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2015.09.10

第4次産業革命の先に「シンギュラリティ(技術的特異点)」コンピュータは人間の知性を上回れるか?

皆さんこんにちは井之上 喬です。
9月の声とともに一気に涼しくなったと思いきや、東京は台風18号の影響で大雨に見舞われました。しばらくは不順な天候が続きそうですね。

第4次産業革命真っ只中

メディアに登場するバズワードで産業界の最近の注目は、IoT(モノのインターネット)、Industry 4.0、先進運転支援システム(ADAS)などでしょうか。

日本経済新聞は9月6日(日)から紙面と電子版連動で大型特集企画「新 産業創世記」を開始しました。それによると現在を、1780年ごろの蒸気機関による第1次産業革命、電気エネルギーによる大量生産も可能になった1870年ごろの第2次産業革命、半導体技術が発達しコンピュータによるIT(情報技術)が浸透してきた1970年ごろの第3次産業革命に続く第4次産業革命の時期と位置付けています。

ビッグデータや人工知能(AI)、自動制御、クラウドと言った革新的な技術が次々と登場し、さまざまな産業分野の進化を加速しています。そして進化の速度は過去の産業革命時に比べケタ違いに速く、その影響も広く深いと現在を評しています。

確かにクラウドコンピューティング、AI、スマートデバイスを駆使したさまざまなサービスが登場し市場を席巻、成長する企業の大きな要素であるスピード感はますます増幅しています。

その代表格としてテスラ。モーターズの名前を挙げ、その株式時価総額は3兆円台後半に達し日産自動車に迫りつつあると紹介しています。さまざまな業界地図が一気に塗り替わる可能性を秘めた時代とも言えますね。

「2045年問題」、ご存知でした?

特集の中で注目した言葉が「シンギュラリティ(singularity)」です日本語では技術的特異点と訳されています。

解説では、米国未来学者レイ・カーツワイルが提唱した「コンピュータが人類の知性を超える」とする説について触れ、米インテル創業者の一人であるゴードン・ムーアが提唱した「ムーアの法則」を紹介し、コンピュータの演算処理速度は今後30年で10億倍と指数関数的に高まり、2045年に“その日”が訪れると予測。現在技術では予想不能な未来が訪れるとしています。

「2045年問題」については最近シリコンバレーのパブリック・リレーションズ(PR)関係者と意見交換する中でたびたび耳にすることがあります。一部のこの世界のギークの間では以前から話題になっていたようですが、最近になってこの話が現実味を帯びてきています。

確かにグーグルやソフトバンク、アマゾンなどは人工知能を活用した検索システムやロボットなど革新的な取り組みを現実のものにしています。

人間の持つ智慧の奥深さと広がりを機械が代替することなどありえないと信じる私にとって、コンピュータが人間の知性を上回るなどにわかには信じられませんが、コンピュータと人間の脳で思い浮かんだのは将棋の「羽生善治」(王座、名人、王位、棋聖)とスーパーコンピュータ「京」です。

羽生名人は44歳と棋士としてのピークは過ぎたなどと言われた時期もありましたが、現在もさまざまなタイトル戦の常連で、若手棋士の挑戦を退けながら多くのタイトルを維持し続けています。我々には想像できないところで、羽生さんの脳は進化し続けているのでしょうか。

一方の「京」は、ご存知のように理化学研究所(理研)と東京工業大学、アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリン、九州大学、富士通による国際共同研究グループが開発したスーパーコンピュータ。

本ブログ(7/16号)でも紹介しましたが、今年7月にはビッグデータ処理(大規模グラフ解析)に関するスーパーコンピュータの国際的な性能ランキングGraph500で、2014年6月以来の1位を奪還しました。

大規模グラフ解析の性能は、大規模かつ複雑なデータ処理が求められるビッグデータの解析において重要となるもので、今回のランキング結果は、「京」がビッグデータ解析に対し世界的にみても高い能力を持っていることを実証しています。

シンギュラリティが話題になりそうな今、日本古来の将棋の「名人」とコンピュータの「知性の進化」を“ゆっくり”観察したいと感じた秋の初めです。

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著者:井之上 喬
井之上パブリックリレーションズ社長/京都大学大学院特命教授

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