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2018.05.21
日本の研究開発費の増額と効率化をのぞむ〜人材育成も含め日本はIoT、AI時代に取り残される?
皆さんこんにち、井之上喬です。
新緑が美しい季節ですね。私が経営する会社(井之上パブリックリレーションズ)のオフィスに近い新宿御苑の緑も目にまぶしいほどの輝きを見せています。
近くにおお出かけの際は是非、お立ち寄りください。
国際競争の激化と「日本製鉄」の社名復活の意図するものは
最近気になった報道記事をいくつか見てみます。
その一つは69年振りの「日本製鉄」の社名復活のニュースです。
新日鉄住金は5月16日、2019年4月1日に社名を「日本製鉄」に変更すると発表するとともに、傘下の日新製鋼を完全子会社化し、2019年4月に両社のステンレス鋼板事業を統合することも発表しました。新社名の英文表記は「NIPPON STEEL」、遅きに失した感はありますが国際競争に勝ち抜く姿勢を鮮明にしたとも取れます。
しかし、世界規模でみると粗鋼生産量で見るとまだまだ厳しい状況に変わりはなく、グローバルな戦略的なM&Aの流れから見ると何とスピード感のない動きと感じざるを得ません。
そんななか5月3日の日本経済新聞では、日本企業の研究開発費の伸びが海外企業に劣っているとのショッキングな記事がありました。
それによると、2007年から2017年まで10年間の研究開発費伸び率はアジア4.1倍、米国の86%増に対し、日本は僅か12%増にとどまり、AI(人工知能)などIT(情報技術)分野で米国勢を中心に投資が盛り上がり、第4次産業革命が進むなか研究開発の遅れが日本の産業競争力を損ないかねない、と指摘。まさにその通りだと感じました。
AIへの研究開発投資に全力を
記事では過去10年の研究開発費を、東証1部上場企業と米S&P500種株価指数、欧州のストックス600、日経アジア300指数の構成企業で比較した結果、世界100位までに日本勢は17社と10年前の24社から減少し、かつ世界3位だったトヨタ自動車は研究開発費をドルベースで26%増やしたが、順位は10位に落ちた、と分析しています。
世界の研究開発費上位メンバーも10年で自動車や医薬品などからITに様変わりしたと指摘。世界最大の研究開発企業は米アマゾン・ドット・コムで226億ドルと10年前の28倍となっています。特にAI(人工知能)の開発人員は2017年に5,000人と1年間で5倍増の勢いだそうです。
さらにアジアでは、研究開発投資はこの10年間で4倍増で世界3位のサムスン電子(韓国)に加え、中国の電子商取引アリババ集団の伸びが目立ち、アリババは2017年、米中ロなど7カ所に研究施設を設置し今後3年で研究開発に合計150億ドルを投じると発表しています。
総務省によると、政府なども含めた日本全体の研究開発費は2015年に1800億ドルと、米国の5,000億ドル、中国の41,000億ドルに次ぎ世界3位となっており、国内総生産(GDP)比で3.6%と米国の2.8%、中国の2.1%を上回り、規模では日本は依然として「研究開発大国」となっています。
しかし、研究開発の土台、基礎研究では特に伸び悩みが顕著で懸念は多く、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などのキーワードが将来から現実のものになった時点の日本の研究開発体制の質量が懸念されてなりません。
我々がスマホで何の苦労もなく使っているサービスの多くは、長年の基礎研究に基づくものですし、それを支えているのは研究成果に基づく技術だと思います。
鉄腕アトム、ドラえもんがマンガで描いていた技術が現実のものになってきています。
私たちの国は本気でそして一刻も早く研究開発に、新しい流れに対応できる有意な若者を登用する仕組みを作らないと世界から後れを取ることになってしまうと思うのです。
一例として中国は、IoT、 AIそしてデータセンタ、クラウドを支える半導体分野に巨額の投資を表明しています。開発のための技術者は若者です。
潮目を的確に読み切って、どこに投資をするのか今まさに、未来に向けての重大な決断を下す時ではないでしょうか。私が関わる、グローバルビジネス学会の第4回全国大会(7月7日、8日早稲田大学国際会議場など)のテーマは、「AI」で、各界のAI専門家が参加し、将来の日本のAIの在り方について討議します。
既成の産業構造を一変させてしまうかもしれないハイパー・グローバリゼーション。その流れの中で、目的・目標達成のために様々なステーク・ホルダーとの良好な関係の構築は不可欠となります。パブリック・リレーションズ(PR)の主柱となるリレーションシップ・マネジメントの重要性はますます高まっています。