交遊録

2017.10.04

小泉純一郎元首相の特別講演〜日本が進むべき脱原発への道をテーマに

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

先日(昨日)(10/2)、小泉元首相が私の主宰する「水素研究会」のゲスト講師として、当社(井之上パブリックリレーションズ:新宿区四谷)のオフィスに足を運んでくださいました。

 

オフィスにあるロフトを会場に、お集まりいただいた水素、風力、バイオマス、燃料電池など再生エネルギー分野で最先端を行く30名に及ぶ方々を前に、「福島原発事故を乗り越えて日本が進むべき脱原発への道はどうあるべきか」をテーマに小泉先生の脱原発社会に対する熱い思いを語っていただきました。

この水素研究会には、日頃から私も懇意にさせていただいている、当時の小泉首相が最も信頼していたといわれる内閣官房副長官の古川貞二郎さんやアフラック創業者の大竹美喜さんたちも駆けつけてくださいました。

双方の父親とMIRAIが結ぶ縁

水素研究会は、当社のCSRプログラムの一環として、水素社会の一日も早い実現を願って2009年4月にスタートしたものです。

アカデミアからの水素研究者や企業の開発専門家に加え、再生エネルギーや水素関連事業を担当するエグゼクティブ、ジャーナリストなど思いを共有する方々が個人の資格で参加しています。

今回の水素研究会における小泉先生の講演の実現には、小泉前首相のお父上(旧姓鮫島純也さん、後の小泉純也元防衛庁長官)と私の父(井之上理吉)が同郷の鹿児島出身で、上京後も長く懇意にさせていただいたことがきっかけとなっています。

6月に大竹美喜さんのお取持ちでお目にかかった際、同じ水素車(トヨタMIRAI)の所有者という共通点もあり当研究会での講演を快諾くださったのでした。ちなみに当日の研究会には、MIRAIとホンダの水素車CLARITYのチーフエンジニアも参加しています。

1時間(質疑応答を入れると1時間30分)を超える小泉先生の講演を通して原発に対する先生の造詣の深さに改めて驚くとともに、原発廃止について、水素をはじめとするクリーンエネルギーの現状と将来について多くの示唆をいただきました。

10万年後のパンドラの箱

今回の講演の中で私が特に印象に残った二つのことについて紹介したいと思います。ひとつは北欧のフィンランド「オンカロ」(フィンランド語で「隠し場所」)を小泉先生が視察された際のお話です。

世界各国が頭を痛める原子力発電所の廃棄物問題。「オンカロ」は、北欧のフィンランドが世界に先駆け、建設に乗り出している核のゴミの最終処分場のことです。地下400mに2km四方の処分場(原発わずかに2基分)を建設していますが、核廃棄物が出す放射線が、生物にとって安全なレベルに下がるまで、欧州の基準では少なくとも10万年かかるとしています。

入口を閉ざした蓋に「開けると危険だ」という警告を人類の存在さえ危うい10万年後の生物体(人類)にどのように伝えるのか、フィンランド語で示すのか、英語か、あるいは他の言語を使うのか、言葉の意味すら時代とともに異なってくるのに5万年後の人類に果たして通用するのかといったといったお話を興味深く聴きました。

現在わかっている最古の文字は,前3200年頃のウルク(『聖書』のエレク)遺跡から出土した古拙文字(絵文字)で,一般に「ウルク古拙文字」と呼ばれるものだといわれています。前3200年の文字が、いまだに完全に解読されていないのが現実。まして、10万年後の生物体に情報を伝えるための方法はあるのだろうか。まさに原子力というパンドラの箱を開けた人類が直面する難問とも言えます。

もう一つは江戸時代の美濃国岩村藩出身の著名な儒学者佐藤一斎(1772年-1859年)が残した言葉。「少(わか)くして学べば壮にして為すあり。壮にして学べば老いて衰えず。老いて学べば死して朽ちず」は、小泉先生が首相時代によく引用した言葉だそうです。

現代の言葉に直してみると「若いときにしっかりと学べば、大人になって世のために役立つ。大人になって学べば、年をとっても衰えることはない。さらに老いて学べば、死後もその精神は引き継がれていく」といった意味合いで、人とは、生涯学び続けることが大切だと一斎は伝えているのです。

福島原発事故以降、世界の潮流は脱原発に向かっています。中途半端な原子力政策を掲げる日本はこのままでは世界の再生エネルギーの技術開発競争に後塵を拝するのは必至です。

「老いて学べば死して朽ちず」ではありませんが、今回の小泉先生の講演を聴いて、今後もパブリック・リレーションズ(PR)の専門家として原発ゼロとゼロエミッションを目標にパブリック・リレーションズを活用して一日も早い水素社会の実現に注力していく決意を新たにすることができました。

小泉先生を囲み「水素研究会」メンバーに当社社員が加わり記念撮影。
なお、当日の模様が日経産業新聞(10/4、11面)に掲載されました。

書籍

注目のキーワード
                 
カテゴリ
最新記事
アーカイブ
Links

ページ上部へ