時事問題

2012.02.20

少子化は本当に避けられないのか?〜子供を生める社会に:年金問題に直結

皆さんこんにちは井之上喬です。
いま日本が社会保障や増税問題で大きく揺らいでいます。とりわけ年金についての論議がこのところ活発に行われています。

メディアは政府が、現在の年金制度は破綻状態にあり新しい枠組みが必要、と訴えている中身と数字を連日報道しています。

年金問題は、国による乱脈運用や年金未払者の増加などがその破綻に拍車をかけているといわれていますが、破綻の主要因として平均寿命の伸長と少子高齢化が挙げられています。

私たちはこの問題を成り行き任せにするのでしょうか。ただ手をこまねいているのでしょうか?
毎日新聞は1月31日付け朝刊に「超高齢化流れ止まらず」という見出しで、年金制度と高齢化社会についてほぼ2ページにわたって特集しています。

平均寿命世界一と超高齢化社会

同紙によると、ひとりの高齢者を支える働き手の数は、2010年は2.8人で1人だったものが、2022年は2人で1人、そして2060年には実に1.3人で1人という若い人には気の毒な数字を予測しています。

毎日新聞(2012.1.31朝刊)から抜粋

また上の図のデータによると日本の高齢化率は世界でも突出しており、人口統計上の指標である合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の平均数を示す:以下出生率)で見た日本は、2010年時点で1.39。同じくドイツは1.36、イタリア1.41、英国・スウエーデン1.94、フランス1.99、そして米国2.01と先進国で2番目に低い数字です。

そして日本の高齢化率は2010年の23.00から2050年は一気に38.80に跳ね上がりイタリア33.25、ドイツ32.48(2009年国連推計)を上回り、日本が世界のどの国よりもハイスピードで高齢化社会を突き進んでいることがわかります。

一方、国連の「人口統計年鑑2008」をベースにした厚労省の発表で日本の平均寿命は、( http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life10/03.html )、男が79.64歳、女が86.39歳と女が世界一、男は第二位となっています。

この平均寿命は、50年前の1960年の65.32歳(男)、70.19歳(女)と比べると十歳をはるかに超えており、人口問題を真剣に考えてこなかったつけが一気に回ってきた感じすらします。

子供を生みやすい社会とは

「子供は社会の宝物」私はこの言葉が好きです。両親が子供を育てるのは基本ですが、子供は社会の共通の宝物という考えに立つことで、社会の中で子供が育ちやすい環境を作っていかなければならないと思うからです。

厚生労働省が発表する「人口動態統計特殊報告」によると、終戦直後の出産解禁現象により生じた第1次ベビーブームの頃には前述の出生率(合計特殊出生率)は4.5以上の高い値を示していましたが、1975年を境に出生率は減少し、人口置換水準(人口減少が起こるとされる水準)を下回っています(丙午の1966年は除く)。

ちなみに日本の人口置換水準の出生率は2.08といわれています。前述のように日本の出生率は1.39ですから、この数字を2.08に引き上げ、総人口を減らさないようにするための具体的な施策を考える必要があります。

少子化が注目され始めたのは1990年あたりからとされ、前述の毎日新聞は、少子化問題に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢島洋子主任研究員の話を紹介し、政府の政策について、「『包括的でメニューはそろっているが、うまくかみ合っていない』」とし、「育児休業制度の充実で職場復帰を目指す女性は増えても、保育所が足りずに断念したり、1歳時の入所をあきらめて0歳の時に復帰する女性もいる」と警鐘を鳴らしています。

少子化の原因には、初婚年齢の上昇や生涯未婚率(現在約10%)が高くなっていることなどいろいろあると思われますが、その根底には女性の価値観の変化が大きな問題としてあります。

経済的な理由を別にして、家庭で子育てだけをするのではなく自立的にキャリアをアップし働きたい女性が増加しています。仕事に関心が向くと必然的に結婚年齢も上がり、出産のチャンスを失うことにもなりかねません。

二次的には、家庭内の夫婦の役割の変化や、高額な教育費、前述の母親が安心して働ける保育所の数の確保や時間延長などのサービスの充実などが挙げられますが、スピード感を持った政策実施が叫ばれているものの、残念ながら保育所の待機児童数に関してはこの数年2万5-6千人と改善されていないのが実情です。

子育てで抱えている問題を解決することが少子化を食い止める重要な方策であることは明白です。社会が子供のいる家庭を励まし、十分な手当てを施し大切に扱うことで出生率は着実に上がっていくはずです。

子供のある家庭の楽しさを社会が共有するためには、良質のパブリック・リレーションズ(PR)が必要になります。

深刻な状況にある年金問題。「大阪維新の会」の橋本大阪市長の「船中八策」のひとつに「年金の掛け捨て」がありますが、抜本的な改革を考え実行しないと日本は立ち直れないのではないかと思っています。
この際、65歳を過ぎて幸いにも仕事ができ一定の収入のある人や現役中に資産がある人たちが少し我慢をし、

年金問題に一役買うことも求められているのかもしれません。
年金問題にせよいつも思うことは、国民への説明が不足していることです。リレーションシップ・マネジメントであるパブリック・リレーションズ(PR)をしっかり使い課題解決に向かってもらいたいものです。

海外から帰っていつも感じることは、日本は平和で安全な国。原発事故はありましたが、良質な国民性、豊かな海の幸、山の幸、四季折々に魅せる日本の自然。このすばらしい国土をなんとしても次の世代に引き継がなければなりません。

書籍

注目のキーワード
                 
カテゴリ
最新記事
アーカイブ
Links

ページ上部へ