こんにちは井之上喬です。
世界経済の発展に寄与する人材の育成を目的とした学術団体グローバルビジネス学会は先週、来月3月16日と17日の両日にわたって開催される第一回全国大会(統一テーマ:多極化におけるグローバリゼーション)の実施プログラム概要を発表しました。
昨年4月にこの学会が設立されて初めての全国大会は、早稲田大学の国際会議場で開催。早稲田大学が会場に選ばれたのは、戦後のグローバルビジネスを体現したソニー創業者井深大が寄贈した、井深大記念ホールで開催することでその精神に触れることができたらと考えたからです。
実行委員長には、会場が早稲田ということもあり前早稲田大学総長の白井克彦氏(放送大学学園理事長)が就任。委員長はじめ実行委員会メンバーには主催地大学のアカデミシャンが多く関わっています。
副委員長の太田正孝氏(早稲田大学商学学術院教授)、同じく森欣司氏(同理工学術院客員教授)、加えて中村清氏(国際学術院教授)、松田修一氏(同大学名誉教授)、元高知県知事の橋本大二郎氏(同大学院客員教授/慶大大学特別招聘教授)など。
そのほかメンバーには、原良憲氏(京都大学経営管理大学院教授)、木村東一氏、杉本孝氏(共に同大学経営管理大学院特命教授)、そして国際弁護士や公認会計士、国際ビジネスで活躍するビジネスパーソンも加わっています。ちなみに私は、副委員長として関わらせていただいています。
特別セッションは、いまホットイッシュのTPP
第一回全国大会の統一テーマは、「多極化におけるグローバリゼーション」。
東西冷戦崩壊後の米国一極集中から、ITの進展や先進国からの投資などで経済力をつけた新興国の台頭により、国際システムは多極化への動きを強め世界はグローバリゼーションの真っただ中にいます。
多極化の中で加速するグローバリゼーションとはどのようなものなのか?私たちがグローバルビジネスを推進していく中で克服すべき課題は何なのかなど、2日間にわたって数々の講演とパネルディスカッション、そして10件に及ぶ学会内の研究成果が発表されます。
初日の16日には、10件の研究成果が発表され、「英国鉄道ビジネス参入への挑戦」や「水素エネルギー社会と水素自動車」、「国際取引と投資協定仲裁」、“Death and Rebirth of the Domestic Economy”などが当学会員により発表されます。
これらの研究発表はいずれも時宜得たテーマで行われます。中でも、「英国鉄道ビジネス参入への挑戦」は、長年英国鉄道への運輸車両納入を手掛けてきた日立製作所が、それまでの製品単品販売主義からシステム販売主義に方針転換し、大型受注を成功させたプロジェクトを検証したものです。
また、「国際取引と投資協定仲裁」は、大手国際弁護士事務所の中野憲一氏によるもので、グローバルビジネス環境下での国際取引上発生するさまざまなトラブルについて投資協定仲裁にフォーカスしてプレゼンテーションが行われます。
そして、16日午後一番から始まるTPP特別セッションでは、この方面の第一人者である渡邊頼純氏(慶応義塾大学教授)や近藤剛氏(早稲田大学特命教授/伊藤忠商事理事)らにより討議されます。
TPP(環太平洋経済連携協定)は、安倍首相が今週オバマ大統領とワシントンで会談を行う中で最も関心の高いイッシュ。このセッションではTPPとはどういったものなのか、その本質的な意味合いから始まり、何を日本にもたらすのか?どのような課題があるのかなどについて、パネルで議論を進めていきます。
渡邉教授と相対する近藤剛さんは、小泉政権で道路公団民営化のために総裁(2003?2005)として辣腕をふるった人ですが、伊藤忠のワシントン事務所長時代には当時のカーラ・ヒルズ米通商代表部(USTR)代表など豊富なホワイトハウス人脈を駆使してロビー活動を行っていた人です。在日米国商工会議所(ACCJ)のTPP関連の人も加わったセッションは参加者の関心を惹きつけることでしょう。
基調講演とパネル、そしてさまざまな発表、講演
2日目の午前中は小島順彦氏(三菱商事会長)の基調講演とパネルディスカッションが組まれています。
総合商社として国際的な人材育成に注力する三菱商事トップからは、グローバル化がもたらすものはどのようなものなのか、またどのような人材育成が求められているのかなど、その語られる内容に期待がかかります。
パネリストには当学会理事長でもある小林潔司氏(京大大学院教授)、関口和一氏(日本経済新聞論説委員兼編集委員)、小林りん氏(インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢設立準備財団 代表理事)、アレン・マイナー氏(サンブリッジ会長)が参加(筆者のモデレータによる)。それぞれ異なったバックグラウンドをもち第一線で活躍するパネリストによる白熱した討議が期待されます。
午後からはまず3つの研究発表が行われます。最初は原良憲京都大学経営管理大学院教授による、「おもてなし革新のグローバル人材育成」 、続いて井之上喬による「グローバルビジネスのインフラストラクチャーとしてのパブリック・リレーションズ」。最後は小林潔司教授による「グローバル人材育成の必要性」がありますが、いずれも斬新なテーマで発表されます。
その後に、各界を代表する内外4名の有識者の講演が続きます。
最初の3名は日本のビジネス・エグゼクティブ。危機にあったIHIにあって7人抜き大抜擢人事で社長に就任し同社の立て直しに貢献した釜和明会長。続いて、日本はもとより、グローバル進出に力を入れ世界有数の不動産会社の三菱地所木村会長による話。そして中国、マレーシアなどで、数々の課題解決を通してアジアビジネスを成功に導いた、田中秋人イオン顧問(元専務執行役)。
最後にヨーロッパからは、アリソン・マリーEUビジネス協会(EBC)事務局長による今春から交渉入りが予定される、日本と欧州連合(EU)による経済連携協定(EPA)交渉についての話など、最新の講演内容になるはずです。
今回の全国大会開催についてグローバルビジネス学会の大竹美喜会長(アメリカンファミリー生命保険会社創業者兼最高顧問)は、「当学会では社会科学、人文科学、自然科学といった専門分野を越えてグローバルビジネスに関する有益な情報を国内外に発信していくことを使命のひとつとしている。この全国大会が国際的な連携をさらに深める機会になることを期待している」と語っています。
また17日の夕方から始まる懇親会には、理事長、会長、役員をはじめとして、アドバイザリーの方々にもお越しいただく予定です。経験豊富な皆さんとの積極的な意見交換が期待されます。
3月17日の私の発表にもあるように、グローバルビジネスを遂行する上でパブリック・リレーションズ(PR)はインフラストラクチャー(基盤)です。皆様のご参加をお待ちしております。
全国大会のプログラム詳細は:http://s-gb.net/news/628/をご覧ください
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