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2015.05.07

米国における消費の新潮流「ミレニアルズ」〜消費行動の変革を迫る新世代

皆さんこんにちは井之上 喬です。GWは、いかがお過ごしでしたか。

最近、米国情報を伝える報道の中で「ミレニアルズ」というワードをしばしば見かけます。

例えば、「(米国市場で)ミレニアルズを含めた35歳以下の顧客が、2004‐2014年の11年間に購入した車で最も多かったのが、アコードとシビックになるという。」(レスポンス)
[若い層ほど同性婚の支持率が高いことも分かった。例えば10代後半-30代のミレニアルズ世代は7割が同性婚を支持している。](CNN)といった文脈の中に見ることができます。

この新たなワードについて、タイムリーにも朝日新聞「ワールドけいざい――20代中心の新世代」(4/26朝刊)で特集され、興味深く読みました。

「ミレニアルズ」(Millennials)の定義は専門家により異なるようですが、1980年頃から2000年代初めに生まれた世代を指し、2014年時点では米国の人口の約3割を占めるといいます。

中核は20代。10代からスマホを持ち、インターネットに慣れ親しんだ最初の世代。働き始めるころにリーマン・ショック(08年)以降の経済停滞に直面し、上の世代とは消費行動が違うことが注目されているようです。

米国では、こうした若い世代の台頭が小売りやサービス業に変革を迫っていて彼らの消費行動に対応できず、苦戦を強いられる企業も多いとのことです。

買い物はネット、そして保有よりも共有

「買うよりレンタル、共有で十分」と考えるミレニアルズのクルマ離れは、米国自動車業界に共通する悩みとなっているようです。

上の世代には「力強い走り」を訴えると効果的だったものが、若い世代には逆効果になるといいます。米最大手ゼネラル・モーターズ(GM)も若者向けの広告では「おしゃれ」や「燃費性能のよさ」を前面に出しているのはこうした理由によるとか。

幼少からネットやソーシャルメディアに親しみ、ヘルシーな食事や旅行にはお金を使うけど、家や車を持つことに関心がない。米国で約8600万人いる新世代の台頭に、最初に打撃を受けたのはファストフード業界だったとのこと。

マクドナルドの米国における昨年売上高は、前年より2.1%減と2年続けてのマイナス。健康志向の強いミレニアルズには、「ハンバーガーは食べない」といった傾向があるようです。

米コカ・コーラも主力の炭酸飲料が売れず、昨年の通期決算は純利益が17 %減ったとのことです。

実店舗が中心の小売りも苦しんでいるようです。今年2 月、米家電量販2位のラジオシャックが経営破綻。専門知識がある店員による接客が持ち味だったものの、家電のネット購入が広がり、若者が店に来なくなったことが大きな要因。

「ラジオシャックの破綻はミレニアルズの影響力の大きさを象徴した」(米調査会社)と報告されています。

ミレニアルズを意識したマーケ戦略

10 年後はミレニアルズが米国の消費の主役となるため、この世代をどう取り込むかは、小売りやサービス業界の大きな課題となっているようです。アナリストたちが「ミレニアルズへの浸透度」を、企業業績予測のものさしにするケースも出てきているといいます。

米ホテル業界は「個人のスマートフォンが鍵になり、簡単にチェックイン」などの次世代型サービスを相次ぎ打ち出しているとか。その背景には個人の自宅の空き部屋をホテルのように貸し出し「共有」する新サービス「エアビーアンドビー(Airbnb)が急成長し、危機感を募らせているからだとしています。

炭酸飲料離れに苦しむコカ・コーラは昨年、個人のファーストネーム入り缶や名前だけでなく「Friends」や「Family」といった親しみのある言葉を表示している商品を登場させています。

スポーツ用品のナイキは、若者に向けたソーシャルメディアによるブランド戦略が成功し、「健康的で、おしゃれ」という評価を得て、業績好調が続いているようです。

ボストンカレッジのステバン・ブラゼル准教授は「ミレニアルズは商品の評判について、ソーシャルメディアを通じ世の中や企業に発信する最初の世代。独自の消費スタイルを生み出すので、存在感は増すばかりだ」と今後のマーケティング戦略の方向性を示唆するコメントを寄せています。

米国のミレニアルズと日本の氷河期世代 (Lost Generation) 後期、真性団塊ジュニア(ポスト団塊ジュニア)とか携帯世代、ゆとり世代などと呼ばれる世代との間に多くの共通点が認められます。

日本のユニクロが昨年、個人の写真やイラスト、文字を自由にデザインし、オリジナルTシャツをプリントして提供するといった新しいビジネスモデルを発表していましたが、これなどもミレニアルズを対象とした新しいマーケティング手法なのかもしれませんね。

日米ともにその存在感をますます増大させる新たな世代のライフスタイルを研究・分析し、コミュニケーション戦略にいかに反映させていくか―― 私たちパブリック・リレーションズ(PR)の実務家に求められているといえます。

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