃止して、総合職試験、一般職試験、専門職試験、経験者採用試験からなる新たな採用試験を実施するとしています。

このうち、総合職試験は「院卒者試験」及び「大卒程度試験」の2種類の試験を、一般職試験は「大卒程度試験」、「高卒者試験」及び「一般職試験(社会人試験(係員級))」の3種類の試験を実施。
とりわけ興味深いのは、国家公務員大卒程度試験では、新たに企画立案に係る基礎的な能力の検証を重視した「教養区分」が新設されることです。

今回は、人事院が発表した「平成24年度からの国家公務員採用試験について」からの抜粋を見ながら、いま日本の社会で求められる人材とは、どのようなものへと変化しつつあるのか皆さんと考えてみたいと思います。
http://www.jinji.go.jp/saiyo/pamphlet.pdf

総合職試験の教養区分(20歳から)について

総合職試験(大卒程度試験)の中で教養区分ができたことは画期的といえます。教養区分では専門科目を課さない代わりに、論文やプレゼンテーション等の試験が課せられ、また集団面接を行うなど民間で実施されている手法も取り入れるようです。

教養区分は、1)既存の試験区分以外の専攻分野の学生、2)外国の大学の卒業生、3)民間企業経験者など多様な有為の人材確保に資するよう、受験生の有する深い教養や企画立案に係る基礎能力を十分な時間をかけて検証しようとするもので、これまでより1年早い20歳から受験でき、試験は秋に実施されます。

また教養区分では新たな試験種目として、総合論文試験、政策課題討議試験、企画提案試験などを行います。
第1次試験では、1)基礎能力試験(多肢選択式)に加えて、2)総合論文試験(2題4時間)を行います。総合論文試験では、政策の企画立案の基礎となる教養・哲学的な考え方などについての筆記試験が課せられます。

また第2次試験では、1)政策課題討議試験 2)企画提案試験(小論文及び口述式)3)人物試験が行われます。

政策課題討議試験は、大学院卒者試験で行われるのと同様のプレゼン能力等についての試験。そして企画提案試験は、企画力、建設的な思考力及び説明力などの実証のため行うもので、具体的には、事前提示された相当分量の参考文献や資料を十分理解した上で試験に臨み、与えられた課題と資料に基づき小論文形式で解決策を提案した後、第一線の行政官である試験官に説明し、質疑応答を受けるものです。

専門試験は行われないものの、受験自体は論理的思考力、企画力、判断力、表現力などに関して相当なタフさが求められるようです。現時点で、教養区分の採用予定数は、極めて限定された数のようです。

「受験生の有する深い教養や企画立案に係る基礎能力を十分な時間をかけて検証」するようですが、その意味するところは、一体なんでしょうか。

この15年の間にパソコンは家電並みに普及し、いつでも誰でも多様な情報を入手することが可能となりました。こうした社会の到来により、情報や知識を大量に持つことの意味が失われ、情報や知識を再編集し、そこに必要な意味を持たせる創造的能力が求められるようになったのではないでしょうか。

柔軟な発想に加え、論理的に物事を考える能力が、これからの求められる人材ということになります。

人間力あるグローバル人材育成

欧米社会の人々とのビジネスの中では、もちろん、日々の会話の中でも、教養・哲学的な背景に基づく会話が求められることを経験している方も多いと思います。

国家公務員として海外に出ていく人材に、こうした素養が求められるのは当然のことでしょう。
「専門試験は行われませんが、受験自体は論理的思考力、企画力、判断力、表現力などに関して相当なタフさが求められる」、まさに、これからの求められる人材像といえます。

これに加え、グローバルな視点を持つことが必要である、と指摘したいところですが、こちらについても、人事院は次のように記しています。

採用後に求められる英語能力について言及し、「国の行政においては、各国政府や国際機関等との交渉・情報交換などの業務が増加しており、多くの分野でグローバル人材が求められる」と強調しています。

また、最も重要な点として、歴史感覚を背景とした幅広い視野や柔軟な発想力、交渉力・発信力などの国際感覚の重要性についても触れ、「英語能力をはじめとする外国語能力もその基礎能力として不可欠」とこれまでにない幅広い能力を期待しています。

新たな採用試験では、各試験に基礎能力試験の英文理解度を測るために関連する出題比率を高めるなどし、総合職試験の院卒者試験の政策課題討議試験や大卒程度試験の政策論文試験での、参考資料としての英文資料を使った出題をうたっています。

また、試験合格後、各府省の採用面接において、採用選抜の参考とするため、TOEICなどのスコアを聞かれる場合もあるとしています。

資料の最後のQ&Aには、「国際関係業務において適切なコミュニケーションができるレベルを目標に、平素から外国語能力の向上に努めておくことをお勧めします」とあります。

グローバル時代のコミュニケーションは、相手と良好な関係作りを行う上でなくてはならないものです。
すなわち、個人や組織体が最短距離で目的を達成する、『倫理観』に支えられた『自己修正』と『双方向性コミュニケーション』をベースとしたリレーションズ(関係構築)活動である、パブリック・リレーションズ(PR)の重要性もここに認められるのではないでしょうか。

次回は、グローバル人材の育成についてお話したいと思います。

 

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