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2016.11.03
「IWAOモデル」その2〜緩和ケアの臨床教育・研究拠点「まごころの杜」が名古屋で開所
皆さんこんにちは、井之上 喬です。
今日は文化の日。昭和23年(1948年)に「国民の祝日に関する法律」を制定するにあたり、1946年 11月3日の日本国憲法公布の日を記念して「文化の日」を定め,47年5月3日の同憲法施行の日を「憲法記念日」と定めたとのことです。またこの日は、文化勲章の授与が行われることでも知られていますね。
私のブログの600号記念で、超高齢社会のソリューションとなる「IWAOモデル」について紹介しました。今回はその続編となります。
「IWAOモデル」を具現する「まごころの杜」
今週月曜日(10/31)に名古屋へ出張してきました。「IWAOモデル」を具現する「まごころの杜」(名古屋市熱田区幡野町)の開所式/記者発表会に参加するためです。
「まごころの杜」は、3階建てのフロア構成で1階は、外来と訪問診療を行うクリニックと訪問看護・介護ステーション、リハビリ室などが配置されています。要介護者の住居部分は2、3階。1部屋約18平方メートルで全40室あります。
「まごころの杜」では、がん患者を主体に痛みの管理、理学療法、言語聴覚療法などの緩和ケアを提供します。そのため、がん末期のスペシャリストである経験豊かな内科医と外科医、精神科医など5人の専門医師に加え、看護師、介護士、リハビリ専門職など医療・介護に係るほぼ全職種のスタッフを配置しているとのこと。
何よりも驚いたのは入居費が低く抑えられていることです。毎月5万円から7万円(共益費1万円)の費用で入居できるとし、生活保護者でも安心して入居できるよう配慮していることです。新設の施設でこうしたことが実現する「IWAOモデル」に感動すら覚えます。
写真は、開所式のメインイベントとなるテープカット(写真)。中央左が「IWAOモデル」を推進する医師で藤田保健衛生大学教授、名古屋大学院特任教授の岩尾聡士教授。中央右は医療法人陽明会の理事長で、「まごころの杜」を運営する岩尾康子院長。左端は、アイカ工業の小野勇治社長です。同社は2009年に名古屋大学に寄附講座を開設して以来、同モデルの実現を支援してきた企業です。
名古屋にはNHKをはじめ民放TVが5局あります。このうち「まごころの杜」にはNHKをはじめ5局からの取材カメラが入り、開所式は大いに盛り上がりました。こうした現場を見るにつけ、医療・看護・介護が日本社会にとっていかに大きな問題となっていて、地域社会の関心を集めているのかを改めて実感させられました。
「まごころの杜」では、循環型の施設として地域の病院や訪問看護ステーションと連携し、在宅療養時の急性増悪時や退院後の一時受け入れも行なう計画といいます。
終末期医療を先進国並みへ
テープカットの後は、会場を2階に移して岩尾教授による記念講演(写真)と記者発表会が行われました。
岩尾教授は記念講演で「これまでわが国は、高度経済成長と国民皆保険により医療・介護をすべての人が等しく受けられるよう努力してきたが、近年の財源不足により困難な状況を迎えている。今後は、ソーシャルビジネス的手法により最後の看取りを街で看る仕組み作りが求められている。英国で緩和ケアは、慈善団体の寄附により全額無料で安心して受けることが出来るが、わが国でも先進国にふさわしい最期をよりよく生きるための仕組み作りを創生していくことが必要になる。」と述べています。
また岩尾教授は、「現在、日本では2人に1人が癌になり、3人に1人が癌で亡くなっている。しかし、医療・介護分野では、平均在院日数の急速な短縮もあり、癌末期の対応が手薄になっているのが実情。こうした背景もあってがん患者を主体に緩和ケアを提供する施設として、『まごころの杜』を開所した」と語っていました。
記念講演の後は、プレス向けの発表会、そして参加者全員が一堂に会し、懇親会が催されました。
終了後プレスツアーが組まれ、「まごころの杜」を専用バスに乗車して出発。先ずは、アイカ工業名古屋支店に常設されている「IWAOギャラリー」を視察し、次いで陽明会が運営する聖霊陽明ドクタータワー(サービス付高齢者向け住宅を視察しました。
年間40兆円を超える医療費は、迎える超高齢化時代で破たんをきたしつつあります。こうした医療・介護の最前線に接する機会を持ち、私たちパブリック・リレーションズ(PR)の専門家がこの分野でかかわるべき課題の多さを再認識させられました。