時事問題

2009.04.06

迷走する政治 2〜外国メディアの日本批判

こんにちは、井之上喬です。
やっと桜の満開を迎えた関東地方ですが、みなさん、いかがお過ごしですか?

いま日本の政治にこれまでにない赤信号がともっています。
先日ある閣僚経験者と夕食を共にしました。話題は現在の日本の政治の迷走。日本が直面している政治の危機的状態をどうすれば脱却できるのかといったことでした。今の日本には、麻生さんや小沢さんを比較しその優劣を論じる悠長な状況はありません。

日本の政治は、奈良・平安時代の律令政治から鎌倉時代、武家政治に移行し江戸末期まで続きますが、明治維新以降長きにわたって官僚主導政治が続いています。このパラダイムは第二次大戦後も大きく変わっていません。今回は、迷走する政治の現状についてさまざまな視点から見ていきたいと思います。

外国メディアもあきれる日本

日本の政治の迷走ぶりをみて、海外メディアが日本の政治家に対し手厳しい批判記事を掲載しています。米国政治のオピニオンリーダー紙、ワシントンポスト(2009年2月2日付)はショッキングな記事を書いています。ある日本人学者のコメントを引用し、日本はすでに「ゆでがえる」。熱い湯に入れられた蛙は熱さに驚き、飛び出てくるが、ゆっくりと水を煮立たせると、蛙は飛び出す力を失いゆであがる。問題は、すでに蛙が煮立った湯の中にいることだと書かれています。

また、英フィナンシャル・タイムズ紙は2月25日の社説で、「日本の危機は政治がマヒしているせいで悪化している」と指摘。日本はすぐに総選挙を実施して、意思決定できる政府をつくるべきだと訴えています。そして「(中略)慢性的な輸出依存により、世界の需要が衰えると経済が止まってしまった」と日本経済の現状を分析。こうした状況に麻生政権は、不十分な対応を続けていると批判(Asahi.com:ロンドン尾形聡彦)しています。

一方、米誌ニューズ・ウィーク(アジア版、3月9日号)は「Headless in Tokyo:アタマのない東京」という見出しで長文記事を掲載。中川昭一財務・金融担当相(当時)の先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)での二日酔い会見写真と相次ぎ辞任した4人の日本の首相らの写真を並べ、「日本はグローバル・ビジネス、文化、テクノロジーにおける大国であるにもかかわらず、バナナ共和国(banana republic)のように運営されている」と指摘しています。「バナナ共和国」とは一般的に政情不安定な小国をいい皮肉られた表現。

そして米紙ワシントン・ポスト(3月25日付)は、麻生首相への支持率が下がる中、小沢一郎・民主党代表の公設秘書の起訴により小沢氏が首相の椅子を得る可能性が薄くなったとし、彼に期待していた国民は落胆していると報道。また90%以上の国民が現在の政治を不満に感じていると、「汚職を嫌って自民党を離党した小沢氏」の去就について報道しています。

しがらみ政治から脱する

世襲問題については、米紙ニューヨーク・タイムズ(3月15日付)は次男を後継指名した小泉純一郎元首相を批判。政界の世襲は戦後日本のダイナミズムを喪失させている。日本社会をより硬直化させ民主主義が弱体化する兆候かもしれないと分析。またブルンバーグ・ニュースのコラムニストのWilliam Pesek氏は、「数々の深刻な構造問題を抱えているとはいえ、能力に応じてリーダーを選べば、日本は潜在力を発揮して、将来的には再び成長の果実を得ることになると思われる。だが、能力ではなく、「生まれ」で首相ポストが決まり、新しい意見が力を得ない日本政治の現在のありようのままでは、先は真っ暗だ。」(3月19日)と世襲化した日本の政治のありようを厳しく批判。有能な政治家を発掘・育成する環境づくりが急がれています。

日本や英国、デンマーク、スウェーデンなどは皇室と政治が切り離されています。しかし、北朝鮮の金正日一族をはじめ、パキスタンのブット一族やインドネシアのスカルノ一族など、途上国の多くの政治のトップが世襲制で継承されている事実を知るにつけ、日本政界のレベルがその域を脱し得ない危惧を持つことを禁じ得ません。もちろん世襲議員の中にも秀逸な人はいますが、小泉首相以降、日本では安倍晋三氏、福田康夫氏、そして現在の麻生太郎氏の4人の首相はすべて世襲政治家。

しかし政治家としての資質や能力があっても、資金のない有能な新人が政界に進出するためには、政治家個人への有効な支援システムを考える必要があります。私が夕食を共にした前述の政治家は、本人の経験として、「最近後援会等の会費の支払はクレジット・カードで処理できるようになったが、米国の大統領選で使われたような、インターネットでのワンクリック献金は難しい」と指摘しています。会費納入と異なり、クレジット会社が不特定多数の相手に対する処理に消極的なことがその理由にあるようです。また日本では寄付金に対する税控除も受けられません。

日本は世襲や企業など特定の組織との既得権益を排除し、利害関係のない政治家を育てなければなりません。以前このブログで紹介した、司馬遼太郎が蘭医学者、緒方洪庵について語っているくだりがあります。「人のため」に生きた彼の生涯を示し、志の大切さやその高い志を共有することで、大きなうねりを起こすことができるとしています。身を持って教えようとした洪庵の精神。使命感と志を持つことの重要性が語られています。

パブリック・リレーションズ(PR)の手法で語るならば、「国民を幸せにする」これが政治家としての大目標のはずです。この究極の目標に向かって政治家個人個人がどのような行動をとるべきかいま強く問われています。かつて主要閣僚として政治の中枢にいたこの政治家は、何かを心に期したように、静かにしかし力強くその場を離れていきました。

書籍

注目のキーワード
                 
カテゴリ
最新記事
アーカイブ
Links

ページ上部へ